緑化設計DXが支える人材育成と技術継承――安藤ハザマ「UUell」の狙い
安藤ハザマが、建築設計における緑化計画を支援する新システム「UUell(ウェル)」を開発したことは、建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を示すだけでなく、深刻な課題である「人材育成」と「技術継承」に対する有効な解決策を示唆している。同システムは、東京都の条例に基づく緑化基準に準拠した設計をサポートするものであり、必要緑化面積や樹木本数の自動算出、さらには設計条件に適した樹種の提案機能を備えている。
特筆すべきは、このシステム開発の背景に「経験の少ない若手設計者にとって、複雑な要素を総合的に考慮した計画立案は多大な時間を要する」という課題認識があった点だ。都市部の緑化設計では、植物の成長予測や日照条件、生物多様性への配慮など、高度な専門知識が求められる。従来、こうした判断能力は長年の経験によって培われるものであったが、本システムは若手であっても効率的かつ効果的な選定を行なえるよう支援する。
さらに、離隔距離などの条件が確保できない場合にアラートを発する機能も実装されており、設計ミスを未然に防ぐ教育的な役割も果たしている。今後は機能拡張により、ネイチャーポジティブや気候変動緩和策への貢献も視野に入れているという。
建設業界全体で人手不足が叫ばれるなか、いかにして若手を早期に戦力化し、ベテランの技術を継承していくかは喫緊の課題である。安藤ハザマの事例は、ツール導入が単なる業務効率化にとどまらず、人材教育の側面でも大きな効果を発揮することを示している。
ここでは、システム活用がもたらす採用・教育上のメリットについて、現場の視点から解説する。

UUellの概要
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q. 専門知識の習得に時間がかかる現状を、システムはどう変えるのか?
建設業における設計や施工管理の業務は、法令、材料、工法、環境配慮など、覚えるべき知識が膨大である。特に今回の事例にあるような緑地設計では、単に図面に木を配置すればよいわけではなく、成長後の樹形や地域固有の生態系まで考慮する必要がある。これらをすべてOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で教え込むには、指導する側にもされる側にも限界があるのが実情だ。
「UUell」のような支援システムを導入する最大のメリットは、この「知識習得の壁」を低くできる点にある。システムが法規制や推奨樹種を自動で提示してくれるため、若手社員は「なぜこの樹種が選ばれるのか」「どのような配置が適切なのか」という答えを、業務を通じて即座に確認することができる。
つまり、システム自体が教科書の役割を果たし、実務をこなしながら自然と専門知識が身につく環境が構築されるのだ。これにより、一人前になるまでの期間を大幅に短縮できる可能性が高まる。
Q. 指導役となるベテラン社員や管理職の負担軽減にはつながるか?
若手教育において最も大きなコストは、指導役となるベテラン社員の時間である。若手が作成した計画の不備をチェックし、一から修正を指示する作業は、管理職にとって重い負担となっている。
今回開発されたシステムには、条件が満たされていない場合に警告を出すアラート機能が搭載されている。これにより、初歩的なミスや法令違反はシステム側で事前にフィルタリングされることになる。
結果として、指導役は細かな計算チェックや法令照合といった定型的な確認作業から解放され、より本質的な設計思想や顧客への提案内容といった、高度な指導に時間を割くことが可能になる。教育の質を落とすことなく指導工数を削減できることは、組織全体の生産性向上に直結する重要な要素だ。
Q. 採用難の時代において、こうしたDXへの取り組みは有利に働くか?
現代の求職者、特にデジタルネイティブと呼ばれる若い世代は、就職先を選ぶ際に「企業のデジタル化への取り組み」や「効率的な働き方ができる環境か」を重視する傾向にある。旧態依然とした「見て覚えろ」という教育方針や、アナログで非効率な業務プロセスが残る企業は、敬遠されるリスクが高い。
安藤ハザマのように、若手が直面する課題を技術で解決しようとする姿勢を対外的に示すことは、採用ブランディングの観点からも極めて有効だ。「未経験でもシステムがサポートしてくれるので安心して働ける」「最新のツールを使ってスマートに仕事ができる」というメッセージは、建設業への入職ハードルを下げ、優秀な人材を引き寄せる強力な武器となるだろう。中小企業においても、規模に合わせたITツールの導入をアピールすることは、人材確保の切り札となり得る。

※画像はイメージです。
Q. 環境配慮やSDGsといった新しいテーマへの教育はどうすべきか?
近年、建設業界には脱炭素や生物多様性の保全といった、従来の施工技術とは異なる新たな知識が求められている。「UUell」もまた、ネイチャーポジティブやWell-Beingへの寄与を目指して機能拡張が進められている。こうした新しい分野は、ベテラン社員であっても知識が十分でないケースが多い。
システムが最新の環境基準やトレンドを反映した提案を行なうことで、若手だけでなくベテラン社員も含めた組織全体の知識アップデートが可能になる。社内研修を頻繁に行なうことが難しい場合でも、日常的に使用するツールが最新の基準に準拠していれば、業務を通じて自然と全社員の意識と知識レベルが底上げされる。これは、変化の激しい現代において、組織が適応力を維持するための賢い戦略といえる。
Q. 離職防止や定着率向上への効果は期待できるか?
若手社員が早期離職する原因の一つに、「業務が難しすぎて自信を失う」「ミスが続いて叱責されることへのストレス」が挙げられる。特に専門性の高い建設業では、最初の数年で挫折してしまうケースも少なくない。
業務支援システムは、こうした「失敗体験」を減らし、「自分でもできた」という「成功体験」を積ませるための補助輪となる。配植位置や樹種選定といった複雑なパズルをシステムの手助けで解くことができれば、若手は自信をもって業務に取り組むことができる。
また、単純作業の自動化によって残業時間が削減されれば、ワークライフバランスの改善にもつながる。精神的な負担の軽減と労働環境の改善は、人材定着において何よりも確実な施策である。
まとめ
安藤ハザマの「UUell」開発は、単なる設計業務の効率化事例にとどまらず、建設業界が抱える人材育成の課題に対する一つの回答を示している。経験不足をテクノロジーで補完し、若手が早期に活躍できる環境を整えることは、企業の持続的な成長に不可欠だ。
中小企業においても、こうした「人を助けるためのIT活用」という視点をもつことが、採用と教育の現場を変える第一歩となるだろう。
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