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吉川氏のキャリアは、解体とはまったく縁のない場所から始まっている。大学卒業後、新卒で入社したのは車の貿易会社。海外営業として忙しい日々を送っていたが、やがてその仕事にやりがいを見出せなくなった。
「販売しても手応えがつかめない環境で、やりがいを感じなくなってしまって。2年半で辞めてしまったんです」
退職後、次の仕事を探しながらアルバイトを考えていた吉川氏は、ふとした気持ちで「体を動かす仕事もしてみたい」と思い立つ。ネットで調べたところ、たまたま出てきたのが解体屋だった。
「別にどこでもよかったんですよ、正直。どうせここに骨を埋めることもないやろうなと思いながら応募したんです」
その率直な言葉が、逆に吉川氏の人柄をよく表している。最初の解体会社で作業員として約1年、現場を経験した。しかしその会社の社長が突然姿を消し、給料の遅延も重なるという波乱のなかで、声をかけてくれたのが現在の株式会社ドリームだった。
「うちの代表が、行くところがないんやったら来たい奴だけ来い、と言ってくれて。そこからドリームに来させてもらいました」
26、27歳の頃のことだ。最初は腰掛けのつもりで飛び込んだ解体の世界。だが吉川氏はここで、自分でも気づかなかった「やりがい」を見つけることになる。
ドリームに入った当初の吉川氏は、重機に乗る現場職人だった。約2年間、ひたすら現場と向き合った。そのなかで少しずつ案件の受注にも関わるようになり、ある変化が起きる。
「現場に出ながら案件を取ってくると、職人の給料にプラスでもらえるんです。それが楽しくてしょうがなかった。仕事を取ってくることにこんなにやりがいがあるとは、最初は思っていなかったですね」
海外営業として社会人をスタートしていた吉川氏の「営業の血」が、解体現場という舞台で再び目を覚ましたのだ。
やがて川村代表から、解体部門の引き継ぎを任せられる人材を育てたいという話が出る。候補に挙がっていた職人肌の先輩たちは「自分はずっと現場でいたい」と固辞した。
「じゃあ誰がやるってなったときに、営業もせなあかんし、じゃあ僕がやりましょか、という話になったんです」
去年の6月から外回りと現場管理を本格的に担い始め、今でちょうど1年ほどになる。現在の立場は「代表代行」。川村代表が不動産部門に軸足を移すなかで、工事に関することはすべて吉川氏が仕切っている。
株式会社ドリームの主な事業は解体工事を核に、外構工事・舗装工事まで一貫して手がけるスタイルだ。自社職人15名が4チームに分かれて稼働し、常時3〜4社の協力業者とともに近畿一円(大阪・奈良・京都・兵庫)で現場を展開している。元請けの多くは不動産会社や建売業者で、解体から整地・駐車場舗装まで、現場の後始末をワンストップで完結できる体制が強みだ。
「解体が終わった後に、外構のブロックをつけたいとか、駐車場にしたいという要望も多くて。それも自社で施工できるので、お客さんにとっては1社で完結するのが安心感につながっているのかなと思います」
代表代行として1年を走り抜けた吉川氏が、今もっとも頭を悩ませているのが人材の問題だ。
「年明けからIndeedなど求人媒体に出させてもらったんですが、やっぱり応募してくるのが60代・70代の方が多くて。その媒体で若い人に訴求するのは難しいなと感じています」
建設業界全体で進む高齢化の波は、解体業も例外ではない。ただ吉川氏はその状況を嘆くだけでなく、すでに手を打ち始めている。インスタグラムとTikTokの自社アカウントを立ち上げ、現場の様子や仕事の魅力を発信し始めた。
「若い子はSNSを見るんで、そこを強化していかないとと思っています。インスタのフォロワーも少しずつ増えてきているし、まだ試行錯誤の段階ですが、やっていかないと始まらない」
業界の課題は求人だけではない。廃棄物の適正処理や近隣への配慮など、解体工事は住民の生活に直接影響する仕事でもある。吉川氏は日々の現場のなかで、「仕事を取るだけでなく、ちゃんと終わらせる」という姿勢を大切にしている。協力業者が仕事を切らさないよう仕事を回すことも、吉川氏が意識している経営判断のひとつだ。
「協力してくれている業者さんに、仕事を切らずにいてあげたい。ついてきていただいているという感覚なので、そこは大事にしています」
「まさか自分が代表代行になるとは、正直思っていなかった」と吉川氏は笑う。だが今、営業・現場管理・人材確保・協力業者との連携と、会社のあらゆる機能を一手に担いながら、確かな手応えを積み重ねている。
「外回りを始めてから1年、仕事が少しずつ広がっている実感はあります。ホームページ経由でも問い合わせが来るようになってきたし、やっぱり発信し続けることが大事だなと感じています」
これから目指す姿について問うと、吉川氏はこう語った。
「会社としてはもっと認知を広げていきたい。地域の方に『解体といえばドリーム』と思ってもらえるような会社にしていきたいんです。SNSも求人だけじゃなくて、会社のことをもっと知ってもらう場として使っていきたい」
解体業に興味を持つ若い人へのメッセージを聞くと、吉川氏はこう答えてくれた。
「体を動かすことが好きで、物事を完結させることに達成感を感じられる人には向いている仕事だと思います。僕自身、最初はどこでもよかったと思って入ってきたけど、今は仕事を取ってきて、現場を完成させる達成感をめちゃくちゃ感じていますから」
「どうせ骨を埋めへんやろ」と思って入った業界で、今や次の代表を担う立場になった吉川氏。そのまっすぐな言葉のなかに、中小解体業の現在地と、この仕事の底力がある。
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「どこでもよかった」という言葉が、取材を通じてまったく違う意味に変わっていった。吉川さんが今この会社にいる理由は、偶然ではなく、現場と人への誠実さが積み重なった必然だと感じた。