🏗️ なぜ塗装の道を選んだのか?18歳の原点にある想い
加納代表が塗装の仕事を意識したのは、高校生の頃にさかのぼる。自宅の塗り替え工事を目にしたことで「こういう仕事があるんだ」と知り、さらに当時の趣味であったバイクを自分で塗装した経験も重なった。特に強い志があったわけではないと加納代表は笑うが、「就職するときに、まあやってみようかなって思ったのが塗装だった」と、自然な流れでこの世界に足を踏み入れたという。
18歳で塗装会社に就職し、現場で腕を磨いた加納代表は、30代前半で独立を果たした。創業は2014年。以来10年超、岡山市を中心に一人親方として施工の最前線に立ち続けている。
中小建設業において、職人が独立を決意する背景にはさまざまな事情がある。加納代表の場合、「自分の満足のいく仕事を、自分のやり方でしたい」という思いが出発点にある。その思いは今も変わっていない。
🔧 うちにしかできないこと──一人だからこそ「最初から最後まで責任を持てる」
加納塗装の最大の強みは、施工のすべてを加納代表自身が担う点にある。「施工に関しては全て自分でやってるんで、責任持ってやれますね」と加納代表は語る。大きな塗装業者やメーカー系の会社では、担当範囲が指示によって区切られ、職人は「どこからどこまで」という指定された作業しかできないケースも多い。一方、加納代表は「最初から最後まで全部自分でやる」ため、細かい部分にまで手を入れ、施主の声をその場で拾いながら対応できる。
塗装工事には、仕上がりの美しさだけでなく、下地処理の丁寧さが長期的な品質を左右する。加納代表は「下地から全部なんで。結局は上に塗り重ねたりするんで、見えなくなる部分でも手を入れて作業する」と話す。目に見えない工程にこそ、職人の誠実さが問われる。
現在は、工務店・メーカー・塗装会社など複数の元請けから仕事を受けつつ、エンドユーザーからの直接受注も増やしていくことが目標だ。直の仕事の利点について、「下請けの仕事だと色々と制約があったりするので。直であれば時間もかけられるし、自分も施主さんも満足いく仕事ができる」と加納代表は明言する。
⚠️ 材料高騰、下請け構造の限界──厳しい現実の中でどう動くか
中小建設業が直面する課題は、加納塗装も例外ではない。昨今の地政学的リスクの影響による材料の出荷遅延や単価上昇は、塗装業界に直接的なダメージを与えている。「だいぶ単価が上がってますね。戻った試しはない。上がったまんまです」と加納代表は率直に語る。コロナ禍に続く逆風であり、先行きの不透明さは続いている。
一方で、メーカーとの取引関係を構築していることで、材料の安定調達という面ではある程度の備えがある。「メーカーさんの仕事もしてるんで、材料はある程度は入ってくる」という点は、加納塗装ならではの強みでもある。
下請け構造の課題にも加納代表は正直だ。元請けを介した仕事では「向こうが受注で取ってきたところまでしかできない。もうちょっとここまで手を入れられたら良いのになと言うところがある」と言う。職人として「こうした方が良い」と思っても、他の業者との絡みから勝手に動けない場面も出てくる。だからこそ、直の仕事を増やしてこの制約から自由になることが、加納代表の現実的な目標となっている。
🌱 一人親方が描く未来──「手に職」の価値と、自分らしい仕事の実現へ
将来のビジョンについて問われた加納代表は、「そんな今何も考えてないですけどね。こなしてるだけなんで、仕事を」と笑いながらも、方向性は明確に語った。「直の仕事をとりあえず増やして、自分の満足いく仕事を好きなようにしたい」。規模拡大よりも、質を大切にした仕事を一つひとつ積み重ねていくことを重視する姿勢だ。
仕事が安定すれば、規模を少し広げることも考えている。ただ、「無理はせん程度で。大きくなったら大きくなっただけ、粗も出てくる」と慎重だ。一人で全工程を見切れる規模だからこそ維持できるクオリティがある。その軸は、どれだけ状況が変わっても守り続けるつもりだという。
建設業界に入ることを考えている若い世代へのメッセージとして、加納代表は「手に職をつけるのが自分の中ではあった」と話す。AIが進化し、多くの仕事が自動化されていく時代にあっても、「こういうマニュアルな作業はAIはできない。やっぱり人の手で作るもんなんで」という言葉には、現場に立ち続けてきた職人の確信がある。形に残る仕事、目に見えるものづくり。それが塗装という仕事の本質であり、加納代表がこの道を26年以上歩んできた理由でもある。
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取材を通じて感じたのは、加納代表の「自分の手で責任を持ちきる」という一貫したこだわりでした。飾らない言葉の奥に、職人としての誇りと仕事への愛着が確かに宿っていました。「最初から最後まで全部自分でやる」というシンプルな言葉が、加納塗装の品質の源泉であり、施主からの信頼を積み上げてきた理由なのだと感じます。AIにはできない、人の手による丁寧な仕事を岡山の地で黙々と続ける加納代表の姿勢は、中小建設業の本質的な強みを体現していると言えるでしょう。