なぜ今、維持工事の「担い手不足」が深刻なのか?🏗️
全国に張り巡らされた道路・河川・橋梁といったインフラ。その日常的なメンテナンスを担う「維持管理工事」の現場で、深刻な担い手不足が広がっています。
維持工事は新設工事と異なり、施工箇所が点在しているケースが多く、作業規模が小さくても毎回段取りや機材搬入が発生します。つまり、作業量(数量)に比べて必要な手間が割高になりやすい構造になっているのです。こうした特性が積算基準に正確に反映されてこなかったことで、「仕事量のわりに採算が合わない」と感じる企業が増え、担い手の確保がますます困難になっていました。🔧
加えて、建設業全体で見ても賃金の低さや長時間労働という課題が残っており、若い世代が業界に入ってこない悪循環も続いています。国もこうした実態を問題視し、ついに直接的な調査と制度改革に乗り出しました。

※画像はイメージです
国土交通省が動いた!「賃金・労働時間等の実態調査」を開始📋
国土交通省は令和7年(2025年)11月4日、直轄土木工事において「賃金・労働時間等の実態調査」を試行開始すると発表しました。
この調査は「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)第27条の規定に基づいています。品確法では「国は、適正な請負代金・賃金が支払われるよう、賃金の支払等に関する実態の調査を行なうよう努めなければならない」と明記されています。
また、発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)においても、「発注者は、受注者の協力の下、下請業者への賃金の支払いや適正な労働時間確保に関し、その実態を把握するよう努める」旨が規定されていました。
今回の試行は「受注者希望方式」で行なわれており、調査のポイントは次の3点です。💡
①実態調査をより円滑に行なうための実労働時間等を調査する仕組みの構築
②「賃金・労働時間等の実態調査」の結果の算定方法の確立
③賃金の原資となる労務費を受発注者の双方が確保することを目的とした積算上の作業時間の提示
さらに将来的には、この調査結果を「適切な業者選定に向けて活用」することも予定されており、単なるデータ収集にとどまらず、入札・発注の仕組みそのものを変えていく方向性が示されています。
「維持管理部会」での議論と積算基準の改定内容🔍
国土交通省は「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」のもとに「維持管理部会」を設置しており、令和8年2月18日に「維持修繕工事における積算等の改善方策」を議題とした令和7年度会合を開催しています。有識者や業界団体で構成されるこの部会が、実態を踏まえた制度改善の核心を担っています。📐
こうした議論の成果を反映したのが、令和8年度(2026年度)から適用される新たな積算基準の改定です。特に重要なのが「施工規模に応じた標準歩掛(小規模歩掛等)の設定」の見直しです。
これまで標準歩掛の適用可否の判断が難しく、維持修繕等に関係する工程での小規模施工が適切に積算に反映されにくい状況がありました。今回の改定では、この点を考慮した歩掛改定が実施されています。
また、令和8年度積算基準改定は「第三次担い手3法の全面施行を踏まえ、担い手確保・生産性向上等に取り組む」という大きな方針のもとで行なわれており、担い手の確保のための働き方改革・処遇改善と、公共工事に従事する者の労働環境の改善が柱となっています。なお、これらの新基準等は、地方ブロック発注者協議会等を通じて全国の都道府県・政令市にも情報提供される予定です。🌐
2026年5月27日の懇談会で「地域の守り手」確保を本格議論⚡
2026年5月27日(水)には、国土交通省が主催する「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」(令和8年度第1回)が中央合同庁舎2号館で開催されました。この懇談会は、発注者の視点から今後の建設生産・管理システムのあり方と諸課題への対応方針について検討・提言を行なうことを目的とした場です。
今回の主な議題は、①公共工事の品質の確保と、②維持管理を支える「地域の守り手」の確保等のあり方の2点。地域のインフラを日々維持管理する担い手をどのように確保し続けるかという問いは、今や国レベルの緊急課題となっています。🏢
建設業の中小企業や現場監督の方々にとっては、「制度が変わっても現場は変わらない」と感じることもあるかもしれません。
しかし今回の一連の動きは、単なる審議会の開催にとどまらず、賃金実態の調査→積算基準の改定→発注方式の見直しという「制度の連鎖」として着実に進んでいます。この流れをいち早くキャッチして、見積作成や受注戦略に活かしていくことが、中小企業にとって重要な経営課題となります。📊

中小建設業がいま押さえておきたい3つのポイント✅
今回の国の動きを踏まえ、建設業の経営者・事務担当者がいま確認しておくべきポイントを整理します。
① 賃金・労働時間の「見える化」は不可避な流れ
実態調査の目的のひとつは「見える化による低価格競争の抑止」です。調査結果が将来的に業者選定に活用されるとなれば、適正な賃金を支払っている企業が正当に評価される仕組みへの転換が期待されます。建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携も視野に入れ、自社の就業実態をきちんと記録・管理しておくことが重要です。🗂️
② 維持修繕工事の「採算感」が変わるかもしれない
小規模施工を考慮した歩掛改定により、これまで積算上で不利だった小規模の維持工事案件の収益性が変化する可能性があります。令和8年度以降の積算基準の変化を定期的にチェックし、見積作成に正確に反映させることが求められます。
③ 地方発注者への情報提供も予定されている
今回の積算基準改定は、地方ブロック発注者協議会等を通じて都道府県・政令市にも展開されます。国の直轄工事だけでなく、地方自治体が発注する維持工事にも波及する可能性があるため、地方の建設業者にとっても無関係ではありません。🌍
まとめ
インフラの維持管理を担う「地域の守り手」を確保するために、国土交通省は賃金・労働時間等の実態調査、積算基準の改定、そして懇談会での継続的な制度議論という三段構えの取り組みを進めています。💪
維持工事は「採算が合いにくい」と感じている経営者も多いと思いますが、今まさにその前提となる積算・発注の制度が変わろうとしています。自社の現場実態と国の制度の方向性を照らし合わせながら、先手を打った経営判断をしていきましょう。🔥
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出典:「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の開催(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001328.html をもとに作成
(参考)直轄土木工事にて「賃金・労働時間等の実態調査」を開始します
(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001259.html
(参考)「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会 維持管理部会」の開催(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001294.html
