🏗️ なぜ圧送業を選んだのか?原点にある「ポンプ車との幼少期」
林代表が建設業、とりわけコンクリート圧送の世界へと歩み始めたのは、大学卒業と同時に父が経営する箕郷圧送工業へ入社したことがきっかけだ。業界では他社で修業を積んでから家業に戻るというルートも珍しくないが、林代表はあえてそれを選ばなかった。
「修行してる暇があったら、いち早く技術を学びたかった」
その背景には、物心ついた頃からポンプ車が「日常」だった環境がある。創業当初、会社はポンプ車1台から出発しており、自宅の庭に停まる車両に毎日触れる生活を送っていた。
「小学生の頃からポンプ車に触れる機会が多くて、操作したりもさせてもらってた。それで嫌だっていう感情がそもそもなかったんですよね」
父から操作を教わり、まるで庭で遊ぶようにポンプ車と親しんだ幼少期。本物の機械に幼い頃から触れてきたことが、圧送業への自然な流れをつくった。ストレートに入社したことで昔からのお客様に名前を覚えてもらい、継続的な信頼関係を築けたのも、その一因といえる。
🔧 うちにしかできないこと──「点」の仕事で勝負する圧送業の強み
箕郷圧送工業の現場は、施設や工場といった大型案件が中心だ。対応エリアは群馬県内にとどまらず、栃木・埼玉にまで広がる。元請けはスーパーゼネコンから地元ゼネコンまで幅広く、長期にわたる信頼関係がその仕事量を支えている。
林代表が自社の強みとして語るのは「丁寧さ」と「現場調整力」だ。
「自分で言うのも恥ずかしいんですけど、同じ職種の他社と比べられた時にうちの方が丁寧だって言ってもらえることが多い。単体でやる仕事じゃなくて、色んな職種の人たちと一緒に一つのものをつくる仕事なんで、コミュニケーションをうまく取りながら作業をスムーズに流せるかどうかが大事なんですよ」
また、他社には断られがちな「依頼当日対応」も徹底している。元請けの工程を優先した動き方が、次の仕事につながるという確信がある。
圧送業のビジネス構造として、同社は「点の仕事」という独自の概念を持つ。大工や鉄筋屋が一つの現場に長期間入り続ける「線の仕事」とは異なり、圧送業は各現場で必要なタイミングにだけ入る。1日に5〜6か所を回ることも珍しくなく、いかに多くの現場を「点」で埋めていくかが、車両台数を稼働させるための鍵となる。全車両は自社保有であり、機械性能を軸に営業提案ができるのも強みの一つだ。
⚠️ 人手不足の時代に、どう人を集めるか──「手取り25万スタート」という覚悟
中小建設業が抱える共通の課題は人材確保だ。箕郷圧送工業も例外ではなく、以前は求人をかけてもなかなか人が来ない時期が続いた。しかし直近2年ほどで状況は変わり始め、日本人スタッフを中心に複数名の採用に成功している。
林代表が求職者に向けて打ち出しているのが「建設業経験者の転職者に、入社初日から手取り25万円」という水準だ。
「今は周りの業種もそれなりにいい給料を出してきてる。建設業の3Kっていうイメージもある中で、うちに来てくれた人にはちゃんと来てよかったと思わせたい。だからスタートから手取り25万を目指してやってるんです」
休日面でも変化があった。第2・第4土曜日に加え、第3土曜日も休みとし、カレンダーの祝日は原則休日という体制を整えた。林代表が採用ターゲットとして意識するのは、同じ建設業に従事しながら職種を変えたいと考えている人材だ。
建設の知識や現場感覚を持ちながら圧送業へ転職してくれる人は、即戦力になりやすく、定着率も高い。「建設業で頑張っている他職種の人に来てもらいたい」という言葉には、業界全体を仲間として捉える視点がある。
🌱 5年後、生き残った者が仕事を選べる──次世代への熱いメッセージ
業界の高齢化と職人不足が進む中で、林代表は意外にも前向きな未来を描いている。
「5年後には、生き残ってる圧送業者は仕事を選べるぐらいの立場になってると思う。ライバルが減れば、残った会社に仕事が集まってくる。だからこそ今、ちゃんと頑張ってくれてる人間の給料をしっかり上げて、来てよかったと思ってもらえる会社にしていきたい」
そして、これから建設業界を目指す若い人たちへ向けて、林代表はこう語りかける。圧送業は大変な一方、「形に残る仕事」という大きなやりがいがある。橋も、ビルも、商業施設も、自分が打設したコンクリートが構造物として残り続ける。「あそこ、パパが作ったんだよ」と胸を張れる仕事だ。
さらに様々な現場を経験する中で型枠・鉄筋といった周辺知識も自然と身につき、DIYから近所の施工依頼まで対応できる人材に育っていく面白さもある。
「興味を持ってやってると、圧送だけじゃなくて色んなことが覚えられる。それがまた次の仕事や地域とのつながりにもなっていくんですよ」
地域の信頼と現場のプロとしての誇りを軸に、箕郷圧送工業はこれからも着実に歩み続ける。
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取材を通じて感じたのは、林代表の「来てくれた人を後悔させない」という言葉の重みでした。給与・休日・やりがいを着実に整え、人手不足をチャンスと捉える姿勢は、同じ悩みを持つ中小建設業の経営者にとっても大きなヒントになるはずです。「頼まれた仕事を断らない」現場哲学が、30年以上の信頼を支えてきたことが伝わってきました。