地方建設業が挑む経営革新:DXと事業承継で切り拓く次世代への生存戦略

事業承継×DXで未来を拓く―東京都市大学が社会人向け最終発表会を開催

東京都市大学は、社会人向けの学び直しプログラム「建設業事業承継DXコース」の最終発表会を東京都渋谷区で開催した。このプログラムは、地方建設業や内装工事業などの若手経営者層を対象としており、事業承継やデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する課題解決を目指して開講されたものである。

発表会には、講義や現場見学を通じて知見を深めた経営者ら9名が登壇し、自社の改革事例や今後の展望について報告を行なった。建設業界全体が直面する人手不足や生産性向上の課題に対し、地方の中小建設企業がどのように立ち向かい、成果を上げているのか。本稿では、発表会で共有された具体的な取り組みを紹介するとともに、建設業経営における「よくある課題」への解決策を探る。


参加した若手経営者らが記念撮影
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

疑問1:地方の小規模事業者でも、DXやICT導入で成果を出せるのか

建設業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれて久しいが、地方の中小規模事業者からは「予算や人材の制約があり、導入ハードルが高い」「実際の効果が見えにくい」という声が聞かれることが多い。しかし、今回の発表会で示された事例は、規模の大小に関わらず、戦略的なICT導入が確実な成果に結びつくことを証明している。

富山市の松原建設の事例がその好例である。同社は国土交通省が推進する「i-Construction」に早期から対応し、ICT建設機械の導入を積極的に進めた。地方都市においては、少子高齢化による人口減少や経済活動の縮小が避けられない現実がある一方で、インフラの維持管理コストは横ばい、あるいは増加傾向にある。松原建設の松原悠大社長はこうした市場環境を冷静に分析し、公共工事の受注に注力する戦略をとった。結果として、現在ではすべての工事を元請として受注し、高い利益率を維持することに成功している。

また、同じく富山市の河上金物では、DXによる業務効率化が経営資源の再配分を可能にした。河上森社長の報告によれば、DXの推進によって業務プロセスが改善され、それによって生じた余力を「採用活動」などの「第2領域(緊急性は低いが重要度は高い業務)」に投下できるようになったという。日々の業務に追われがちな建設業において、長期的な経営基盤を強化するための時間を確保できたことは大きな意義をもつ。

さらに富山県南砺市の岡部の高平大司氏は、DXプロジェクトを進めた結果、残業時間を半減させるという劇的な成果を上げた。これらの事例は、地方建設業であっても、適切なDX施策を実行することで、生産性の向上と働き方改革を同時に実現できることを示唆している。

 疑問2:深刻化する若手の人材不足・採用難をどう打開すべきか

建設業における最大の懸念材料の一つが、若年層の入職者減少と高齢化である。「求人を出しても応募が来ない」「若手が定着しない」という悩みは全国共通の課題である。この難題に対し、独自のアプローチで成果を上げているのが秋田県湯沢市の和賀組だ。

和賀組の和賀一晟氏は、後継者不足に悩む企業のM&A(合併・買収)を行なう一方で、若者への情報発信手段としてYouTubeを活用した動画配信や、大学との連携授業などを展開している。従来の求人媒体に頼るだけでなく、デジタルネイティブ世代が日常的に接するプラットフォームを活用し、建設業の魅力や自社の取り組みを可視化することで、若年層への訴求力を高めているのである。これらの活動により、同社は若年層の入職に手応えを感じていると報告された。

単に「仕事がある」ことをアピールするのではなく、企業の姿勢や働く環境、そして技術継承への取り組みを積極的に発信することが、採用難を打破する鍵となる。和賀組の事例は、地方企業であっても、発信方法の工夫次第で人材を引きつけることが可能であることを示している。

疑問3:社員のモチベーション維持と公平な評価はどうすればよいか

技術職である職人や現場監督の評価は、数値化しにくい部分が多く、人事評価制度の構築が難しいとされる。「頑張りが給与に反映されない」「評価基準が不透明」といった不満は、離職の大きな要因となり得る。この課題に対して、客観的な指標を取り入れた改善策を提示したのが、愛媛県大洲市の長浜機設である。

福岡信一社長は、建設キャリアアップシステム(CCUS)と連動した人事評価制度の構築について報告した。CCUSは、技能者の資格や就業履歴を業界統一のルールで蓄積・見える化するシステムである。長浜機設では、このシステムを社内の評価制度とリンクさせることで、社員のスキルアップや現場経験を客観的に評価する仕組みを整えた。これにより、制度の透明性が確保され、社員のモチベーション向上につながっているという。

経験や勘に頼りがちだった評価を、公的なシステムと連携させて可視化することは、社員にとっての納得感を高めるだけでなく、キャリアパスを明確にする効果もある。人材の定着を図るうえで、公平で透明性のある評価制度の整備は不可欠な要素といえるだろう。


最終発表会の様子
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

疑問4:経営者自身が「学び直す」ことにどのような価値があるのか

日々の経営判断や現場対応に追われる経営者にとって、時間を割いて「学び直し(リカレント教育)」を行なうことは容易ではない。しかし、今回のプログラムに参加した経営者たちの成果は、その投資に見合う価値が十分にあることを物語っている。

東京都市大学の野城智也学長は、今回のプログラムについて「今回の縁をぜひ生かしてほしい」と述べ、参加者同士のネットワーク構築や知見の共有がもたらす価値を強調した。また、矢吹信喜特任教授は講評の中で「歴史は決して繰り返さないが韻を踏む」と指摘し、コンピューターやBIMの歴史を学ぶことが、情報社会における今後の建設業のあり方を予測するうえで重要であると説いた。

過去の技術変遷や他社の成功・失敗事例を体系的に学ぶことは、自社の進むべき方向性を定める羅針盤となる。特に、技術革新のスピードが速い現代において、経営者が最新の知識と広い視野をもつことは、企業の存続に関わる重要な要素である。今回登壇した経営者たちが、プログラムを通じて自社の課題を再定義し、具体的な解決策を見出したことは、リカレント教育の実効性を証明している。

まとめ

今回の発表会で共有された事例は、地方建設業が抱える課題が決して解決不可能ではないことを示している。ICT建機の導入による高収益化、DXによる業務効率化と残業削減、デジタルメディアを活用した採用活動、そしてCCUSを活用した人事評価制度の刷新。これらはすべて、経営者が現状に危機感をもち、新たな知識を学び、実践へと移した結果である。

人口減少や社会構造の変化は避けられない事実だが、それを前提としたうえで、いかに自社を変革できるかが問われている。学び続け、変化を恐れない姿勢こそが、次世代の建設業を切り拓く力となるだろう。

 

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