近年、建設業界では担い手不足や公共工事の変動への対応に加え、地域課題への取り組みが重要視されています。そのなかで注目されているのが、建設会社による農業事業への参入です。
造成工事や土地整備で培った技術を活用し、耕作放棄地の再生や地域活性化につなげる取り組みが全国各地で広がっています。単なる新規事業ではなく、地域社会との関係を深めながら企業価値を高める動きとして注目されています。
今回は、建設会社が農業分野へ挑戦し、地域貢献と次世代育成を両立している事例から、中小建設業が学べるポイントを考えてみます。
建設会社発の農業事業が地域の未来を支えている
『やくもファームは、建設業で培ってきた「現場力・計画力・人を雇い、仕事をつくる力」を農業に活かせると考えました。農業は、個人の努力や根性だけに頼る時代を終えています。企業だからこそ支えられる農業の形がある。それが、やくもファームの出発点です。』
『株式会社やくもファーム(本社:兵庫県神戸市北区)は、神戸市立藍那小学校の児童を対象とした農業体験学習を2026年6月9日(火)から11日(木)にかけて実施いたします。本取り組みは、かつて耕作放棄地だった農地を再生して整備した農園を活用し、地域の子どもたちに農業や自然、食の大切さを学んでもらうことを目的としています。』

引用元:株式会社やくもファーム プレスリリース(PR TIMES掲載)
兵庫県神戸市のやくもファームは、八雲建設株式会社のグループ会社として設立された農業法人です。耕作放棄地の再生を起点に、いちごや米、小麦などの生産を行ないながら、地域とのつながりを広げています。
さらに地域の小学生を農園へ招待し、いちご狩りや栽培学習を通じて食育活動も実施しています。建設業で培ったノウハウが、地域農業の課題解決へ活用されている好例といえるでしょう。
なぜ今、建設会社が農業に注目するのか
建設業と農業は一見すると異業種に見えます。しかし実際には多くの共通点があります。
まず土地を整備する技術です。造成工事や排水整備、重機操作などは農地再生に欠かせない技術です。特に耕作放棄地の再利用では、建設会社の強みが発揮されます。
また、工程管理や安全管理、人員配置といった現場マネジメント能力も農業経営に応用できます。近年は農業法人化が進んでおり、企業的な経営手法が求められる場面が増えています。
さらに、建設業の閑散期対策として農業を組み合わせることで、雇用の安定化につなげる可能性もあります。
地域課題の解決が企業価値向上につながる
地方では高齢化や人口減少によって耕作放棄地が増加しています。農地の荒廃は景観悪化だけでなく、獣害や災害リスクの増加にもつながります。
こうした課題に企業が関わることで、地域住民との信頼関係が生まれます。
やくもファームでは農産物を子ども食堂や児童養護施設へ提供し、地域イベントにも積極的に参加しています。農業を通じて人と人をつなぐ役割を果たしている点が特徴です。
近年はESG経営や地域共生が企業評価の対象になるケースも増えています。単なる利益追求だけでなく、地域課題への取り組みそのものが企業価値向上につながる時代になっています。
中小建設業が取り組める地域貢献のヒント
すべての企業が農業事業へ参入する必要はありません。しかし、地域課題の解決に自社の技術を活かすという考え方は多くの企業に応用できます。
例えば空き地管理や森林整備、防災活動への協力、学校との連携事業なども有効です。
重要なのは、自社の強みを地域課題と結び付けることです。
建設会社は地域インフラを支える存在であり、行政や住民との接点も多く持っています。その立場を活かせば、従来の工事受注だけでは得られない新たな信頼や事業機会が生まれる可能性があります。
地域から必要とされる企業になることは、採用活動や人材定着にも良い影響を与えるでしょう。

【画像:地域の子ども食堂への提供】
『自社ビニールハウスで育てたいちごは、地元の子ども食堂や児童養護施設、神戸市内のパティスリー・飲食店へと届けられ、地域の中で循環する仕組みを少しずつ広げています。』
引用元:株式会社やくもファーム プレスリリース(PR TIMES掲載)
これからの建設業は地域づくりの担い手になる
建設業界を取り巻く環境は変化しています。人口減少や市場縮小が進むなか、従来の事業だけに依存しない経営戦略が求められています。
その一方で、地域社会には解決を必要とする課題が数多く存在します。
やくもファームの事例は、建設業が持つ技術や人材、現場力を地域課題解決へ活用できることを示しています。農業そのものではなくても、自社の強みを地域に役立てる視点は今後ますます重要になるでしょう。
企業が地域とともに成長する時代だからこそ、中小建設業にも新たな可能性が広がっています。
まとめ
建設会社による農業参入は、耕作放棄地の再生だけでなく、食育や地域活性化、人材育成など多面的な価値を生み出しています。
同社代表の松本将志氏は、今回の取り組みについて次のように語っています。
『子どもたちには、食べ物がどのように作られているのかを実際に見て、触れて、感じてもらいたいと思っています。また、この農園は地域の耕作放棄地を再生して生まれた農園です。地域で守られてきた農地が、今度は子どもたちの学びの場となり、農業や自然への関心を育み、未来の地域づくりにつながることを願っています。』
引用元:株式会社やくもファーム プレスリリース(PR TIMES掲載)
農業そのものではなくても、自社の強みを地域に役立てる視点は今後ますます重要になるでしょう。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
