山口県の新DX計画にみる建設人材の育成と処遇改善、AI活用で挑む技術伝承

山口県が建設DXを加速、第参版推進計画で人材育成を強化

山口県はこのほど、県内の建設産業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるため、「建設DX推進計画(第参版)」を策定した。これは産学官が連携して取り組みを進め、建設業界にとって最大の課題である「担い手不足」や「激甚化・頻発化する自然災害」、さらには「インフラ老朽化」といった問題の解決を目指すものである。

2023年度の第壱版、25年度の第弐版に続き、今回の第参版ではロードマップの大幅な見直しが行なわれた。特筆すべきは、「新たな魅力発信と人材育成」を柱の一つに掲げ、AI(人工知能)を活用したナレッジ共有システムの導入など、6つの新規取り組みを追加した点である。また、既存の取り組みにおいても、「データベース・技能者の適切な処遇」の加速化が明記されるなど、働く「人」に焦点を当てた施策が強化されている。

本稿では、この新たな計画が建設現場の人材育成や働き方にどのような変革をもたらすのか、よくある疑問に答える形式で解説する。

 Q1. 「AI・Q&A」システムは、若手育成や技術伝承にどう役立つのか?

今回、山口県が第参版で新たに追加した「新たな魅力発信と人材育成」のカテゴリにおいて、最も注目すべき施策が「AI・Q&A」の導入である。これは、職員が業務に必要な知識や情報を迅速に把握できるよう、AIを活用した質問応答システムを構築するものである。

建設業界、特に行政や現場管理の最前線では、経験豊富なベテランと若手・中堅との間に大きな「知識格差」が存在することが長年の課題であった。ベテランの頭の中にある暗黙知や過去の事例判断が共有されず、担当者が変わるたびに業務効率が低下するケースも少なくない。このシステムでは、過去の質問と回答をデータとして蓄積し、AIがそれを学習することで、類似の疑問に対して即座に最適解を提示する。

これにより、経験の浅い職員であっても、過去の膨大な事例に基づいた判断材料を瞬時に得ることが可能となる。結果として、職員間の知識レベルが均質化され、組織全体の技術力の底上げが期待できる。これは行政側の取り組みではあるが、民間企業においても、社内マニュアルや技術情報の検索にAIを導入することで、新人教育の工数削減や、ベテラン引退に伴う技術喪失のリスクを回避するモデルケースとなり得る。

 Q2. 現場の「働き方」や「生産性」は、具体的にどう改善されるのか?

人材不足を補うためには、一人当たりの生産性を高め、長時間労働を是正する「働き方改革」が不可欠である。今回の計画では、「建設産業の生産性向上」として「スマート測量・用地境界確認」が新規に追加された。これは、用地測量における境界確認作業に情報通信技術(ICT)を導入し、リモート確認や3次元モデルの活用を推進するものである。

従来、境界確認は多数の関係者が現地に集合して行なう必要があり、移動時間や日程調整の手間が大きな負担となっていた。これをデジタル技術で代替することで、現場に赴く回数や拘束時間を大幅に削減できる。現場監督や技術者が、本来注力すべき施工管理や安全管理などのコア業務に時間を割けるようになることは、労働環境の改善に直結する。

また、「インフラメンテナンスの高度化・効率化」の分野では、「GIS(地理情報システム)・維持管理」「スマート・下水道管路の点検」が導入される。GISを用いて維持管理データを地図上で可視化し、リアルタイムで情報を更新することで、事務所にいながら現場の状況を把握しやすくなる。さらに、ローコード開発ツールを活用することで、専門的なプログラミング知識がない現場担当者でも、業務に合わせたデータの収集・共有・分析が可能になる点も見逃せない。

 Q3. 「技能者の処遇改善」に関する取り組みはどうなっているのか?

人材の定着には、教育や環境改善だけでなく、適切な評価と処遇が欠かせない。今回の計画見直しにおいて、既存の取り組みである「データベース・技能者の適切な処遇」について、その動きを「加速化」させることが明記された。

これは、建設キャリアアップシステム(CCUS)などとの連携を想定し、技能者の資格や経験、就業履歴をデジタルデータとして蓄積・活用することで、適正な評価につなげる基盤整備を急ぐ姿勢の表れである。技能者が自身のスキルに見合った対価を得られる環境が整えば、若手の入職促進や離職防止に大きく寄与する。

加えて、「モバイル・アプリ・インフラ点検」の加速化も図られている。スマートフォンやタブレットを活用した点検業務が普及すれば、若手にとって馴染み深いデバイスで直感的に作業が可能となり、業務へのハードルを下げる効果も期待できる。デジタルツールを駆使できることが新たな「技能」として評価される時代において、こうした環境整備は人材確保の強力な武器となる。


※画像はイメージです。

Q4. 危険な作業環境の改善など、安全面での対策は?

「人が定着する現場」の絶対条件は安全性である。第参版では、「スマート・下水道管路の点検」において、デジタル技術を活用することで点検時の安全性を向上させることが明示された。

老朽化した下水道管路の中は、酸素欠乏や有毒ガスの発生、崩落などのリスクが潜む危険な場所である。ここにデジタル技術(例えば自走式カメラやドローン、センサー技術など)を導入することで、作業員が危険箇所に直接立ち入ることなく、異常を早期に発見できる体制を構築する。また、管路の施設情報と維持管理情報が一元化されることで、補修計画の精度も向上する。

さらに、防災面では「オープンデータ・防災情報」「GIS・災害情報の共有」の深化が進められている。災害発生時に正確な情報が迅速に共有されることは、復旧作業にあたる建設作業員の二次災害防止にもつながる重要な要素である。

 Q5. 企業側にはどのような対応が求められるのか?

山口県が推進するこれらの施策は、行政内部だけで完結するものではなく、受注者である建設企業との連携が前提となっている。例えば、「3次元データ・道路台帳」の取り組みでは、MMS(モービルマッピングシステム)などで取得した点群データを活用して道路台帳を生成する機能が構築される。企業側もこうした3次元データを扱える機器やソフトウェア、そしてそれを操作できる人材を育成する必要が出てくる。

また、「オンライン・道路・河川等手続き」の深化により、行政手続きのデジタル化が一層進む。これに対応できない企業は、事務処理の効率性において競合他社に遅れをとることになる。今回の計画改定は、建設企業に対し、デジタル対応可能な人材の採用・育成と、社内業務のデジタル化を強く促すメッセージといえる。行政が主導して「データ利活用環境」として道路区域情報のオープン化などを進める今こそ、企業側もその恩恵を最大限に活かせる体制づくりが急務である。

 まとめ

山口県「建設DX推進計画(第参版)」は、単なる業務効率化にとどまらず、AIによる知識継承、デジタル技術による安全確保、そして技能者の処遇改善基盤の整備など、「人」を中心とした建設産業の再生シナリオを描いている。
特にAIを活用したナレッジ共有やローコードツールの活用は、中小企業における人材育成のあり方にも大きなヒントを与えるものである。

 

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