建設・不動産を兼ねる会社は全国2万社──「地方ほど一社完結」許認可データが語る業界の実態
建設業と不動産業を同時に営む会社が、全国で2万社を超えているという調査結果が発表された。許認可データを分析すると、建設業界と不動産業界の「境界線」は都市と地方で大きく異なることが浮き彫りになる。経営の多角化や事業承継を検討する建設会社にとって、この実態は他人事ではない。
調査が明らかにした「建設×宅建」2万社の実態
法人データベース「Compalyze(カンパライズ)」を運営する株式会社Compalyzeが、国土交通省の許認可データを法人番号で名寄せして分析した結果、以下の事実が確認された。
『建設業許可と宅建業免許を両方持つ会社が全国で20,652社にのぼり、法人番号に紐づく宅建業者の約5社に1社(19.4%)を占めることがわかりました。この「両方持ち」の比率は地方ほど高く、地域によって不動産業の成り立ちが大きく異なる実態が見えてきました。』
URL:https://compalyze.co.jp/journal/construction-realestate-licenses
出典:建設も宅建も持つ会社は2万社 ── 許認可でみる「土地を仕入れ、建てて、売る」企業と、地方ほど進む垂直統合
建設業許可を持つ事業者は全国で約483,464件。東京(44,778件)と大阪(41,809件)が拮抗しており、人口規模の差が大きいにもかかわらず件数差が小さい点が特徴的だ。一方、宅地建物取引業者は全国約131,947件のうち、東京が28,024件と群を抜き、2位の大阪(15,357件)の約1.8倍に達する。建設が「現場のある場所」に広がり、不動産が「取引の起きる場所」に集積するという対照的な分布が明確に現れている。
「両方持ち」企業は地域の中核企業だった
データが示す最も注目すべき点は、建設と宅建の両許可を持つ企業の属性である。会社年齢の中央値は36年で、建設のみ(12年)や宅建のみ(7年)と比較して3〜5倍の長さを誇る。決算公告を出している割合も11.7%と、建設のみ(3.8%)・宅建のみ(5.1%)の約3倍にのぼる。
これらの数値は、二つの許認可を重ねて持つ企業が単なる「業種の足し算」ではなく、土地の仕入れから建設、販売までを一気通貫で担う事業体であることを示している。建売・分譲の担い手、中古住宅の買取再販業者、施工機能を内製化した不動産会社など、その形態は多岐にわたる。
ただし、両方持ちであっても決算公告を出すのは1割強にとどまる。許可を維持しているだけで事業の実態が薄い会社も一定数存在しており、「中核企業」として一括りにはできない側面もある。
引用元: 株式会社Compalyzeプレスリリース(PR TIMES掲載)
地方では「一社で建てて売る」垂直統合が標準形
都道府県別の分析では、宅建業者に占める「建設業許可も持つ」企業の割合が地域によって大きく異なることが判明した。山形41%、島根39%、秋田38%、岩手37%、青森35%、福島34%と、東北・日本海側の地方県で高い割合を示している。
対して、東京は10%、沖縄は11%と低水準にとどまる。この数値が意味するのは、地方では一社が土地の仕入れから建設、販売までを担う垂直統合型の事業モデルが主流である一方、都市部では仲介を専業とする宅建業者が大半を占め、施工は別会社が担う分業型が中心だということだ。
また、宅建業免許の更新回数(おおむね5年ごと)で分析すると、老舗ほど建設業許可を持つ割合が高い傾向も確認されている。新規参入企業では15%だが、中堅・老舗企業では22%まで上昇する。長く続く不動産会社ほど施工機能を内製化し、垂直統合を深めていく姿が読み取れる。
許認可は「できること」のタグ──M&Aにも影響する許可の価値
建設業許可や宅建業免許は売上や利益を直接示すものではない。しかし、その会社が法的に「何をできるか」を示す重要な情報源である。建設業許可を持つ企業は原則として軽微な工事を超える工事(建築一式以外は1件500万円以上が目安)を請け負える。宅建業免許を持つ企業は不動産の売買・賃貸媒介を業として行なえる。
この視点はM&Aの場面でも意味を持つ。許可を持つ会社を取得することは、その許可を維持するための人的・組織的な体制ごと引き継ぐことでもある。特に地方の建設会社にとって、宅建業免許の取得・維持が事業の選択肢を広げ、経営の安定につながる可能性がある。
建設業者が不動産業を兼ねるという選択は、地方の中核企業がこれまで実践してきた事業モデルそのものでもある。許認可というレンズを通して業界の地図を見直すことで、自社の立ち位置や今後の経営戦略を再考する機会にしてほしい。
まとめ
建設業許可と宅建業免許を両方持つ企業は全国2万社超にのぼり、地方ほどその割合が高い。「土地を仕入れ、建て、売る」垂直統合型のビジネスモデルは、地方の中核企業が長年積み上げてきた経営の形であり、許認可データはその実態を如実に映し出している。都市では分業、地方では一社完結という業界構造の違いを把握することは、今後の事業戦略やM&A、経営多角化を検討する上で欠かせない視点となる。自社の許認可状況と地域の業界構造を今一度見直してみることをお勧めしたい。
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