🏗️ なぜ建設業を選んだのか?原点にある想い
久芳代表がこの業界に入ったのは、父の影響が大きい。「もともとはバブルの時に親父が会社をしとって、その時に忙しいから手伝えよみたいな感じで」と当時を振り返る。父も同じ建築金物の仕事をしており、17歳から自然と業界に足を踏み入れた。
その後、父が亡くなり会社もなくなってからは、父のつながりを足がかりにしながら独立。「親父が生きとった時には、それをツテで仕事を。でも横のつながりがどんどん広がっていって、今では新しい取引先がほとんど」という状態へと変化していった。33歳のころには一人親方として現場取り付けの仕事を続け、8年ほど前からは自社工場を構えて製造にも乗り出した。
業界歴はすでに40年近くに及ぶ。「自分にはこれしかなかったから」と久芳代表は淡々と語る。華々しい志があって飛び込んだわけではない。しかし長年にわたって積み上げてきた経験と技術は、今日の株式会社モリ工房の礎そのものだ。中小建設業にとっても、こうした「気づけばここまで来ていた」というキャリアの積み重ねが、実は最も強固な武器になることを久芳代表の姿は示している。
🔧 うちにしかできないこと──現場が語る強みとは
株式会社モリ工房の最大の強みは、設計・製造から現場取り付けまでを一貫して自社で完結できる点だ。「作るところは作るだけで、取り付けは取り付けだけって分かれると、何かあった時の対応が難しくなる。自社で一から十までやっとけば、なんかあった時でもすぐ対応できる」と久芳代表は説明する。
製造段階から取り付けをイメージしながら作ることで、現場での段取りがスムーズになるという。「作ってる時にその図面が頭に入ってるから、取り付けに行った時でも悩まずに済む。どうしたら早く取り付けできるかを作ってる段階から考えながらやってるから、現場でもうちに頼んだらスムーズに納まることが多い」という言葉に、長年の職人経験から生まれた仕事のセンスが凝縮されている。
もうひとつの強みは、仕上がりの丁寧さだ。「綺麗に仕事をするっていうのはよく言われる」と久芳代表。「いいものを作ろうと思ったら時間がかかる。でもそれがうちのやり方」と続ける。さらに、施主や元請から相談を受けた際には「できない」とは言わず、「こうしたらできますけど」という提案に切り替える姿勢も徹底している。「できないっていうことを言わないかなあ。それをどうしたらできるかっていうことを考える」という発想が、顧客からの信頼につながっている。
⚠️ 忙しい時もあれば暇な時もある──建設業の「波」とどう向き合うか
建設業界ならではの課題として、久芳代表が真っ先に挙げるのが仕事量の繁閑だ。「建築っていうのは忙しい時もあり、暇な時もある。その波がある」というのが40年のキャリアを通じた実感だ。
特に厄介なのが、忙しい時期と暇な時期が業界全体で連動してしまうことだ。「暇な時はよそも暇で、忙しい時はよそも忙しい。暇やでって電話しても、あっちも暇やとそうやなぁって終わるだけ」と苦笑する。協力し合いたくても、互いの状況が重なってしまうのは中小建設業にとって共通の悩みだろう。
また、モリ工房のように工場を抱える会社は、繁閑の波が人員計画にも直結する。「ずっと同じ仕事が大量生産で回ってくるなら別やけど、忙しい時に人を増やしたって暇な時に何するねんっていう話になる」と久芳代表。だからこそ、今の8名体制を維持しながら、波をうまくこなすことを優先している。
中小建設業にとって、仕事の波は避けがたい宿命でもある。久芳代表のように、無理な拡大を避けて現状の規模でクオリティを保ち続けるという判断は、長く安定した経営を続けるうえで一つの確かな答えかもしれない。
🌱 今後の展望──地に足のついたビジョンと現場への想い
「可もなく不可もなくじゃないけど、現状維持でみんなが仕事があって、みんなが生活できて。もうちょっとの利益でいい」──久芳代表の言葉には、急拡大を求めない、地に足のついた経営哲学が表れている。「赤字じゃなかったらいい。ちょっとの利益でもあって、みんながちゃんと生活していけたら。それが一番かなって思う」
一方で、従業員の待遇については真剣に向き合っている。「出せるんやったらいっぱい出してあげた方がいい」と考えながらも、業界の構造的な問題として単価の伸び悩みに頭を抱える。目の前の仕事一つ一つに誠実に向き合い、信頼を積み重ねていくことが、結果として会社と仲間を守ることにつながると久芳代表は信じている。
業界に入ってくる若い人たちへは「趣味は仕事ですから」と笑いながら語る久芳代表だが、実は寝ている時もほぼ仕事の夢を見るという。「大概仕事してる、夢の中で。ものすごく悩んで、起きて夢でよかったって思うことも多い」。それほど仕事が頭から離れないからこそ、解決策を探し続けるその姿勢が40年の実績を支えてきた。「受けた仕事はどうしたら綺麗にできるか、それを考えるのはタダ」という言葉に、職人としての本質が凝縮されている。
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取材を通じて感じたのは、久芳代表の「できないとは言わない」という一貫した職人としての姿勢でした。どんな難しい仕事が来ても「どうしたらできるか」を考え続け、寝ている間も夢の中で仕事に向き合う──その姿は、技術だけでなく誠実さで信頼を築いてきた証だと思います。大きな野心よりも、目の前の仕事を丁寧にやり切ることへのこだわり。「みんなが食べられればそれでいい」という言葉の重さに、40年のキャリアが滲んでいました。