人手不足時代のインフラ管理へ|自治体が進める“民間活用×AI”の新戦略
全国の地方自治体において、深刻化する人材不足を補うための新しいインフラ維持管理体制の構築が本格的に進んでいる。大分県杵築市は、土木技術職員の減少という直面する課題に対し、専門家の支援を通じた持続可能な体制の模索を開始した。具体的には、複数業務を一括して民間へ委託する「包括的民間委託」の事例研究や国などの補助制度の活用に向け、外部講師を招いた勉強会を実施し、行政職員の知見を継続的に高めている。
一方、愛知県豊川市は、人工知能(AI)を活用した舗装異常検知技術の妥当性確認を既に済ませた。現在、26年度以降に向けてAI検知データを生かした効率的な点検・修繕手法と包括契約締結に向けた課題抽出を進めている。さらに、地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の一環として、技術系職員の支援に特化した「人の群マネ」事例集が作成中で、支援メニューとともに26年度の公表を予定している。
ここからは公的な動向が、最前線で働く建設従事者や中小企業の「採用・教育・人材確保」にどう影響するのか、よくある質問形式で解説する。

モデル自治体に対する支援の主な成果
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q1:自治体の技術職員減少は、現場で働く民間企業にどのような影響を及ぼすのか?
A1:大分県杵築市の事例にみられる技術職員の減少は、発注者側の細分化された個別発注方式の維持を極めて困難にする。その結果として、業務を広域かつ一括して民間へ委託する「包括的民間委託」への移行がさらに加速していく。これを受注する民間企業側には、これまで以上に幅広い専門知識と、広域の現場を同時に管理できる優秀な現場監督が求められる。
中小企業においては、単に現場作業をこなす職人の採用にとどまらず、複数の工程やインフラ施設全体を俯瞰して指揮できるマネジメント人材の育成が急務となる。自社の採用活動においても、単一の技術だけでなく総合的な管理能力を磨ける環境であることを力強くアピールすることが、今後の人材確保において極めて重要となる。
Q2:愛知県豊川市の「AI活用」は、若手育成や社内教育にどう活用できるのか?
A2:豊川市が進めるAIによる異常検知技術の導入は、建設業界の教育手法を根本から変える可能性をもつ。これまでインフラ点検は長年の経験をもつベテランの「勘と経験」に依存する部分が大きかった。しかし、AIが客観的なデータとして異常を可視化することで、経験の浅い若手社員でも的確に状況を把握できるようになる。
このデータ主導のプロセスは新人教育の期間を大幅に短縮するだけでなく、最新技術に関心をもつ若い世代の採用で強力な武器となる。自社の研修にITツールを組み込み、次世代のデジタル人材を育成する姿勢を強く打ち出すべきである。
Q3:「人の群マネ」という新しい概念は、中小企業の組織づくりにどう関係するのか?
A3:26年度公表予定の「人の群マネ」事例集は、元来自治体の技術系職員支援を目的とするが、この考え方は民間企業の人材配置にも応用できる。限られた人材をひとつの現場に固定せず、地域全体や複数のプロジェクト間で柔軟に共有して支え合う仕組みが「群マネ」の本質だ。
中小の建設業者は、自社単独ですべての専門人材を抱え込まず、協力会社や外部専門家と連携し、柔軟な人員配置を行なう「社外との連携を前提とした組織づくり」が必要になる。特定の社員に負荷が集中しない労務管理の構築が、健全な経営体制と離職防止の要となる。

※画像はイメージです。
Q4:26年度の本格的な制度変革に向けて、いま採用担当者が取り組むべきことは?
A4:大分県杵築市が外部講師との勉強会を実施して知見を高めているように、民間企業もいち早く情報収集と社内研修に着手すべきだ。まずは経営陣や現場のリーダー層が包括的民間委託の仕組みに関する知識を深めることが先決である。
そして、その知識を社内に共有し、次世代を担う人材に権限を委譲する環境を整えることが求められる。求人ノウハウとしても、「新しいインフラ管理手法に対応し最新技術を学べる企業」というブランドイメージを確立できれば、採用市場での競争力は飛躍的に向上するはずだ。
まとめ
建設業界の人材不足は深刻だが、自治体が推進するAI活用や包括的民間委託、そして「人の群マネ」の導入は、働き方改革や社内教育の仕組みを刷新する絶好の契機となる。
26年度以降の制度変革を目前に控え、企業規模を問わず、自社の採用基準や教育体制を見直すことが急務といえるだろう。新しい技術や知識を積極的に取り入れ、社員が成長できる環境を構築し続ける企業こそが、次代の建設業界を牽引する存在となるに違いない。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、 下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
