女性インストラクター誕生が示す、現場仕事の新しい可能性
東京ガスネットワーク株式会社は、設備維持管理業務において技術や顧客対応に優れた社員を認定する「インストラクター」に、初めて女性社員を登用したと発表した。同社は2003年から「マイスター・インストラクター制度」を導入し、ベテランの技術を若手へ継承する仕組みを構築している。
今回インストラクターに選出された遠藤麗氏は、2010年の入社以来、女性として初めて供給分野に配属された経緯をもつ。配属当初は周囲が男性社員ばかりの中、工事に使う重い機具を扱うため、週3回ジムに通い体力をつけるなど、作業に遅れをとらないための努力を重ねた。
現在、同社には約400人の女性社員が在籍している。沢田社長は認定式で、後に続く人材が誕生するよう、女性が安心して生き生きと働き、キャリアを重ねられる環境整備を加速させる方針を示した。遠藤氏は今後、導管インストラクターとして研修センターの講師を務め、後進の育成や技能承継を担う。
ここからは、建設業や現場作業を伴う業界で頻繁に寄せられる疑問について解説する。

認定式では新たに認定されたマイスターとインストラクターに沢田社長〈左〉から認定証が手渡された
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
Q.現場仕事において女性の活躍を推進するにはどうすればよいか?
建設業界でも深刻な人手不足を背景に、女性の現場進出が課題となっている。今回の東京ガスネットワークの事例が示す通り、女性が現場で活躍するためには、体力的な壁を乗り越える個人の努力だけでなく、会社ぐるみのサポート体制が不可欠となる。
遠藤氏は重い機具を扱うために自らジムへ通う努力を重ねたが、企業側はこうした個人の負担を軽減するため、作業着や工具の軽量化、体に負担のかかりにくいアシストスーツの積極的な導入などを優先的に検討すべきだ。さらに、男女別の更衣室や清潔な専用トイレの設置といった、基本的な労働環境の整備も急務となる。
そして何より重要なのは、キャリアパスを明確に提示することだ。女性社員が「この会社で長く働き続けられる」と実感できるよう、今回の事例のような社内認定制度を活用し、指導者としての道を用意することが優秀な人材の定着率向上に直結する。
Q.若手社員や新人に対して、どのように技術を指導すれば効果的か?
建設業界では「技術は見て盗め」という古い価値観が残る現場も少なくないが、この手法は現代の若手には通用しづらい。遠藤氏が指導において心掛けている「同じことを伝えても人によって理解度に違いがあるため、どういう風に伝えたら伸びるのかを考え、日ごろから接する」という姿勢は、建設業の新人教育においても大いに参考になる。
若手育成においては、単に一律の指導マニュアルを押し付けるのではなく、個々の習熟度や性格、理解のスピードに合わせた柔軟なコミュニケーション能力が指導者側に強く求められる。また、指導者と若手社員の間で定期的な面談を実施し、日々の業務で抱える不安や疑問を解消する仕組みを作ることも有効だ。女性の先輩社員が指導にあたることで、これまで男性中心の職場で相談しづらかった女性の若手社員も、安心して技術を学べる環境が整うと期待される。

導管インストラクターに選ばれた遠藤さん
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
Q.ベテラン職人の暗黙知や高度な技術を、組織としてどう継承していくべきか?
東京ガスネットワークが導入している「マイスター・インストラクター制度」のように、熟練の技術者を社内資格として認定し、その役割と責任を明確にする手法は、建設業でも有効な解決策となる。同社の制度では、認定級をS級からC級まで段階的に設け、S級保有者から指導者を選出している。
このように技術レベルを可視化することで、若手社員にとっては目指すべき明確な目標となり、ベテラン社員にとっては自身の技術が正当に評価されることで指導へのモチベーションが高まる。建設業においても、自社の業務に合わせた独自の社内検定やマイスター制度を創設し、資格手当と連動させるなど、教える側と教えられる側の双方が適正に評価され、企業全体の技術力が底上げされる仕組み作りを急ぐべきだろう。
まとめ
現場仕事における女性の活躍推進と若手への技術継承は、業界全体の大きな課題だ。東京ガスネットワークの女性インストラクター誕生の事例は、性別にとらわれない人材育成の成功例として多くの示唆に富んでいる。
一人ひとりの適性に合わせた丁寧な指導と、技術を正当に評価する社内制度の構築が、これからの現場を支える基盤となる。自社の労働環境を見直し、性別や年齢に関わらず、誰もが自身の能力を最大限に発揮できる強固な組織作りを、ぜひ今日から進めてみてはいかがだろうか。
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