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建設会社の朝礼や会議で、「ちょっとだけ話します」と始まった社長の話が、気づけば予定時間を大きく超えている。しかも、社長本人は本当に「すぐ終わるつもり」だったりする。
この現象は、単なる話し好きでは片づけにくい。経営者が伝えたい情報と、現場が必要としている情報の量に差があるからだ。
たとえば、「今度の現場について一つだけ」と始めた話が、工事の背景、以前の失敗、取引先との付き合い、昔の現場の思い出、最後には「だから安全第一で」という話まで広がる。聞く側からすると「一つだけ、どこへ行った?」となるが、社長の頭の中では全部が一つにつながっている。
この小さなズレを放置すると、会議が長くなるだけではない。重要な指示が埋もれ、現場で「結局、何をすればいいの?」が起こりやすくなる。
社長の話が長くなる理由の一つは、伝える情報を削る基準が違うことだ。経営者にとっては、結論だけでなく「なぜそうするのか」も大切になる。一方、現場側が最初に知りたいのは、今日の仕事に関係する変更点や、自分が取るべき行動だ。
つまり、同じ話でも、聞き手によって必要な順番が違う。
さらに、中小の建設会社では社長自身が営業、見積、顧客対応、現場確認まで幅広く関わることも多い。そのため、頭の中にある情報が整理されないまま話し始めると、話題が次の話題を呼びやすい。
「そういえば、あの件も」と思い出した瞬間、話は一段伸びる。本人にとっては大事な補足でも、聞く側には新しい議題に聞こえることがある。
問題は、話が長いことそのものではない。話を聞いた後に、誰が何をするのか分からないことのほうが、現場では大きなロスになる。
たとえば「来週から気をつけよう」という話だけでは、何を、誰が、いつまでに確認するのかが曖昧だ。結果として、聞いた人は「たぶん自分の担当だろう」と判断し、別の人は「誰かがやるだろう」と考える。
これは属人化(属人化とは:特定の人しか仕事の進め方や判断を把握していない状態)にもつながる。
社長の経験や判断力は会社の強みだが、それが会話の中だけに存在すると、社員が同じ判断を再現するのは難しい。だからこそ、長さを責めるより、最後に行動へ落とす仕組みを作るほうが効果的だ。
社長が何かを伝えるときは、「結論・理由・お願い」の3点に絞る方法が分かりやすい。
まず「何を変えるのか」を一言で伝える。次に「なぜ変えるのか」を短く説明する。そして最後に「誰に何をしてほしいのか」を明確にする。
たとえば、「来週から資材の置き場を変えます。搬入時の動線を確保するためです。今日中に各担当で置き場を確認してください」という形だ。
これなら背景を詳しく話したい場合でも、まず重要事項を伝えられる。
さらに、話の途中で別の案件を思い出したら、その場で話を広げず「それは別件として後で話す」とメモしておく。これだけでも、本題が脱線しにくくなる。
話す前に「この話を聞いた人に、最後に何をしてほしいか」を決めておくのも有効だ。
たとえば、「今日は注意喚起だけ」「○日までに確認してほしい」「判断を一つしてほしい」など、目的を一つにする。目的が決まれば、話す必要のない情報を自然に削りやすくなる。
そして、話し終わったら「今日のお願いはこれです」と一言で締める。
これは社長の話を短くするためだけの工夫ではない。会社の判断を現場の行動に変えるための整理でもある。
もちろん、雑談や昔話まで全部なくす必要はない。建設会社では、そうした会話から信頼関係が生まれることもある。大切なのは、「今すぐ伝える話」と「時間のあるときに話す話」を分けることだ。
社長の「すぐ終わる話」が長くなるのは、話したいことが多く、会社のことを真剣に考えているからこそ起こる面もある。だから「話が長い」と笑って終わらせるのではなく、結論・理由・お願いの3点に整理してみたい。
長い話を無理に短くする必要はない。まず重要なことを、相手が動ける形で伝える。それだけで、社長の頭の中にある経験や判断が、会社全体の力に変わっていく。
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