🏗️ なぜタイルの道を選んだのか?原点にある職人の楽しさ
高校を中退し、18歳のころに友人の紹介で建設業界へ飛び込んだ野本社長。「将来何になりたいという気持ちは全くなかった。アルバイトでもできへんかなという感じで入りました」と率直に振り返る。
ところが実際に働き始めると、タイル工事の面白さに引き込まれていく。「仕上げ工事やから、自分が張ったものが目に見えてわかる。同じものを貼ることはほとんどなくて、毎回真新しい仕事なんですよ」。仕上げ工事ならではの達成感と、バリエーション豊かな仕事の性質が社長を惹きつけた。
職人として約10年間腕を磨き、29歳で独立。法人化は平成23年で、現在に至る。「最初は一流の職人になりたいというのが本音でした」と語る社長の言葉には、今もその職人魂が宿っている。
🔧 うちにしかできないこと──資格と実績が語る強みとは?
中小建設業にとって差別化は難しいテーマだ。野本タイルの強みのひとつは、社内9名の職人全員が「一級タイル張り技能士」の国家資格を保有している点である。「4回落ちて5回目で通った子もいる。でも一級は一級。資格がみんなの自信になりますから」と社長は言う。全員取得は社長が自ら推進した方針で、「他のところにはない強みを出したかった」という明確な意図がある。
さらに、大阪駅ビルやグランフロント大阪、あべのハルカス、甲子園のリニューアル工事など、誰もが知る大型物件への施工実績も信頼の裏付けだ。「そういう物件の名前を出したら、お客さんに安心していただけますから」。技術力と実績の両輪が受注につながっている。
社内では「挨拶と身だしなみ」を常に徹底している。「信用を失うのは一瞬。当たり前のことをきちんとやるのが基本です」と語る社長にとって、技術だけでなく人としての信用を積み重ねることが、長期的な取引につながると確信している。
⚠️ 仕事が”止まる”恐怖とどう向き合うか──中小建設業の課題と対応策
中小建設業にとって最大の悩みのひとつが「仕事の浮き沈み」だ。野本社長もリーマンショックやコロナ禍を経験し、取引先が数社に偏ることの脆さを痛感した。「取引先を固定化してしまうと、そこが仕事ないって言ったら自ずとこちらも仕事がなくなる。仕事の波に乗れるかどうかで、会社の命運が決まってしまうところがある」と率直に語る。
そこから取り組んできたのが、攻撃的な営業スタイルへの転換だ。30歳の甥に外回り営業を任せ、名刺を積極的に配り、取引先を数倍に拡大。業界全体が閑散期でも安定的に仕事が回るようになった。「受け身でいたら仕事は取れない。母数を増やすことが一番大事でした」。この「守りから攻めへ」の転換は、中小建設業が仕事を安定させるための一つの答えといえるだろう。
🌱 10年後のビジョン──新卒採用と人材育成で次の扉を開く
「ようやくそういう考えになりました」と野本社長が語るのが、人材の採用強化だ。仕事が安定してきた今、現在10人体制の組織を20〜30人規模へ拡大していくビジョンを描いている。特に力を入れたいのが高卒の新卒採用だ。これまで中途採用も試みたが「なかなか長続きしない」という経験から、素直に一から育てられる新卒に目を向けた。
採用活動においても、ホームページ上に求人専用ページを設けて自社の魅力を積極的に発信していく方針だ。「待っていても向こうから来ることはない。何でも攻めないと無理」と社長は言い切る。この攻めの姿勢は、仕事への向き合い方そのものでもある。近年は店舗工事の依頼も増え、施工後にお客様から直接感謝の言葉をいただく機会も多くなってきた。「お客さんに喜んでもらえるのが一番嬉しい。ダイレクトに反応が返ってくるから、やりがいも大きい」。攻めの先にあるのは、数字ではなくお客様の笑顔だ。
若い人へのメッセージとして印象的だったのが、「仕事は生活を潤すためにある。楽しくなかったら続けられへん。肩の力を抜きながら働ける環境を作りたい」という言葉だ。中小建設業にとって人材確保は最大の課題のひとつだが、野本社長は”働く喜び”を軸に据えることで、次の世代を迎え入れようとしている。
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取材を通じて感じたのは、野本社長の「楽しくないと続けられへん」という言葉の一貫性だ。職人としての原点を忘れず、攻めの姿勢で取引先を広げ続けてきた30年の歩みは、同じ課題を抱える中小建設業の経営者へのリアルなエールにほかならない。