🏗️ なぜ鉄筋の世界へ?家業との向き合い方とは
田澤鋭一代表が鉄筋工事の世界に入ったのは、20歳のときだった。もともと祖父の代から続く家業であり、父もその仕事を引き継いできた。
「祖父の代からこの仕事をしていて、うちの親もその流れで入って。そのまま私が引き継いだという感じですね」
ただ、最初から家業を継ぐつもりだったわけではない。高校卒業後、田澤氏はテレビの撮影現場でAD(アシスタントディレクター)として働いた時期がある。当時は映像制作の世界に興味があり、飛び込んでみたという。しかし現実は厳しかった。
「週に四日は会社に泊まり込みで、椅子を並べて寝るような生活でした。半年ほど続けましたが、これはさすがに無理だなと」
過酷な労働環境を経験したあと、父の仕事を手伝うようになると、その働き方のギャップに驚いた。「朝8時に始まって、5時にはきっかり終わる。帰ったら自由な時間がある。それがもう信じられないくらい楽で」と振り返る。
仕事そのものの面白さも、次第に田澤氏を引き込んでいった。「覚えていくと結構面白くなってきて、気づいたらもうやめられなくなっていましたね」
🔧 うちの強みとは何か──「綺麗に組む」へのこだわり
田澤工業の特徴を一言で表すなら、「真面目」だと田澤氏は言う。現在は関東近県を中心に倉庫・学校・大手ゼネコン案件まで幅広く手がけており、複数の現場を同時に動かすこともある。
「組み立てる作業に関しては、こだわってやっているつもりです。これは業界ならではの話かもしれないんですけど、同じものを作るにしても、綺麗に組む会社と、早いけど仕上がりが雑な会社とがあるんですよ」
鉄筋は建物の骨格を担う仕事だけに、見えないところにも手を抜かない。施主や設計担当者が現場を訪れた際に「非常に綺麗にできています」と声をかけてもらえるよう、日々丁寧な施工を積み重ねている。
「利益に直結するかどうかは別として、綺麗に組んで評判のいい会社でありたいと思ってやっています」
また、主要な元請け先とは10年以上の付き合いが続いており、同社への案件は田澤氏が担当するという形で信頼関係が確立されている。長年の積み重ねが、仕事の安定的な受注につながっている。
チームの構成は、田澤代表を含めて11名。日本人スタッフとインドネシア・フィリピン出身の技能実習生・特定技能人材がともに現場を支えている。外国人スタッフの仕事ぶりは同業他社からも高く評価されており、「田澤工業は外国人スタッフの評判がいい」と言われることも多いという。
⚠️ 仕事量の減少と人材確保──中小建設業が直面する課題
中小の鉄筋工事業者にとって、近年の環境は決して穏やかではない。元請けのゼネコンから振られる仕事量が減少しており、田澤氏もその影響を肌で感じている。
「今すごく激減しています。びっくりするぐらい」と率直に話す。建設投資の変動に左右されやすい下請けの立場では、受注量の波をコントロールしにくい側面がある。
一方、人材確保の面でも課題は続く。求人を出しても定着につながりにくいケースがあり、試行錯誤が続いてきた。「真面目に来てくれて、コミュニケーションがとれる人なら、技術は一から教えますよ」と田澤氏は言う。
経験者も歓迎だが、未経験者でも育てる姿勢は変わらない。求める人物像について聞くと、「気遣いのある人。仕事のわからない後輩を見て、声をかけてあげられるような人が大事」と語った。
現場には多様なバックグラウンドを持つ職人が集まる。田澤氏はその雰囲気を「学校みたい」と表現する。「他の業者さんとも自然に話すようになって、同じゼネコンの現場でまた一緒になると、中学の友達と久々に会ったみたいな感覚になる。怖くなくて、気軽に来てほしい」
🌱 これからの田澤工業──次の担い手と現場の未来
22年間、鉄筋工事一筋に歩んできた田澤氏に、今後の展望を尋ねた。
「長い目で見て、3〜4名は新しい担い手が欲しいと思っています。現場が増えても回せるように、人を育てながら会社を継続していきたい」
仕事そのものの醍醐味については、若い頃から変わらず「組み切った時の達成感」だと言う。現場によって鉄筋の長さも太さも異なり、決まった答えがないなかで考えながら組んでいく。「綺麗に、しかも早くできた時は、なんとも言えない達成感がある」
田澤工業の仕事は、建物の竣工後には見えなくなる。しかしその骨格を支えているのは、現場に立ち続ける職人たちの積み重ねにほかならない。「真面目に組む、それだけ」という言葉が、田澤氏の仕事哲学をそのまま表している。
中小建設業における継承と人材育成という課題は、業界全体が向き合うテーマでもある。地道に、誠実に現場を続けてきた田澤工業のあり方は、同規模の事業者にとっても一つの道標となるのではないだろうか。
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取材を通じて印象的だったのは、田澤社長の「綺麗に組む」という言葉の重さです。派手さはないが、長年の信頼と丁寧な仕事が会社を支えている。その姿勢こそが、田澤工業の真の強みだと感じました。