🏗️ なぜ左官の道を選んだのか?原点にある想い
小嶋氏が左官業に入ったのは、決して「やりたくて」という動機からではなかった。実家は代々続く左官屋で、父親も左官職人。しかし幼い頃から父の仕事の中身はよくわからず、「大工さんだと思ってた」と笑う。
高校生になってアルバイトで材料運びを手伝ったとき、ようやく「そういうことをやってるんだ」と気づいたという。その後、その後、明確な目標が定まらないまま進学したものの、次第に自分の道を模索する時間が増え、飲食店のアルバイトに打ち込む日々が続いた。
転機が訪れたのは、父から「もっとちゃんとしろ」と言われた21歳のとき。「それでじゃあ仕事しますって言って、親父に頭下げてやらせてもらった」と振り返る。そこから左官業のキャリアが始まり、気づけば15年。途中で父の会社を離れ独立したのは、「親子なんで意見が合わなかった」という実直な理由からだ。実家の左官屋は父が今も継続しており、父も小嶋氏の独立を公認している。「俺が左官を続けてるんだったら、まあいいかなっていう感じ」という言葉に、職人気質な父子の関係が滲む。
🔧 住みながら施工できる提案力──現場が語る強みとは
小嶋左官の最大の強みは、「できない」と言わない姿勢と、柔軟な提案力にある。エンドユーザーから「クロスから珪藻土に変えたい」と相談が入ったとき、他の業者が「荷物を全部外に出さないとできない」と断るなか、小嶋氏はリビングの荷物を半分ずつ寄せながら住みながら施工できる方法を提案し、受注に至ったエピソードがある。
「お客さんはそういう提案をされたのが初めてだったから、すごい良かったって言って」と語る小嶋氏。金額は多少かかったものの、お客様には大変喜んでいただけたという。
取引先は工務店から個人エンドユーザーまで幅広く、コンスタントに付き合いのある会社だけで十数社に上る。その多くがホームページ経由での新規開拓だ。「こういうやり方はどうですか?と複数の選択肢を示して、お客さんとすり合わせていく。それが提案力かな」と小嶋氏は言う。
また、急な依頼でもほぼ断らない。「断るということはしない。どうやってやろうかを考える」というのがその姿勢で、少し時間をもらって段取りを整え、施工しやすい条件を提案するのが流儀だ。急対応への信頼がリピートにつながっていると自覚している。
⚠️ 一人親方の課題と、珪藻土という武器
独立4年目を迎える今、小嶋氏が実感しているのは、仕事量の変化だ。「今が一番落ちてるかも、と体感でわかるぐらい少ない」と率直に話す。中小建設業にとって、競合の増加や景気の影響を一人で受けとめなければならないのが一人親方の現実だ。
そんな中、小嶋氏が手がける珪藻土施工は、差別化の武器になりうる。珪藻土は「呼吸する素材」で、湿気を吸収し、部屋干し衣類の乾燥が早くなり、窓の結露も減少する。タバコを吸う家でも壁が汚れにくく、匂いもつきにくいという特性がある。「父の知人の居酒屋に施工した壁が、今でもきれいなまま。全然タバコ臭くない」というエピソードは、その効果を端的に示している。
人材採用の面でも、ホームページに求人ページを設けていないにもかかわらず、「見習い募集していませんか」という問い合わせが来たことがある。意欲的な若者と一日現場を共にするところまで進んだものの、諸事情により縁がつながらなかった。「なかなかああいう良い人材には出会えない」と、惜しむ気持ちが言葉の端々に滲んだ。中小建設業にとって人材確保が容易でないことは、小嶋氏も日々実感しているところだ。
🌱 湘南に左官文化を広めたい──地域への想いと今後の展望
藤沢市・湘南エリアで活動する小嶋氏には、地域に対する思いがある。「湘南って外観的にも、左官がちょっと似合うというか。ジョリパットで模様をつけてあげたりした方が、すごいおしゃれに見える。藤沢とか湘南エリアはもうちょっと左官が増えてもいいのかな」と語る。
現在は一人でこなせる規模を大切にしながらも、仕事の質と信頼を積み上げてきた。「365日24時間とはいかないが、基本的にいつでも対応できる。電話もらえればすぐ現場も見に行く」という言葉は、地域密着型職人としての在り方を体現している。
今後の展望については、インターネットを通じた新規開拓と、珪藻土施工の知識を広く発信することで珪藻土の魅力を知らなかったお客様に「こんないい素材があったんですね」と喜んでもらえる出会いを積み重ねていきたいと、小嶋氏は穏やかに、しかし力強く語った。湘南という土地に、左官文化をひとつひとつ根付かせていく——その静かな決意が、言葉の奥に感じられた。
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取材を通じて感じたのは、小嶋氏の「断らない」という覚悟と、それを支える提案力の確かさです。左官という職種の奥深さを、飾らない言葉で語る姿に、職人としての誇りを見た思いがしました。