🏗️ なぜ建設業を選んだのか? 16歳から現場に立った原点
梅本代表のキャリアは、中学校を卒業した16歳の春から始まる。最初に飛び込んだのは防水工事の現場だった。「仕事が好きとか嫌いとか、そんなもんじゃなかった」と梅本代表は振り返る。20歳頃まで防水屋として約4年間働いた後、外資系半導体メーカーでエンジニアとしておよそ10年間のサラリーマン生活を経験。そして30歳のときにTUKASA PAINTを立ち上げる。
創業のきっかけは、とりたてて劇的なものではなかった。「僕みたいな学歴もない人間が就職しようとしたら、もう大体ここしかないじゃないですか。じゃあ自分でやるしかない」と話す。折り合いのつく就職先が見つからず、もともと経験のある建設の現場で独立することを決断した。創業1年目は実績ゼロからのスタート。工務店や不動産会社の玄関に飛び込み営業をかけ、案件を積み上げていった。「最初から仕事がないのは当然。玄関まで押しかけていってましたよ」と梅本代表は笑い飛ばす。
🔧 うちにしかできないこと──多能工と「素直な姿勢」が生む信頼
TUKASA PAINTの事業領域は、建築塗装を軸に車両板金・防水工事と幅広い。外壁塗装専門店とは一線を画し、「塗装一本だけやってたら絶対潰れる。もういろんなことをせなあかん」という考えのもと、複数の工種を掛け持ちできる体制を整えてきた。月によってはトラックの板金ばかりの時もあれば、建築塗装が主軸になる時もある。仕事の繁閑に合わせて柔軟に対応できる多能工としての強みが、経営の安定につながっている。
以前はハウスメーカーの下請けがメインだったが、「件数はあるが単価が安く、仕事が嫌いになりそうな時期があった」と梅本代表は語る。12月31日まで働いても手元に残るお金は「家族を養うだけで終わる」水準。それをきっかけに、工務店・不動産会社との直接取引にシフトし、見積もりを自ら出せる仕事を増やしてきた。
梅本代表が「選ばれる理由」として真っ先に挙げるのは、技術や規模ではなく「素直な気持ち」だ。「仕事がない時に、お金はいらないからやらせてほしいと言ったこともある」と話す。発注者から電話がかかってくること自体がありがたい——そう感じながら仕事に向き合う姿勢が、長年にわたる信頼関係の礎となっている。そこに技術の担保が加わることで、顧客満足につながる。「そこだけじゃないけど、そこは八割ぐらい占めてると思う」と梅本代表は言い切る。
⚠️ 材料不足・悪質業者・集客の変化──中小塗装業が直面する現実
まず材料問題だ。塗料の供給が逼迫しており、「全然入らない」「注文受注自体ストップしている」という状況が続く。梅本代表は在庫のある塗料の中から顧客に選んでもらうなど工夫を凝らしているが、「だいぶ厳しい」というのが本音だ。
次にピンポン営業の難化だ。かつては足場を組んだ現場から近隣に声をかけ、口コミで仕事を広げるスタイルが機能していた。しかし近年は悪質業者による詐欺的な訪問販売が相次ぎ、一般消費者の警戒心が高まっている。「ほんまにやってんかお前、みたいな目で見られる」と梅本代表は苦笑する。近所付き合いの希薄化も追い打ちをかけ、訪問販売による直接集客は厳しくなる一方だ。
集客経路の変化も見逃せない。一般消費者の多くは現在、外壁塗装のポータルサイトで複数社を比較しながら依頼先を探す。梅本代表もポータルサイトへの登録を活用しながら案件を獲得してきた。一方で「ゆくゆくはネットで探すのが主流になっていく」という見方も持っており、Webからの直接集客が本格化すれば、手数料なしで問い合わせを得られる自社のWebサイトの重要性が増してくるとも考えている。時代の変化を冷静に読みながら、次の一手を模索している段階だ。
🌱 10年後のビジョン──「楽しく仕事ができて、家族を養える」それが全て
梅本代表に今後の展望を尋ねると、「現状維持」という言葉が返ってきた。大きな数字や壮大なビジョンより、「楽しく仕事ができて、家族を養える」状態を守り続けることが最優先だという。
ただし、現状維持のためには仕事の質と取引先を変えていく必要がある。工務店・不動産会社との直接取引をさらに増やし、やりがいを感じられる現場を積み重ねることで、自然と人も集まってくるはずだという考えだ。「仕事がそろってきたら、人も多分ゆくゆく集まってくると思う」と梅本代表は語る。現時点では17歳になる長男が休みに手伝いに来ることもあり、将来的な担い手についても目配りしている。
採用については、ハローワークに出した時期もあったが「面接に来なかった人が五〜六割」という経験があり、現在は知人の紹介に絞っている。「安くてつまらない下請け仕事ではなく、やりがいのある仕事を増やすことの方が先だ」というのが梅本代表の考えだ。
梅本代表の信用の定義はシンプルだ。「仕事をやり終えてから、お客さんに確認してもらって、ありがとうって言ってからお金をもらう」——この一言に、12年間積み上げてきた仕事への向き合い方が凝縮されている。
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取材を通じて感じたのは、梅本代表の「地に足のついた誠実さ」だ。大きなビジョンより目の前の仕事を丁寧に積み重ねる姿勢、仕事をやり終えてから報酬をもらうという信念——どれも飾り気がなく、だからこそ長く付き合える職人の姿がそこにあった。厳しい環境の中でも「楽しく仕事ができれば」と笑顔で語る梅本代表の言葉が、取材後も印象に残っている。