🏗️ なぜ設備業を選んだのか?原点にある想い
小沼氏は26歳まで、サッカー一筋の人生を歩んでいた。JEFユナイテッド市原・千葉のDFとして3年間プロの舞台に立ったが、「一流じゃなかった」と自ら笑いながら振り返る。
「半ば諦めて、引退してから2年ぐらい仕事を探してましたね」
職種を問わずに仕事を探し続けた末に出会ったのが、建築の現場だった。決め手になったのはサッカーとの意外な共通点だったという。
「試合に出てれば特用されて早く帰れるじゃないですか。建築も似てて、朝早いけどやることやったら帰れる、みたいな。そこがしっくりきたんですよね」
持ち前の負けず嫌いな性格が、新しい世界への挑戦を後押しした。
「最初の下積みの時はいろんな人にしごかれたけど、こんなやつにできるんだったら俺にもできるみたいな気持ちで食らいついていきました」
知り合いの設備屋の現場に入り、図面の読み方から工事の段取りまで4年かけて叩き込んだ。やがて現場で出会った一つ上の職人から「図面も読めるのにもったいないよ」と独立を薦められ、縁と流れに乗るかたちでとんとん拍子に仕事が繋がっていった。会社名「J-Facility」の”J”は代表の名前「純矢」のイニシャル、”Facility”は英語で「設備」を意味する。平成30年の設立から、着実に現場の数を重ねてきた。

※今も横浜シニアリーグで汗を流す小沼代表。プロ時代の経験が現在の現場での「連携」の礎になっている。
🔧うちにしかできないこと──2名で大型マンションを丸ごと担う
J-Facilityのメインの仕事は、新築マンションの給排水工事だ。空調や消火設備も含め、設備屋が担う工事をほぼすべてカバーできる体制を2名で整えている。
「50〜60所帯ぐらいのマンションなら、自分たちで全部できちゃうんですよ。給排水も空調も、新築マンションの設備はだいたい全部やってるみたいなイメージですね」
元請けにとって、設備工事を複数社に分業で発注するのは段取りの手間がかかる。その点、J-Facilityは設備全般をまとめて任せられるワンストップ対応が強みだ。さらに小沼氏はかつて現場管理の経験を持ち、図面の読み込みから各業者との調整、元請けとの打ち合わせまでを一人でこなす。
「番頭さんが月に一回来るだけで、あとは電話対応も含めて全部俺でやってます」
「任せた後に連絡が来ない」「何かあってから初めて報告が来る」──そんな下請けへの不満は、建設現場でよく耳にする話だ。小沼氏はそこを仕事の根幹として捉えている。
「一番大切にしているのは連絡ですね。報・連・相。何かあればすぐ入れるし、問題がなくても状況は伝える。丸投げで任せてもらった分、そこだけは絶対に外さない」
プロサッカー選手時代はエゴイストだったと笑うが、今の現場では「連携が取れるかどうか」を何より重視する。技術と仕上がりへのこだわりについても、明確な基準を持つ。
「新築からスタートした職人の仕事は綺麗なんですよ。検査がうるさいぶん、細かいところまで丁寧にやる習慣がつく。そこは改修工事から入った人とは違いますよね」
設備工事のパートナーを探している元請け・管理会社にとって、段取りの確かさと報連相の徹底は、業者選びの核心になる。「任せたら安心」を体現できる会社として、J-Facilityは今も新たな元請けからの引き合いを受け入れる体制にある。

※整然と美しく施工された新築マンションの給排水・空調設備。見えなくなる部分だからこそ、一切の妥協を許さない。
⚠️職人不足、信頼できる仲間──課題だらけの現場で、どう動くか
設備業界の課題として、小沼氏がまず口にしたのは職人の絶対数の少なさだ。元請けの仕事が安定している今も、規模を広げていくためには信頼できる職人とのネットワークが欠かせない。
「技術のある職人さんって、なかなか増えないんですよ。しかも業者によって仕事の丁寧さが全然違う」
特に小沼氏が気にするのは、仕事が「汚い」業者の存在だ。見えない部分を雑に処理したり、水を拭かずに現場を去る職人が少なからずいる現実を、長年の現場経験の中で目にしてきた。
「余計なことをしてミスったら困るし、かといって雑にやられても困る。分かる範疇のことはちゃんとアドバイスするし、きちんとやる。それだけですよ」
元請けからの信頼を積み重ねてきた背景には、こうした地道な仕事の積み重ねがある。一方で、今後の課題として感じているのが管理ができる人材の確保だ。管理者がいれば、直接元請けから受注できる範囲が広がる。実際にホームページを見て採用の問い合わせ電話が来たことがあったが、タイミングが合わず断ってしまったという苦い経験も持つ。
「そのタイミングでうまく仕事を取れる状況じゃなかったんで。今思えばもったいなかったかもしれないですね」

※狂いのない直線と確実な支持。元請けからの「任せたら安心」という信頼は、こうした地道な高品質の積み重ねから生まれる。
🌱縁と流れで積み上げてきた10年──これからの保土ケ谷と、次の現場へ
小沼氏がこれから力を入れたいのは、元請けの幅を広げることだ。現状は特定の元請けから安定した受注が続いているが、隙間に「応援」的な形で受け持てる案件も取り込んでいきたいという。
「今の現場がパンパンの時期は難しいけど、来月・再来月の半ばからなら動けますよ、みたいな受け方ができれば一番いいですよね」
直接受注の可能性も視野に入れており、そのためには管理ができる人材の存在が不可欠だと考えている。
「管理できる人がいれば、一次受けとかもできちゃうかなとは思うんですよ。図面を書いてくれたり、安全教育に出てくれたりしてくれる人がいれば」
仕事の合間には、今もサッカーを続けている。横浜シニアリーグに所属し、ピッチに立ち続けることが日常の一部だ。プロ時代のエゴイストな自分から、連絡を何より大切にする今の自分へ。現場という新しいフィールドで、小沼氏はまだ走り続けている。
「縁と流れでここまで来たような感じなんですよ。でもそれがちゃんと繋がってきてるんで、このまま積み上げていこうと思ってます」
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取材を通じて感じたのは、小沼代表の「負けず嫌い」という言葉の重さです。縁と流れに乗りながらも、現場での丁寧な仕事と連携への真摯な姿勢を一切崩さない。かつてのフィールドで培った精神は、現場という新しい戦場でも地続きでした。