🏗️ なぜ建設業を選んだのか?異業種から転身した原点にある想い
菅谷氏のキャリアは、建設とはまるで縁のない場所から始まった。大手メーカーのコピー機営業、漆器の露天販売など、さまざまな仕事を経験してきた。そんな折、知人の誘いで原状回復工事の現場に初めて足を踏み入れた。
「コピーOA機器を売ったとしても、カスタマー担当に引き継がれると、お客さんが喜んだ顔を最後まで見ることができないという現実にあったのだが、この世界に入って原状回復工事をすると、綺麗になったね、新築みたいというお声を間近にいただくことができて、そこはなんか嬉しかったんですよね」
仕上がりに対するお客様の反応がダイレクトに返ってくる喜び。それがのめり込んでいった原動力だった。コピー機営業時代に取引関係のあった不動産会社に思い切って連絡を取ると、継続的な取引に至ることができた。そこから独立を意識するようになり、27歳で業界に入って3年後、30歳で独立を果たした。
「道具の選び方から洗剤の使い方まで、当時は手探りで自分なりに調べて試して納得していくしかなかったんですよね。でもそれが直接すぐ反映されるじゃないですか。手応えをだんだん感じていったんです」
中小建設業において、職人が自らの技術を試行錯誤で磨いていくことの重さを、菅谷氏の言葉は静かに伝えている。
🔧 うちにしかできないこと──ハウスクリーニング出身が生んだ”ミクロ目線”の強みとは
菅谷氏の最大の強みは、ハウスクリーニングという入口にある。原状回復工事から出発し、床張り・ボード貼り・クロス施工・建具吊りまで、スケルトン状態から仕上げまでを一人でこなせる技術を積み上げてきた。その視点は、通常の大工職人とは根本的に異なる。
「最初からこれクロスをやってる方とか、最初から大工さんやってる方とは全然目線が違うんですよ。ハウスクリーニングの世界では、髪の毛一本落ちててもアウトなので。仕上げのきめ細かさは、普通の方と全然違うと思うんですよね」
たとえば、ボードのビス頭が出っ張ったまま施工を進める大工の仕事を、クロス職人の立場で見ると問題は一目瞭然だという。「基準が一メートル単位の仕事から入るんじゃなくて、0.1ミリとか、そういうところから入ったので、見る目線が全然違うんですよね」と語る。
さらに、マンションのフルスケルトン改修から飲食店の店舗内装、オフィス仕上げまで幅広く対応できるうえ、水栓交換・ブロック補修・網戸交換・駐車場ラインの引き直しなど、複合的な小工事にも精通している。「一人の職人で全部済んでしまうというのはロスも何もないし、仕上がりまで安心して見てられる」という点が、発注側にとっての明確なメリットとなっている。
⚠️ 職人の技術が消えていく──30年の経験者が見る業界の課題とは
菅谷氏が業界で感じる課題は、技術の継承と仕事の質の低下だ。30年のキャリアの中で、かつて懇意にしていたお客様が定年・引退で次々と交代し、関係が途切れてきた経験を持つ。それだけでなく、マッチングサービスで出会う業者の変化にも懸念を感じている。
「AIがどんどん進歩して、ロボットが進歩していくと、生身の人間が持っているノウハウとか技術がなくなってしまうと思うので。それを疎かにすると、外国人労働力頼みになってしまうのではないか。日本人のきめ細かさ、器用さ、工夫、日本人らしさで築かれたものを残していければなあっていうのは、密かに思ってますよ」
担い手不足について、菅谷氏は独自の視点で語る。「大工さんが認知症になりにくい業種として上位に入っているというデータがある。仕事をしながら体を動かし、規則正しい生活リズムが強制的にできていく。そういう健康面のメリットも含めて、職人という仕事の魅力を若い人に伝えていけるといい」とも述べた。
また、受注先についてはマッチングサービスの活用と並行して、二次下請けではなく元請けや一次会社との直接取引を優先する方針を貫く。支払いサイトが長い取引先は資金繰りの面でリスクとなるため、回転率の良い直接取引を重視している。
🌱 技術を次の世代へ──菅谷氏が描く”継承”という願望
事業の安定と並行して、菅谷氏は会社の将来像についても思いを語る。「場合によっては、人を増やしていきたい。次のステップに進みたいという気持ちはある」と述べ、仲間とともに成長していく組織づくりを視野に入れている。
今後の方針としては、まず信頼できる取引先との関係を着実に広げ、事業の土台を盤石にしていくことを優先する。不動産会社やリフォーム会社など、元請けに近い立場の企業との継続的なパートナーシップを築くことが、次のステップへの鍵と見据えている。
目指すのは単なる事業拡大ではなく、「ノービーに頼んでよかった」「ノービーだから頼んだ」と言ってもらえる存在になることだ。現に、繁忙期は断っても再び声がかかるほどの信頼を積み重ねてきた。
「自分が培った技術を活かせる環境ができたら、本当に本望だなっていう思いは密かにある。何かしらこう、引き継げれば最高だなあって」
職人という仕事が持つ誇りと、その技術を絶やしたくないという使命感。菅谷氏の言葉の端々には、建設業への深い愛着が滲んでいた。
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取材を通じて印象的だったのは、菅谷代表の「お客様の喜んだ顔を直接見たい」という原点の純粋さでした。異業種での経験が”人を見る目”を育て、それが今も職人としての仕事の根幹にある。技術と人間性の両輪が、ノービーの強みだと感じました。