🏗️ 五代にわたる「瓦の家」――この道に入ったのは必然だった?
宮尾かわら工業の歴史は1910年(明治43年)にさかのぼる。代々この地で瓦の製造を手がけてきた家に生まれ、宮尾純代表で五代目を迎える。
「うち代々から製造やってたんで。僕で五代目なんです」
かつては地元の粘土質の土を足で踏み練り、一枚一枚丁寧に成形・乾燥させていく手仕事が主流だった。この地域には昔から瓦屋が七、八軒ほどあったというが、現在も操業を続けているのは宮尾かわら工業だけとなっている。
転機は父・先代の代に訪れた。大量生産時代に対応するには設備投資に1億円・2億円規模の費用がかかるうえ、機械化に向いた粘土は淡路産の方が適しており、地元の土ではコストが合わなくなっていた。そこで「製造より工事へ」と方向を切り替えた。
父が工事業へと転換し、宮尾代表はその父とともに現場をこなしながら技術と取引先を引き継いでいったと宮尾代表は振り返る。経営全般を担うようになったのはおよそ15年ほど前のことで、その後父が他界したのちも得意先との関係を守りながら事業を続けてきた。50代となった今も現場に立ち続けている。
🔧 「必要な工事だけを」── 地域に根ざした誠実さが強みになる
現在の体制は宮尾代表と専属職人1名の少数精鋭。繁忙期には一人親方に応援を頼みながら現場をこなしている。取り扱う屋根材は瓦・スレート・カラーベストなど幅広く、金属屋根以外はひととおり対応できる。板金工事も取引先から依頼があれば手がけることもある。
中小建設業にとって最大の強みは「地域での信頼の積み重ね」だ。宮尾代表がほぼ営業活動をしたことがないにもかかわらず、工務店や元請けからの仕事は途切れていない。その背景にあるのが、長年かけて培われた取引先との関係性だ。
「このあたりって、板金屋はここ、瓦屋はここっていうのがだいたい決まっちゃうんですよ。何かトラブルとかないかぎり新しい業者に依頼することは基本ないんで」
そこで宮尾代表が最も大切にするのは、丁寧な対応と「無駄な工事をしない」という姿勢だ。
「親切丁寧で、無駄な工事をせんと。必要な工事のみをやっていく」
値段の叩き合いで勝負しようとは思わない、と宮尾代表ははっきり言う。「ちょっと高くつくかわからんけど、ちゃんとやらせてもらうよ、という方面でやっていきたい」という言葉に、長年地域と向き合ってきた職人の誠実さが滲み出ている。
⚠️ 資材値上がり、需要の波……瓦業界が直面する現実とは
中小建設業全体で人手不足やDXへの対応が叫ばれる中、瓦業界ならではの課題も顕在化している。
まず資材の値上がりだ。愛知・三河産の瓦が値上がりするとの情報を受け、宮尾代表は値上がり前に仕入れを済ませるなど先手を打つ対応を取っている。コスト意識のシビアな現場感覚が中小ならではの機動力を生んでいる。
仕事量については、昨年は夏前から繁忙が続いたが、年明け以降は落ち着いた時期もあったという。周囲の同業者に聞いても「暇やで」という声が増えており、業界全体として需要が減少傾向にある現実は否めない。
「昔よりはそういう声を聞くことが多くなってきたなとは思う」
一方で、デジタル面での対応にも取り組み始めた。以前から「取り残されるのは嫌だ」という意識のもとホームページを立ち上げ、地道に運営を続けている。
「ホームページも全くやってなかったら取り残される感じがしてね。まあ慌てずに年数を積み重ねていったらええかな、と思ってやってるんですよ」
大きく伸ばそうという発想ではなく、知名度を維持しながら「たまに依頼があれば」という堅実な姿勢だ。中小建設業が無理なく情報発信を続けることの大切さを実感させてくれる。
🌱 「雨漏りは我慢せず、早めに専門家へ」──地域へのメッセージと今後の歩み
宮尾代表自身は「続けられる限りはやっていく」というスタンスで、目安として60代半ばまでは現役でいたいと考えている。
「いつまでっていうのは決めてはないけど、まあそのぐらいはやれるんやろうなと思っています」
今後も規模を大きく広げるより、いまある取引先との関係を大切にしながら、地域の屋根を守り続けることに軸足を置く考えだ。
そんな宮尾代表が地域の方々へ伝えたいメッセージはシンプルだ。
「雨漏りしたら我慢せずに、辛抱せんと早い段階で専門家に相談した方が、結果的に被害が少なく安くあがる」
DIYや放置で悪化させてしまう前に、まず専門家に相談してほしいというのが宮尾代表の願いだ。100年以上にわたり地域の屋根と向き合ってきた五代目の言葉には、技術への自負と住まい手への思いやりが込められている。
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取材を通じて感じたのは、宮尾代表の「誠実さ」への一貫したこだわりでした。派手な営業も値引き競争もせず、必要な工事だけを丁寧に。それが百年以上続く家業を支えてきた根っこなのかもしれません。