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長野県出身の塚原代表は、20歳の頃からサッシ屋として建設の世界に入った。しかし1998年の長野オリンピック後は需要が激減し、ダンピング競争が激化。測量会社の営業職に転じるも状況は変わらない。「オリンピックが終わったら、もう長野県はダメになっちゃって。これはもうダメだなと思って。」そこで思い切って横浜への移住を決断。水道工事の世界に足を踏み入れたのは、この移住がきっかけだった。
横浜で最初に就職したのが、大手水道修理会社だ。「手に職を持てる」という言葉に引き寄せられ、水道の世界に足を踏み入れる。しかしそこで直面したのは、自分のスタンスとは合わないビジネスモデルへの違和感だった。「真っ当じゃない仕事をやってると、プライドが痛む。やってらんないな、と思って。」その後、ネット販売の設備取り付けを仲間三人で手がける事業に転身するも、本体企業の内製化で仕事が途切れる。
38歳の時に株式会社塚原設備として独立し、水道工事をメインに積み重ねてきたが、コロナ禍で一時休業を余儀なくされる。その後リフォーム会社で経験を積み直し、2023年に塚原設備として再出発した。
塚原設備の最大の特長は、電気・ガス・水道・クロスから内装大工まで、幅広い工事に一人で対応できることだ。「蛇口の修理からリフォームまでやっているような感じですかね。」と塚原代表は語る。小規模な業者では「専門外は他社へ」となりがちなところを、長年積み重ねてきた資格と経験で幅広くカバーしている。
これが中小建設業にとって大きな意味を持つ。たとえばトイレのリフォームひとつとっても、設備・内装・大工それぞれの業者を個別に手配する必要があることを、お客様はなかなか知らない。塚原設備はそれをひとりで完結させることができる。「塚原さんに頼めば、朝から来て三時には終わるとわかっている」と、連携する不動産業者からの信頼も厚い。
さらに、仕事の速さと配慮も際立っている。できる限り当日中に作業を完了させることを心がけているため、昼食を取らずに現場を進めることもある。「お客さんが仕事を休んでる日に来てるんだから、なるべく一日で終わらせてあげないと。」という思いが、そのまま行動に現れている。また、近隣への配慮として作業開始は9時から。こうした細やかな姿勢が、リピーターと口コミ紹介につながっている。
水回り・リフォーム業界では、マッチングサービスや一括見積もりサイトが増え、価格競争が激化している。塚原代表自身も一時期課金して試したものの、手数料の重さに限界を感じ早々に距離を置いた。試行の結果、人のご縁やこれまでのお付き合いの方が堅実だという結論に至ったという。
業界全体の課題として、若い職人の減少も実感している。「なかなか今、若い人が職人にならないかもしれないけど。」と塚原代表は言う。一方で悪質業者による高額請求問題は後を絶たず、「30万円取られてトイレが直っていなかった、塚原さんに頼めばよかった」という声をお客様から聞くこともあるという。こうした状況のなかで取ってきた戦略は、ネット広告に頼らず地道な人間関係を積み上げることだった。
地元の法人会への参加、不動産会社への直接営業、口コミ紹介——これらを組み合わせ、広告費をかけずに安定した仕事量を維持している。「人が多いところでないと、この仕事は成り立たない」と感じて長野から横浜を選んだ塚原代表にとって、エリアの母数は最初から意識してきた経営の前提。「この辺だけで十分、母数は広い。」——このエリアで信頼を積み上げてきたことが、今の経営の柱だ。
今後の展望について尋ねると、塚原代表はこう話す。「地元密着で、困ったときに呼んでいただけるような感じで。塚原さんに頼めば何でも対応してくれるね、ぐらいな感覚でやっていければな、と思って。」エリアを絞って深く信頼される存在であり続ける——その姿勢は創業当初から一貫している。
三年間ほとんど休みなく働く塚原代表だが、こう言い切る。「仕事と思っちゃうと辛いかもしれない。でもマインドとしては毎日DIYをしている感覚なので、休みがなくても特には(気にならない)。好きなことをやりに行っているので。もちろん仕事は手を抜きませんよ。」
その根底には「ご縁」への深い感謝がある。法人会での紹介、コロナ禍でも裏でつないでくれた取引先、近所のおばあちゃんが自然と営業部長になってくれるような人の輪——いずれも広告でも価格でもなく、人と人のつながりから生まれたものだ。「このエリアだけで食べていけるのはありがたいことだなと、日々感謝しながらやってますけど。」その言葉に、気負いのない誠実さがにじむ。
これから業界に入る人へのメッセージとして強調したのは「幅広く対応できることの大切さ」だ。「何でもできれば、毎日違う現場で飽きない。少し知識を広げれば、お客さんのファンも増えていく。」複数のスキルを持つことが生き残りの鍵——その実感が、塚原代表の言葉には込められていた。
取材を通じて感じたのは、塚原代表の「正直な仕事への信念」だ。自分のスタンスに合わない働き方への違和感から独立を決意し、口コミで信頼を積み上げてきた30年。広告に頼らず人のつながりで仕事を得る姿は、地域密着経営の本質を体現している。
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