🔧なぜ発電機の仕事を選んだのか?自動車整備士から転身した原点
奥野代表のキャリアのスタートは、発電機とはまったく異なる世界だった。「私はもともと自動車整備士で、車もバイクも好きで、資格を取って整備をやっていたんです。」しかし、収入面での限界を感じていたという。
「ディーラーに入るとノルマを積んで営業に回るか、特殊な技術で戦うかという二択になってくる。なかなか収入面でいいところを見込むのが難しいんですよ。」
転機となったのは結婚だった。「結婚を考えるようになって今の仕事に就いたんです。もう35年ぐらい前の話かな。」当時選んだのが非常用発電機を含む設備系の仕事で、ビルの管理会社や消防設備会社など“堅いお客さん”が相手で予算化がされやすく、「金額が比較的安定している」という安心感があった。
「エンジンも配線も、車の整備とちょっと共通するところがある仕事なんですよ。」前職の経験がそのまま生きるフィールドでもあった。「社歴が長い分、お付き合いしているお客さんが多くなってきた」——45年間の信頼の重みがにじむ言葉だ。
⚡「ニッチだからこそ、手に職がつく」——発電機専門会社の強みとは?
神奈川発電機サービスの事業の軸は、非常用発電機の保守メンテナンスだ。消防設備の点検は法律で年2回の実施が義務づけられており、「定期のお客様が多い」という安定性が大きな強みである。「社員にとっては安定しているメリットがある。こちら側から言えば、一年間のボリュームがだいたい見えるということですね。」
点検で見つかった修理・整備から老朽化した機器のオールリプレース(更新工事)まで、発電機に関することは一貫して対応できる体制を整えている。発注経路はビルの管理会社や消防設備点検会社、防災メーカーなど”堅い取引先”がメインで、長年のお付き合いが積み重なった安定した受注につながっている。
奥野代表が発電機の魅力を語る時、ユニークな表現が登場する。「スポーツで言ったら、あまり知られていないけれど面白いスポーツってあるじゃないですか。知られていないからこそ、ちょっと特訓することで大会に出られたり、日本代表になれたりする。メジャーなスポーツでやろうと思ったら大変ですよ。」発電機の世界も同じで、ニッチな分野だからこそ技術を身につければ「替えの効かない存在になりやすい」というのが奥野代表の持論だ。
⚠️ 人が足りない、でも希望もある——業界の課題とこれからの取り組み
中小建設業・設備業が共通して抱える課題が人材不足だ。奥野代表も率直に語る。「全然人が足りないですね。やっぱりどこもそうかもしれないですが。」
採用については、「媒体への求人はコストの割に応募が少ない」と感じ、成功報酬型の人材紹介を中心に切り替えている。「年収の40〜45パーセントを払うこともある」という紹介料の高さも悩みだが、「人が増えれば年間休日を増やし、余裕を持って仕事ができるスタイルにしたい」と前向きだ。
一方で、業界の未来についてはポジティブな見方をしている。「AIに仕事を取られ始めているという話があるなかで、リモートワークもできない技術職が脚光を浴びるんじゃないかと思っています。やる人が少ないからこそ単価が上がって、業界に人が集まる好循環になればいい。」意欲ある人材に対しては資格取得のサポートも行なっており、手に職をつけたい人が腰を据えて働ける環境づくりに取り組んでいる。
🌱 5年後は社長じゃない自分でいたい——息子へのバトン、そして業界へのメッセージ
今後のビジョンを聞くと、奥野代表は迷わず答えた。「5年後は社長じゃない自分でいたいですね。息子が専務としてやっていますから、完全にそっちが回していくような形にしたい。そのためにも人を増やして、できる人を育てておきたい。」10年後は「息子が社長になって、たくましい仲間たちに囲まれて、先頭に立っているのを想像できたらいい」と語る。あと最低2人の増員が現実的な目標だという。
次世代の技術者へのメッセージも印象的だった。「世の中、電気がないと何もできない。タワーマンションに住む高齢の方が停電でエレベーターが止まったら帰宅困難になる。そんな時に発電機が動いて電気を送る——世の中の役に立てる設備をメンテして、いざという時のために待機させておく。それがうちらの仕事だと思っています。」
さらに発電機という仕事のおもしろさについてこう語る。「覚えれば覚えるほど中身が深い。コンパクトな世界の中に深く足を踏み入れればわからないことがいっぱいある。ロジックが好きな人には非常に向いている仕事です。エンジンや電気が好きな方、ぜひやってみてほしいですね。」45年間この仕事を愛し続けてきた代表の言葉には、確かな説得力がある。
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取材を通じて感じたのは、奥野代表の「安定した仕事を次の世代へ渡したい」という一貫した姿勢だ。ニッチだからこそ深く、深いからこそ面白い——35年のキャリアが詰まった言葉が、次の担い手にしっかりと届くことを願っている。