建設業にも求められる「働き方改革」の次の段階
建設業界では、長時間労働や人手不足といった構造的課題を背景に、現場を中心とした働き方改革が進められてきた。一方で、現場以外で働く本社・管理部門の業務環境については、十分に議論されてこなかった企業も多いのではないだろうか。
そうしたなか、日立プラントサービスが実施した本社移転とオフィス改革は、建設業における「働き方改革の次の段階」を示す事例として注目される。
同社は2025年8月、東京都豊島区から台東区・上野イーストタワーへ本社を移転した。単なる立地変更ではなく、「どこで働いても最良のアウトプットを出せる環境づくり」を明確な目的として掲げ、オフィスの在り方そのものを見直した点に特徴がある。

移転を担った(左から)村手氏、加賀谷氏、佐々木氏
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
移転の狙いは立地ではなく生産性向上
新本社はJR上野駅を含む5駅が徒歩圏内という交通利便性の高い場所に位置する。地下1階、地上25階建ての上野イーストタワー内に3・5フロア、合計約4893平方メートルを使用している。
しかし、同社が移転を決断した理由は、単なる好立地の確保ではない。村手俊之取締役本部長は「ワークプレイスの見直しによる生産性向上」を最大の目的として掲げている。
コロナ禍を経て定着したリモートワークや分散勤務といった新しい働き方を前提に、オフィスを「出社する場所」から「成果を最大化するための拠点」へと再定義したのである。
フリーアドレスと集中環境の両立
新オフィスではフリーアドレス制を導入し、固定席と自由席を組み合わせたハイブリッド型の座席配置を採用した。これにより、従来よりも貸借面積を300平方メートル以上削減しながら、必要な座席数を確保している。
執務エリアには、コミュニケーションを促進するオープンスペースに加え、ボックス型の集中ブースを設置。業務内容や気分に応じて働く場所を選べる環境を整えた。
また、大容量ポータブル電源を配備することで、場所を選ばず業務ができる工夫も施されている。会議室不足という多くの企業が抱える課題に対しても、短時間の打ち合わせに対応できるスペースを多数設けることで解消を図った。

交流を促すコミュニケーションエリア
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
座席管理システムがもたらした業務効率化
フリーアドレス化に伴い、同社は新たに座席管理システムを構築した。フロアに設置されたビーコンが社用携帯電話と連動し、誰がどこで働いているかをリアルタイムで把握できる仕組みである。
総務部総務グループによると、在宅勤務やサテライトオフィス利用が増えるなかでも、社員同士の所在が分かることでスムーズなコミュニケーションが可能になったという。
従来は各部署の庶務担当者が手作業で座席表を更新しており、大きな負担となっていた。このシステム導入により、総務業務の効率化と情報の即時共有を同時に実現した点は、DXの好例といえる。
建設業のイメージを超えるオフィスづくり
エントランスはコーポレートカラーである紺を基調とし、同社が支援するパラアイスホッケーやJリーグ、ラグビーリーグのユニホームを展示している。これは単なる装飾ではなく、企業文化や社会貢献活動を来訪者や社員に伝える役割を担っている。
建設業という枠にとらわれず、社員のエンゲージメント向上を重視した空間づくりは、採用活動や人材定着の面でも大きな意味をもつ。働く環境そのものが企業の姿勢を表す時代において、オフィスは重要な経営資源となりつつある。
中小建設業が学ぶべきポイント
日立プラントサービスの事例は大企業の取り組みではあるが、中小建設業にとっても示唆は多い。すべてを同じ規模で導入する必要はないが、「働き方を変えるために環境を整える」という考え方は十分に参考になる。
書類の電子化や座席の見直し、簡易的な在席管理ツールの導入など、小さな改善の積み重ねが生産性向上につながる。
また、働きやすい環境は人材確保や離職防止にも直結する。現場改革と並行して、管理部門や本社機能の見直しを進めることが、これからの建設業経営に求められている。
まとめ
建設業の働き方改革は、現場だけで完結するものではない。日立プラントサービスの本社移転は、オフィス環境の整備が生産性向上と人材定着に直結することを示している。自社の規模に合わせた形で、働く環境を見直すことが、持続的な経営への第一歩となるだろう。
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