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牛越代表が内装の世界に飛び込んだのは、18歳の時だった。高校を卒業した後、「デスクワークは自分には向かない」という確信のもと、身体を動かせる仕事を近所で探したところ、たまたまたどり着いたのが内装業だったという。
「仕事の内容を理解して入ったわけではないんですけれども、体を動かせる仕事を近所で探したら、たまたま内装の仕事だったっていう感じです」
最初の会社に1年半勤めた後、個人事業主のもとで経験を積み、21〜22歳という若さで独立。当初は個人事業主として動いていたが、10年近い実績を重ねる中で、取引先のゼネコン1次下請けから「法人の下請けを使いたい」と声がかかり、2016年に法人化した。
「個人でもよかったのにって感じで、仕方なく法人にしたっていう感じなんですよね」と牛越代表は笑う。しかし結果的に、コロナ禍での助成金受給など、法人化したことで救われた場面もあったという。
会社名「トリオレ」には創業の原点が込められている。個人事業主時代に3人の職人仲間で組んで働いており、「3人それぞれが自分自身こそが代表であるという気持ちを持ってやろう」という意志を込め、「トリオ」と「俺」をもじって「トリオレ」と名付けた。その後、創設メンバーの2人は別の道へ進んだが、その精神は今も引き継がれている。
内装工事の専門業者の中には、軽天(LGS)かボード貼りのどちらか一方しか手がけない会社も少なくない。株式会社トリオレの強みは、この2工程をどちらもしっかりこなせる点にある。
「軽天(LGS)しかやらない、ボードしかやらないという人もいる中で、うちはどちらもしっかりこなせるっていうところが一番のメリットかなと思ってます。自分で下地を組んで、そのままボード貼りに移れるっていう」
中小建設業にとって、異なる専門業者を複数手配するコストと段取りの煩雑さは悩みの種だ。トリオレのような一体対応ができる業者は、現場の効率化に直結する存在といえる。
現場実績も豊富だ。印象に残る大型案件として牛越代表が挙げたのが、八重洲エリアの高級ホテルの内装工事だ。1カ月ほとんど休みもなく、夜も遅くまで働き続けた時期もあった大型案件を1年半にわたって手がけた。「人生で一番働いた現場でしたが、その分やりがいもありました」と牛越代表は振り返る。
こうした実績の積み重ねが、長年取引を続けるゼネコン系1次下請けとの10年以上にわたる信頼関係につながっている。現在は、その下請け協力会社の会でも会長を務めるほどの存在感を持ち、長年の関係性のおかげで景気の波に左右されにくい安定した受注基盤を築いている。
中小建設業が直面する課題を、牛越代表は率直な言葉で語った。最も深刻だと感じているのは、ゼネコンと下請け作業員の間に広がる格差である。
「賃金も今10年横ばいですからね。ゼネコンの職員はずっと右肩上がりに給料が上がる。かたや末端の作業員は10年も横ばいで、さらに働き方改革の波で土曜日が休みというのがかなり増えてきて。1日の単価が変わらなければ、単純に6日働けるところが5日しか働けない」
加えて、資材不足の問題も現場を直撃している。中東情勢の影響により、建設資材の確保が困難になりつつあり、「今持ってるものを使い切っちゃったら、この先どうするんだろうっていうのはある。国が助成金みたいなものを出してくれないともたないんじゃないか」と、業界全体への懸念を口にする。
採用の難しさも変わらない課題だ。現在7名体制のうち外国人スタッフが3名を占めるが、日本人の1日単価に見合った条件面での折り合いが難しく、「問い合わせは来るが、単価を言っただけで"よそ探します"という人もいた」という。一方で現在在籍している外国人スタッフには「特定技能二号」として長く働いているメンバーもおり、「うちの待遇が今より悪くならなければずっと働きたいと言ってくれている」と信頼関係を築いている。
今後のビジョンについて牛越代表は、「もう少しメンバーを増やしたい。10〜15名規模まで持っていければ」と語る。同時に、長年苦楽をともにしてきた古参メンバーへの思いも率直に打ち明けた。
「残ってくれたときはそういう言葉もかけましたけど、普段はあまり軽々しくは言わないですね。でも彼らが今もいるのは、抜けていった人についていかなかったからで、そういう面ではこちらからの方がありがとうっていう気持ちがある」
後継者問題については現実的だ。主要メンバーは皆40〜50代で年齢が近く、「自分の代で会社を畳むことになるかもしれない」とも述べる。それでも「その時に、少しでも会社の資金が残っていれば退職金のような形で分散して渡したい」という言葉には、職人仲間への深い敬意が滲む。
次世代へのメッセージとして牛越代表が強調したのは、「職人の技術」の価値だった。
「TikTokなどで"10年先になくなる職業"に建設業の作業員が入っていることもありますが、人が作る技術はロボットには真似できないと思っています。AIがものづくりをできるようになるのはまだまだ先の話で、匠の技術を学んで、受け継いでいってほしい」
中小建設業にとって、技術継承は業界存続そのものの問題でもある。現場で汗をかいてきた職人代表の言葉には、静かながらも確かな重みがある。
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取材を通じて感じたのは、牛越代表の「仲間への誠実さ」でした。野心や派手なビジョンを語るより、長年ともに現場を歩んできた職人仲間への静かな感謝を大切にする姿が、トリオレという会社の本質を物語っていました。「残ってくれたことへの感謝は、普段はなかなか言えないけれど」と語る牛越代表の言葉は、飾り気がないからこそ重く響きます。技術継承や業界課題についても率直に語ってくれた今回の取材は、現場の最前線に立つ職人経営者のリアルな声として、多くの方に届いてほしいと感じています。