🏗️ なぜこの仕事を選んだのか?ニッチな業界に飛び込んだ原点
株式会社スイカンが手がけるのは、地中に埋設された水道管の漏水を調査する仕事です。一般には「水漏れがあれば水道屋を呼ぶ」というイメージが強いですが、大型ビルや工場、公共施設など規模が大きくなると話は別です。「設備屋さんに頼んでも見つからなくて、オーナーさんが連絡してくるというケースが多いんですよ」と上田代表は語ります。
そうした状況で頼りにされるのが、スイカンのような漏水調査の専門業者です。事業内容は大きく分けて「漏水調査」と「管洗浄(感染症対策)」の二本柱。管の中に停滞した水を人為的に流動させ、汚れを除去することで、腐食や漏水を未然に防ぎます。上田代表は、この仕事の意義をこう表現します。「日本のインフラを守るというのが、私たちの仕事ですね」
建設業のなかでも特に専門性が高く、認知度が低い領域ですが、だからこそ「本当に隙間的な業界ではある」と自認しながらも、上田代表はその使命感を大切にしています。市町村との取引が主軸となっており、競争入札を経て仕事を受注する仕組みは、中小建設業にとってもなじみ深い構造と言えるでしょう。
🔧 うちにしかできないこと──「耳」で水漏れを見つけるプロの技術とは
スイカンの最大の強みは、漏水を「音」で察知する高度な技術にあります。専用のヘッドホンや音調棒(鉄の棒で振動を耳に伝える器具)を使い、地中の水道管から聞こえる微細な音を聴き分けて、漏水箇所をピンポイントで特定するのです。「人間の耳だけで漏水を見つけていく、ちょっと特殊な仕事」と上田代表は話します。
難しいのは、風の音や通過する車の振動など、現場にはさまざまな「雑音」が混在している点です。熟練した調査員はそれらを聴き分け、漏水特有の音だけを判別します。「人によって聞こえ方が違うし、感度がいい人と普通の人がいる。それに経験が加わって、音の区別をつけていくんですよ」まさに職人の世界です。
また、会社としての強みは技術だけではありません。土日祝日休み、年間休日120日以上、有給休暇の取得も柔軟に対応しており、建設業では珍しい水準の働きやすさを実現しています。「年末年始やお盆に有給をつけて、二週間ほど取る社員もいますよ」という言葉は、業界の常識を超えた職場環境を示しています。中小建設業にとって、人材確保のためにも働き方の改善は喫緊の課題ですが、スイカンはすでにその実践に踏み込んでいます。
⚠️ 人手不足と業界の賃金水準──課題に正面から向き合う姿勢
建設業全体に共通する人手不足の問題は、スイカンにとっても切実です。現在は地方自治体からの案件を中心に受注していますが、「人がいれば、もっと仕事を取りに行ける」と上田代表は率直に述べます。人員が足りないがゆえに、受注量を意図的に抑えなければならない局面もあるといいます。
さらに業界の課題として、賃金水準の低さも挙げられます。「この業界の賃金はまだまだ安い」という現実を認めながら、上田代表は改善に向けて動いています。ハローワークを通じた求人活動や、埼玉県内の高校への訪問なども行ってきましたが、応募はなかなか集まらないのが現状です。「来るもの拒まずというか、経験がなくても、興味を持ってもらえれば、長く続けられる仕事だと思っています」という言葉には、業界の入口を広げたいという切実な思いが込められています。
特殊な技術ゆえ、この仕事の経験者はほとんどいません。だからこそ未経験者を採用し、現場で育てていくというスタンスを取っています。年齢や性別を問わず、「夜勤や夏の屋外作業に対応できる方なら、ぜひ来てほしい」というのが会社としての姿勢です。中小建設業にとって人材の入口を広く設けることは、業界全体の持続可能性にも関わる重要なテーマです。
🌱 10年後のビジョン──従業員が誇りを持って働ける会社へ
上田代表が描く会社の将来像は、シンプルながら力強いものです。「従業員の子たちが、しっかり賃金をもらえるような会社にしていきたい」という言葉に、そのビジョンが凝縮されています。そのためには、漏水調査だけに依存せず、管洗浄や民間施設向けサービスなど、複数の収益柱を育てていく必要があると考えています。
民間のビルオーナーの中には、漏水に気づかないまま相当額の水道料金を無駄に消費しているケースがあるといいます。そうした潜在的なニーズを掘り起こし、定期的な管理契約につなげていくことが、次の成長ステージへの鍵になると見ています。「いろんな面で確立できればいいかな、と思っています」
そして、この業界に飛び込もうとする人たちへのメッセージは、温かくも実直なものでした。「夏は暑い、冬は寒い。それだけは覚悟してください。でも、耳一つで日本の上水道インフラを守っているんだという仕事ができる。こんな仕事もあるんだよと知っていただいて、興味がある方はぜひチャレンジしてほしいですね」世界でも数少ない「水道水が飲める国」である日本を支える誇りは、この言葉の中にしっかりと宿っています。
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取材を通じて感じたのは、上田代表の「音で水道インフラを守る」という仕事への静かな誇りです。ニッチな業界だからこそ、その使命は深く、確かです。従業員を大切にしたいという思いと、業界を変えたいという意志が、インタビュー全体から伝わってきました。