震災の教訓をどう次世代へ伝えるか―建設業に求められる防災教育
未曽有の被害をもたらした東日本大震災の発生からまもなく15年。被災地における震災伝承活動が大きな壁に直面している。ハード面の復興事業が完了に近づく一方で、教訓を次世代へ伝える取り組みは難局を迎えた。
関連団体の調査によれば、岩手、宮城、福島の被災3県で伝承施設などへの来訪者が2024年に初めて減少した。学習プログラム実施団体の96%、施設の69%が活動継続に不安を抱え、30年後に語り部を確保できる見通しの団体は皆無という深刻な状況だ。これに対し、大手ゼネコン各社は次世代を担う社員に向けた震災伝承や防災教育に注力している。
鹿島東北支店は新入社員や若手を中心に遺構を巡る研修を実施し、語り部の講話や体験談を通じ、生活を守る建設業の使命感を育成している。清水建設東北支店も研修を継続し、全社員参加の震災訓練を実施して「自分事」としての防災意識を根付かせている。大林組東北支店は2025年3月に追悼の会を実施予定で、施工現場では県警OBを講師に招き教訓を伝達中だ。各社は頻発する災害に備え、建設会社の社会的意義の再確認を推進中だ。
ここからは、建設業に従事する読者からのよくある質問を参照しつつ、業界における防災教育の重要性を深掘りする。

大川小学校を見学(鹿島提供)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
【よくある質問1】なぜ今、現場で改めて震災伝承や防災教育が必要か?
【回答】震災を直接経験していない世代が現場の中核を担い始めているためだ。大震災から15年が経過し、当時の記憶をもたない若手社員が増加傾向にある。建設業は災害発生時、最前線でインフラ復旧や人命救助の支援にあたる極めて重要な社会的使命を帯びている。
若手人材が災害時の的確な判断力や強い使命感を育むには、過去の被害や教訓を実体験に沿って学ぶプロセスが不可欠となる。また、近年は全国各地で自然災害が頻発している。過去の教訓を風化させず、日々の安全管理や緊急時の対応能力に直結させるためにも、現場単位での継続的かつ実践的な防災教育が強く求められているのが現状だ。
【よくある質問2】中小企業や各現場単位では、具体的にどのような対策や教育が可能か?
【回答】資金や人員に限りがある中小企業でも、外部機関を有効活用することで効果的な教育が可能だ。例えば、現場周辺の震災遺構や地域の防災センターを訪問する小規模な研修の実施が挙げられる。実際の被災地に触れることで、座学では得られない危機感を養うことができる。
また、地域の語り部や警察・消防のOB、過去に災害復旧を経験した社内のベテラン技術者を講師として招き、安全大会や定期講習で体験談を語ってもらう取り組みも非常に有効だ。さらに、大規模災害を想定した避難訓練や、非常時の連絡網確認、備蓄品の点検などを日常業務に組み込むことで、現場全体の防災リテラシーを底上げすることが十分に実現できる。
【よくある質問3】防災教育の啓発は、経営や採用活動にどう影響するか?
【回答】社員の防災意識の向上はリスク管理にとどまらず、組織力強化や人材確保でも大きな効果を発揮する。「生活と地域の安全を守る」という建設業本来の使命を再確認することは、社員の仕事に対する誇りや意欲の飛躍的な向上に直結するからだ。
近年、求職者は企業の社会貢献度や安全への姿勢を重視する傾向にある。防災教育に熱心に取り組み、災害に強い社会の形成に貢献する姿勢を明確に打ち出す企業は社会的信用が高まり、採用市場でも強力なアピールポイントとなる。結果として若手人材の確保や離職防止など、業界が抱える慢性的な課題の解決にも寄与する。防災への投資は、次世代の地域社会を守ると同時に企業の成長を支える重要な経営戦略として機能する。

※画像はイメージです。
まとめ
大震災の教訓を風化させず、次の世代へ継承する活動は建設業全体で取り組むべき喫緊の課題だ。伝承団体が担い手不足に直面する中、現場で働く一人ひとりが防災の重要性を認識し、「自分事」として捉える姿勢が不可欠となる。
過去の痛ましい経験から学び、日々の安全管理や有事の備えを徹底することで、建設業はこれからも地域社会の安全と復興を支え続ける基盤となるだろう。
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