🏗️ なぜ電気工事の道に入ったのか?原点にある偶然と覚悟
「もともと大学で化学系の勉強をしていたので、まさか電気の方に来るとは思っていなかった」と吉田社長は振り返ります。きっかけはシンプルで、在学中にたまたま見つけた電気工事会社のアルバイトでした。そのまま縁あって同社に就職し、大学を中退して現場に飛び込みます。
「左を見ても右を見てもわからない状態で業界に入った。電気工事のいろはもわからないまま飛び込んだので、もう一から叩き込まれましたね」
きつかった時代は「やめたいと思ったことは何倍もあった」と率直に語りながらも、「やりがいがあるからなんとか続けてみようと思ってきた」と続けます。昔の建設業は「きつい・汚い・厳しいの三K」と言われた時代。それでも現場の面白さと、人と人がつながる仕事の深さが、吉田社長を業界にとどまらせました。
その後、前職で約20年のキャリアを積み、2007年4月に株式会社電配を設立。現在は社員3〜4名の少数精鋭体制で、ゼネコンの一次下請として建築電気設備工事に特化しています。中小建設業にとって、こうした「狭く深く」の専門特化が長期的な信頼につながることを、吉田社長の歩みが示しています。
🔧 うちにしかできないこと──現場が語る強みとは?
「強いて言うなら、信頼関係ですかね」。同業他社との差別化ポイントを問われた吉田社長は、少し照れながらそう答えます。対応の速さや職人の腕前については「それはどの会社でも当たり前じゃないですか」と一笑に付しつつ、自社が大切にしているのはもっと根本的なことだと言います。
「裏切ったことがないので。お客さんが望むクオリティを満たして、引き渡した後もちゃんと使えるね、よかったねって言ってもらえる──それが一番大事なことだと思っています」
依頼された仕事を納期どおり、求められるクオリティどおりにこなし続ける。そのシンプルな積み重ねが、創業から18年、ゼネコンとの長期的な信頼関係を育んできました。現在は仕事の受注に困ることはなく、「逆に指名で来てしまうので、こなすことの方が大変」という状況です。
主な現場はマンション(約7割)、商業施設、事務所ビルなど、コンクリート造の中大規模建物が中心。戸建ては手がけないと割り切った専門性もまた、強みのひとつです。仕事量が増え続ける今、中小建設業にとって最大の課題は「こなせる体制をどう作るか」に移っています。
⚠️ 人手不足・定着率…課題だらけの建設業で、どう動くか?
「入ってきても、抜けていく方が多い」。採用状況を問われた吉田社長は、率直にそう語ります。建設業界が抱える人手不足の問題は、少数精鋭の中小企業ほど直撃しやすい。これは多くの読者が共感できる現実ではないでしょうか。
定着しない原因のひとつは、仕事のイメージとのギャップにあると吉田社長は分析します。「楽しく稼ぐイメージで来て、思ったより大変だとわかって辞めてしまう」という傾向があると言います。一つの現場に1〜2年居続け、他業者や元請けとの密なコミュニケーションが求められる仕事は、根気と人間力が不可欠です。
「技術はやればやるだけ磨かれる。川の中の石ころみたいに、どんどん削ぎ落とされて綺麗になっていく。でも人間力は、その人しか持てない部分がある。コミュニケーション、責任感、根性──そこを私は一番重視しています」
また、社内ではミスを隠せる雰囲気を作らないことを意識し、「言いたいことを言える環境」づくりに取り組んでいます。「これ言うと怒られるから隠しておこうというのが一番怖い」と語る吉田社長。小さな会社だからこそ、「ほったらかさない」関係性が現場の安全と品質を守ることにつながっています。
🌱 10年後のビジョン──地域と業界への想いを語る
「もう一回り大きくしたいという気持ちはある」と吉田社長。現在は代表自らが現場の打ち合わせや代理人として動いていますが、将来的には「自分が表に出なくても会社が回るくらいの規模にしたい」と語ります。
そのために必要なのは、自分のやり方を受け継いでくれる人材の育成です。「私が目をかけてきたものを踏襲してくれるような人に来てほしい」という言葉には、技術だけでなく、仕事への姿勢や人間関係の築き方まで含めた”文化”を次世代に渡したいという思いが滲んでいます。
「電気工事の知識は要りません。根性を持って来てください。頑張りたい人は、応援しますので」
未経験者を受け入れ、一緒に成長していく姿勢は、かつて自分が「いろはも分からないまま飛び込んだ」経験からくるものでしょう。中小建設業にとって採用難が続く今、こうした「一から育てる」文化をいかに発信するかが、採用競争力の鍵になります。
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取材を通じて感じたのは、吉田社長の「信頼は言葉ではなく、仕事で示す」という一貫した姿勢でした。飾らない言葉の中に、18年間現場で積み上げてきたものの重さが感じられます。