建設コスト高騰、人件費上昇の波紋:国交省がコンサル業務にスライド条項試行適用へ。建設業界全体の価格転嫁はどう動くか

国土交通省は、2026年度以降に新規契約する建設コンサルタント等業務を対象に、スライド条項の試行適用を開始すると表明しました。これは、昨今の急激な物価高騰や、13年連続で実施されている設計技術者単価の引き上げといった状況を踏まえ、建設コンサルタント等業務における適切な価格転嫁対策の強化が急務であるという認識に基づいています。建設コンサルタンツ協会をはじめとする業界3団体からの要望書提出を受け、金子恭之国土交通相が発言したものであり、まずは「変更額、スライド額を適切に算定できる業務」から適用を始める方針が示されました。

この試行適用は、契約初年度の単価で次年度も業務が進むという従来の慣行を是正し、物価や技術者単価の上昇を適切に反映させる時期が来ているという認識のもと、取り組まれる重要な動きであります。

なぜ今、「スライド条項」試行適用が急務とされたのか

建設業界、特に建設コンサルタント等業務においては、業務の履行期限が年度繰り越し業務や2カ年業務といった長期にわたる案件が増加している現状があります。しかし、現状、建設工事で適用されているスライド条項は、建設コンサルタント等業務には適用されていませんでした。

この状況下で、物価高騰や、長年にわたる設計技術者単価の引き上げが重なり、業務委託費に関する適切な価格転嫁が喫緊の課題となっています。金子国交相は、「昨今の急激な物価高騰や13年連続の設計技術者単価の引き上げなどを踏まえる」と具体的に言及し、価格転嫁対策の強化が「急務だ」との認識を示しています。

特に、建設コンサルタント等の業務は、人的資本が財産の大部分を占める特性があり、人件費の上昇は経営を左右する非常に大きな要素となります。このため、業界3団体は、業務量の安定確保や賃金・物価変動に対応した設計業務委託費に関する要望を国に提出していました。

国土交通省官房技術調査課の柴田康晴課長補佐は、従来の「契約初年度の単価で次年度も業務が進むことが普通になっている」状況に対し、「物価や技術者単価の上昇を反映しなければならない時期に来ている」と明確に語っており、まずは可能な部分からしっかり試行に取り組む姿勢を強調しています。早期発注案件も念頭に、仕組みの具体化を急ぐ方針です。

※画像は建設通信新聞さまよりお借りしました。

スライド条項試行適用の具体的な対象と、建設業界への期待

今回の試行適用は、2026年度以降の新規契約案件から、具体的に「変更額、スライド額を適切に算定できる業務」を対象として開始されます。この決定に対し、業界団体からは、経営を左右する人件費の問題に対応する施策として、非常にありがたいとの歓迎の声があがっています。

具体的な適用業務について、建設コンサルタンツ協会の会長は、「目に見えない部分が多い仕事なので」と述べつつも、具体的な作業を伴う橋梁点検などから、その他の業務にも広がることへの期待を寄せました。この発言は、まず適用可能な範囲から確実に適用し、段階的にその範囲を広げていきたいという業界側の強い願いを反映しています。国土交通相も、業界側の意見も踏まえながら、適用の拡充に向けた検討も進めていきたいと述べており、今後の適用範囲拡大の可能性を示唆しています。

この制度導入は、単に契約単価が変更されるという点に留まりません。物価や技術者単価の上昇を業務に反映できるようになることで、技術者の適切な対価が確保されやすくなり、結果として、業務の質や技術水準の維持向上に貢献し、人的資本を重視する経営の実現を後押しする効果が期待されます。

中小建設業者が注視すべき価格転嫁の波及効果

今回のスライド条項試行適用は、直接的には建設コンサルタント等業務が対象です。しかし、この制度改正が持つ意味合いは、現場仕事を担う中小の建設業者にとっても極めて重要です。

建設業全体が資材費や労務費の高騰に直面し、コスト上昇を業務対価に反映させることが喫緊の経営課題となっている状況において、国土交通省が、設計技術者単価の13年連続の引き上げを背景に価格転嫁を「急務」と捉え、契約途中の単価見直しを可能にする制度を導入・拡大しようとしている事実は、公共事業における「適切な価格転嫁」を徹底する国の強い姿勢の現れといえます。

現場仕事を担う中小建設業者の皆様は、この流れを「対岸の火事」として捉えるべきではありません。コンサル業務における価格転嫁の動きは、公共工事全体、ひいては建設業界全体の契約慣行の適正化を加速させる強力な波となる可能性があるからです。

特に、建設現場で働く技術者や技能者の賃金水準を維持・向上させ、人材確保や人材定着を進めるためには、発注者側が労務費の上昇を適切に業務単価に反映させる仕組みが必要です。適切な対価が確保される環境が整うことで、中小企業は賃金や福利厚生、安全対策へ積極的に投資することが可能となり、生産性の向上や業界の持続可能性が高まります。

国交省は、適用拡大に向けた検討も進めるとしており、特に契約期間が長期化しやすい業務においては、物価や人件費の変動リスクを契約によって回避できることが、企業経営の安定化に大きく寄与します。現場の最前線で働く中小建設業者の皆様も、この制度がどのような形で自社の業務や地域の発注慣行に波及していくのか、その動向を継続して注視し、適切な価格交渉や契約管理に活かす必要があります。

この試行適用は、技術者や技能者の価値を公正に評価し、適切な対価を支払う体制を整えるための、建設業界における構造的な変革の一歩となるものと位置づけることができます。国交省の担当者が述べているように、「できるところからしっかり試行に取り組む」という姿勢は、今後の適用範囲のさらなる拡充に向けた前向きな意欲を示唆しており、建設業界全体の持続可能な成長への期待が高まります。

FAQ形式での補足情報:制度に関する重要なポイント

Q: 試行適用はどのような業務から始まるのか?

A: 2026年度以降の新規契約案件で、「変更額、スライド額を適切に算定できる業務」が対象です。業界からは、具体的な作業を伴う橋梁点検などからの適用が期待されています。

Q: 制度の適用拡大が建設現場に与える直接的な恩恵は?

A: 制度の直接的な対象はコンサル業務ですが、物価高騰や技術者単価上昇を契約に反映させる国の動きは、建設業界全体の価格転嫁交渉の基盤を強化し、間接的に現場の労務費確保や賃金水準の維持向上に貢献する可能性があります。適切な対価の確保は、人材確保や定着、生産性向上に不可欠です。

Q: 今後の制度の方向性は?

A: 国土交通相は、業界側の意見も踏まえながら、適用の拡充に向けた検討を進めていくとしています。早期発注案件を念頭に、仕組みの具体化を急ぐ方針です。

まとめ

国土交通省による建設コンサルタント等業務へのスライド条項試行適用は、物価高騰や人件費上昇といったコスト増を業務単価に適切に反映させるための重要な一歩です。特に人件費が経営を左右する建設業界において、この制度改正は適切な価格転嫁を促し、技術者や技能者の労働環境と処遇改善につながる礎となります。試行適用は2026年度から開始され、適用範囲の拡充も検討される見込みです。

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