応募が集まらない現実―データで読み解く建設業の深刻な人材不足
ディップによる最新の調査で、建設業、特に「建築・土木」分野における人材確保が一段と困難な状況にあることが示された。同社が求人サービス「バイトル」のデータを基に、2020年から2025年までの12職種別の応募倍率を指数化した結果、「建築・土木」は2020年の41から低迷を続け、2025年には14に落ち込んだ。この指数は、2020年時点で最も応募割合が多かった「オフィスワーク」を「100」として算出したもので、数値が低いほど求人に応募が集まりにくいことを示す。
2020年時点では「軽作業・物流」が91を記録する中で「建築・土木」は41にとどまり、全12職種中6番手であった。2021年以降は状況が一変し、「建築・土木」の指数は2021年が23、2022年が13、2025年が14と低空飛行を続けている。職種別順位でも他業種に遅れをとり、現場レベルでの深刻な人材不足が浮き彫りになった。
現場監督や中小企業経営陣が直面する疑問について、今回のデータを参照しながら掘り下げていく。

12職種別の応募倍率指数(低いほど応募が集まりにくい)
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
なぜ近年、『建築・土木』分野の応募倍率が急激に低下しているのか?
調査担当者によれば、この応募倍率低迷の背景には二つの要因が存在するという。
一つ目は、新型コロナウイルスの流行による労働市場への影響である。2020年はコロナ禍による先行きの不透明感から全体の求人数が一時的に大きく減少し、相対的に「建築・土木」の応募倍率指数が跳ね上がりを見せた。
しかし2021年以降、経済活動が段階的に正常化し、他業界が一斉に採用活動を再開する中でその反動が生じ、結果として「建築・土木」の順位が急落したと分析されている。
他業界と比較して、なぜ建設業でのみ人材獲得競争が突出して激しいのか?
先ほどの疑問に対する二つ目の要因でもあるが、これはデータに明確に表れている。
「建築・土木」分野における求人数の増加率が、他職種を大きく上回るペースで推移していることである。2025年時点での総求人数は2020年比で全体で約2.3倍に増加している。しかし、「建築・土木」分野に限定すると、同時期の増加率は約3.6倍にまで跳ね上がっている。
他業界を凌駕するペースで企業が一斉に求人を出し続けているため、限られた求職者の奪い合いが激化しているのである。この需給バランスの崩れが、求人を出しても応募が来ないという苦境の直接的な原因となっている。
現場を支える職人を確保していくために、企業は具体的にどのような対策を講じるべきか?
これに対して、担当者は「まずは建設業を知ってもらい、裾野を広げることが重要だ」と指摘している。多くの求職者は建設業の実際の業務内容や魅力を十分に認知しておらず、職業選択の土俵にすら上がっていないケースが多い。求人票に給与や休日などの条件を羅列するだけでは不十分である。
現場での具体的な仕事風景、社会インフラを支えるやりがい、未経験からでも技術を身につけられる環境が整っていることを、潜在的な求職者へ積極的に発信していく姿勢が必要不可欠となる。

※画像はイメージです。
採用の裾野を広げるうえで、どのような層をターゲットとして訴求すべきか?
即戦力となる経験者のみを求める採用方針では、この「求人数3.6倍」という激しい競争を乗り切ることは極めて困難である。若年層や異業種で経験を持つ転職希望者など、多様な人材層への積極的なアプローチが急務となる。
そのためには、経営者自身が自社の労働環境を見つめ直し、安全性の確保や働きやすさを向上させるための具体的な改善策を実行に移す必要がある。同時に、それらのポジティブな変化を求人メディアなどを通じて透明性高く伝えていくことが求められる。実態に即した情報発信が最終的な人材定着を実現するだろう。
まとめ
「建築・土木」分野における人材確保の現状は、求人数の突出した増加により、過去に例を見ないほど激しい競争状態にあることが証明された。この難局を打破するためには、画一的な採用手法に固執せず、未経験者を含めた幅広い層へ建設業の魅力を伝え、採用の裾野を広げていく努力が求められる。
企業が現場の労働環境を改善し続けるとともに、その取り組みを効果的に発信していくことが、長期的な人材確保と業界発展の鍵となるだろう。
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