🏗️ なぜ建設業の道へ?35歳の決断と、弟からの一本の電話
関悟司氏のキャリアは、もともと建設とはまったく無縁だった。20代から30代にかけて、地元水戸近辺の店舗で販売員として働いていた。
転機が訪れたのは、35歳のころ。隣店舗のエリア長を務めていた65歳の上司が定年を迎えたとき、関氏はあることに気づいた。「30年間働いて、役職が2〜3しか上がらなかったんです。残り30年、自分にも同じことが降りかかるのかと考えたら、ちょっとどうなんだろうと」。
会社の将来性への不安が積み重なるなか、背中を押してくれたのは弟の存在だった。学卒後ずっと建設業界で働いていた弟が足場工事をメインとする会社を営んでおり、声をかけてくれた。販売員としての経験しかなかった関氏は、そのまま弟の会社の従業員として建設の世界に飛び込んだ。
現場に出るたびに、工場や倉庫の中で働く人たちの姿が目に焼きついた。「休憩のたびに外に出てきて、外の方が涼しいって言ってるんですよ。最初は自分には関係ないと思ってたけど、だんだん気になってきて」。その違和感が、のちの事業の核心につながっていく。
社名「Reruup(リループ)」には、「Re(戻ってくる)+ Loop(循環する)」という意味が込められている。「お客様が戻ってきてくれて、そこから口コミでご縁がつながっていく。そんな仕事をつくっていきたいという想いを込めました」と関氏は語る。
🔧遮熱シートとは何か?「断熱」との違いと、驚きの数字
遮熱シートとは、熱を吸収・蓄積する「断熱材」とは異なり、太陽からの輻射熱を反射させて室内への侵入を防ぐシートだ。屋根や壁の内側に施工することで、外から伝わってくる熱を「跳ね返す」。
その効果は数字に表れている。関氏が昨年12月に施工したシリアルメーカーの倉庫では、施工面と未施工面の室内温度を実測したところ、施工なし面が30℃・施工あり面が19℃と、11℃の差が生じた。「鉄板の屋根が日中に蓄熱して、そのまま室内に放熱していたんですね。貼っているか貼っていないかだけで、これだけ変わるんです」。
この数字は12月の計測だ。真夏の炎天下であれば、その差はさらに広がる。「そのシリアルメーカーさんの場合は、チョコレートがコーティングされたシリアルを保管していて、暑くて溶けてしまうという問題があったんです。製品の品質管理という意味でも、遮熱シートが役に立てる場面は多いと思います」。
遮熱シートが特に選ばれる理由は、ランニングコストがゼロという点にある。エアコンの増設や大型扇風機の導入と違い、一度施工してしまえば電気代は一切かからない。「初期投資は必要ですが、将来的なランニングコストを考えると、決して高くない選択肢だと思っています」と関氏は力を込める。
さらに、Reruupならではの強みがある。工場や倉庫は天井が高く、遮熱シートを施工するには足場が必要になるケースが多い。弟の会社との協業体制により、足場から遮熱施工まで一括で対応できる。「多工程を一社で担える業者というのは、今の建設業界でとても重宝されています。その強みが、この事業のチョイスにもつながっているんです」。
加えて、遮熱シートは建物の内側に施工するため、外壁の遮熱塗装と比べて劣化しにくいという優位性もある。天候や紫外線の影響を受けにくく、長期にわたって効果を維持できる点は、企業にとって大きなメリットだ。さらに、施工後も移設・再利用が可能という点も見逃せない。建物の用途変更や引越しの際にも、そのままシートを活かすことができる。
⚠️「遮熱シートって何ですか?」──認知ゼロからの挑戦と、義務化という追い風
関氏が率直に認める最大の課題は、「遮熱シート」という技術自体がまだほとんど知られていないことだ。「聞いてみると、みなさん素直な反応をしてくれるんですよ。『遮熱シートって何ですか?』って。断熱はみんな知ってるけど、遮熱はまだ全然浸透していない」。
関西・西日本では徐々に普及が進んでいるが、関東・東北ではまだ施工業者自体が「本当に数少ない」状況だという。認知の低さは課題であると同時に、大きなビジネスチャンスでもある。「いち早く情報を手に入れて、まだ知らない方々に教えてあげられる──そこが一番の強みだと思っています」。
また、「熱を遮断する断熱」は広く知られている一方で、「熱を跳ね返す遮熱」というニュアンスは伝わりにくい。「跳ね返すっていう感覚が、なかなかちょっとイメージしてもらいにくいんですよね」と関氏は苦笑するが、これを業界全体の課題として捉えている。
そんな中、追い風となっているのが厚生労働省による職場の熱中症対策の義務化だ。工場・倉庫を持つ企業に対して職場環境の改善が求められるようになり、「扇風機やサーキュレーターを入れてみたり、エアコンを増設したり、いろんな対策を考えているお客さんが増えてきました。そういう方々に、ランニングコストのかからない遮熱シートという選択肢を知ってほしい」と関氏は語る。
施工した現場からは、早くも手応えが聞こえてきた。群馬県高崎市の倉庫で施工後に顔を出したとき、従業員の方から「なんか去年と違う気がする」という言葉をもらったという。まだ夏本番ではないにもかかわらず、体感として変化を感じてもらえたことは、関氏にとって大きな励みとなっている。
🌱「自分の目で体感してほしい」──体感デモ展示の構想と、地域への想い
関氏が今、力を入れているのが「体感できる場の提供」だ。施工業者として「効果がありますよ」と伝えても、「施工する側の言葉はなかなか信用されにくい」という現実がある。だからこそ、言葉ではなく体感で証明したいと考えている。
現在構想しているのは、水戸近辺に家庭用物置を2台並べ、片方には遮熱シートを施工し、もう片方はそのままにしておくという展示だ。訪れた方に実際に入ってもらい、温度差を体で感じてもらう。「自分が言っていることが嘘偽りなく感じてもらえるのか、それを体感してもらえる場所をつくりたいんです」と関氏は言う。
実際、埼玉の製紙工場で研修として施工に参加したとき、すでにその体感の差を目の当たりにしている。施工したのは乾燥炉のダクトに直接シートを貼るという作業で、施工前の室内は50℃近くに達し、ダクトは手で触れられないほどの環境だった。シートを貼ると、「貼ったそばから涼しくなるんですよ。貼ってない場所と貼ったところを行き来すると、空気の壁みたいなものができてるって感じで、体感で全然違うのがわかる」。
今後のビジョンとして、従業員を増やして会社を大きくし、地域雇用・地域貢献にも力を入れていきたいという思いも持っている。弟の会社との連携を深め、遮熱工事だけでなく足場を含む複合案件にも対応できる体制を強化していく方針だ。
「まだまだ知られていない技術だからこそ、ここからの伸びしろにすごくワクワクしているんです。この遮熱シートの良さに気づいていただける方が世の中にはいるはずで、その方々にちゃんと届けていきたい」。
暑さに悩む工場・倉庫オーナーへのメッセージを聞くと、関氏はこう答えた。「まずは一度、話を聞いてください。遮熱シートという選択肢があることを、知っているか知っていないかで、これからの夏の現場環境は大きく変わると思っています」。
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取材を通じて感じたのは、関社長の「まだ誰も知らないからこそ、自分が伝える」という静かな使命感でした。施工なし面30℃・施工あり面19℃という実測データは、遮熱シートの必要性を雄弁に語っています。体感デモ展示という構想が実現すれば、茨城から遮熱の認知が広がっていくかもしれません。