近年、サイバー攻撃は大企業だけの問題ではなくなっています。警察庁や情報セキュリティ関連機関も、中小企業を狙ったランサムウェアや不正アクセスの増加について警鐘を鳴らしています。
建設業では、図面データや顧客情報、見積書、施工管理データなど多くの重要情報を扱います。さらに、現場と事務所をつなぐクラウドサービスやスマートフォン利用が増えたことで、攻撃対象となる入口も増加しています。
「うちは小さな会社だから狙われない」と考えている経営者も少なくありません。しかし実際には、防御体制が十分でない中小企業こそ狙われやすいという現実があります。
なぜ建設業が狙われるのか
建設業は元請企業、協力会社、設計事務所、資材業者など多くの関係者とデータをやり取りします。
例えばメールで送付された図面ファイルや見積書、請求書などに不正プログラムが仕込まれていた場合、気付かないまま社内ネットワークへ侵入される可能性があります。
また、建設業界では人手不足への対応としてDX化が進んでいます。クラウド型施工管理システムやオンラインストレージの利用拡大は業務効率化につながる一方で、適切な管理が行なわれなければ情報漏えいリスクも高まります。
現場優先で情報セキュリティ対策が後回しになりやすい点も、建設業特有の課題といえるでしょう。

サイバー攻撃による被害は想像以上に大きい
サイバー攻撃の代表例として知られるのがランサムウェアです。
これは企業のデータを暗号化し、「復旧したければ身代金を支払え」と要求する手口です。
もし施工管理データや図面データにアクセスできなくなれば、工事の進行そのものに支障をきたします。工期遅延による損害や取引先からの信用低下につながる恐れもあります。
さらに、顧客情報や従業員情報が漏えいした場合には、被害者への対応や調査費用、再発防止策の実施など多額のコストが発生します。
サイバー攻撃は単なるITトラブルではなく、経営リスクそのものとして捉える必要があります。
中小建設会社でも今すぐできる対策
高度なシステムを導入しなければ対策できないわけではありません。
まず重要なのは、パスワード管理の徹底です。同じパスワードを複数サービスで使い回さないこと、定期的に見直すことが基本となります。
次に、多要素認証の導入です。IDとパスワードだけでなく、スマートフォン認証などを組み合わせることで不正ログインを防ぎやすくなります。
また、使用しているパソコンやスマートフォンのOS、ソフトウェアを常に最新状態に保つことも重要です。更新を後回しにした結果、既知の脆弱性を悪用されるケースは少なくありません。
さらに、定期的なバックアップも欠かせません。万が一ランサムウェア被害を受けても、バックアップがあれば復旧できる可能性が高まります。
従業員教育が最大の防御になる
サイバー攻撃の多くは、人のミスをきっかけに発生します。
不審なメールを開いてしまったり、偽サイトにパスワードを入力してしまったりする事例は珍しくありません。そのため、経営者だけでなく現場監督や事務担当者を含めた全社員への教育が重要です。
「知らない送信者の添付ファイルは開かない」「不審なリンクはクリックしない」「異変を感じたらすぐ報告する」といった基本ルールを共有するだけでもリスクは大きく下げられます。
情報セキュリティ対策は専門部署だけの仕事ではなく、会社全体で取り組むべき安全管理の一環です。安全帯やヘルメットが現場の事故を防ぐように、情報セキュリティも企業を守るための重要な防護策と考える必要があります。

※画像はイメージです
今後は取引先から対策を求められる時代へ
近年は大手ゼネコンや公共工事関連企業を中心に、取引先へ情報セキュリティ対策を求める動きが広がっています。サイバー攻撃では、セキュリティ対策の弱い企業を経由して取引先へ侵入するケースもあるためです。
今後は品質管理や安全管理と同じように、情報管理体制も企業評価の対象になる可能性があります。
受注機会を維持するためにも、情報セキュリティへの取り組みは避けて通れない経営課題となっています。
まとめ
建設業におけるサイバー攻撃のリスクは年々高まっています。中小企業だから狙われないという時代ではなく、むしろ対策の甘さを狙われる可能性があります。
パスワード管理、多要素認証、バックアップ、従業員教育といった基本的な対策から始めることで、多くのリスクを低減できます。現場の安全管理と同様に、情報セキュリティも企業経営を守るための重要な取り組みとして見直してみてはいかがでしょうか。
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