🏗️ なぜ建設業を選んだのか? 原点にある「積み重ねる力」
「どうしてこの仕事を始めたのか、と聞かれても、気づいたら30年以上続けていた感じですね」
矢吹代表はそう笑顔で話す。足場の組み立て・解体から鉄骨の建て方、そして土工(コンクリート打設工事)まで、建設現場の根幹を支える仕事を一手に担ってきた。
特に土工については、代表自身が強いこだわりを持つ。「足場は組んでも解体したら無くなる。でも最後に残るのはコンクリートでしょ。きちっとした製品を作ってあげないと、その建物は長持ちしない」。外から見えない部分だからこそ、手を抜かない。その積み重ねが、会社の揺るぎない土台をつくってきた。
中小建設業にとって「手に職をつける」ことの価値は計り知れない。矢吹代表のもとで育った職人たちは今、大卒の現場監督にも堂々と意見を交わせるだけの知識と経験を備えている。現場で積んだ実地の経験値は、どんな教科書よりも深い学びをもたらしてくれる。
🔧 うちにしかできないこと──30年の実績が語る強みとは?
有限会社新和が大林組をはじめとする大手ゼネコンの現場に選ばれ続ける理由は何か。矢吹代表に問うと、こんな言葉が返ってきた。
「昔からやってきたから、それだけです。でも、うちにやれる仕事ができる会社は、そう多くはない」
謙虚な言葉の裏に、確かな実績がある。角川書店の本社ビル、渋谷の再開発、品川・八重洲といった都内の大型プロジェクト──若い頃からこれらの現場に携わり、当時新入社員だった大林組の担当者が今や40代となって会社の中枢を担うようになっても、変わらず声がかかる。それは単なる「つきあい」ではなく、現場で積み上げてきた信頼の証だ。
「うちの会社のスキルが高いってことを、わかってもらえてるからでしょう」と、代表は静かに語る。渋谷再開発をはじめ、名だたる大型プロジェクトに携わってきた実績が、その言葉を裏打ちしている。
コンクリート打設における天候・気温への対応など、現場経験に裏打ちされた判断力は、マニュアルでは補えない。中小だからこそ、一人ひとりの職人が現場の変化に機敏に対応できる──これが新和ならではの強みだ。
⚠️ 人材・世代交代・デジタル化──変化の時代を、新和はどう乗り越えるか
中小建設業にとって、人材育成と世代交代は今まさに取り組むべきテーマだ。有限会社新和は、その課題に正面から向き合っている。
現在の従業員は14〜15名。50代のベテランスペシャリストが現場の中核を担い、その技術と経験は業界随一だ。矢吹代表は次世代への継承を見据え、「今のうちから若い人間を育てておきたい。あの50代の職人たちの技を、しっかり次に伝えていきたい」と前向きに語る。
採用の手応えも出てきている。自社ホームページを見て昨年1月に入社した社員は今も活躍中で、今年は19歳の若手も新たに加わった。「四街道で仕事を探してたら、うちが出てきて来てくれたんだ」と代表は嬉しそうに振り返る。地域に根ざした存在感が、着実に若い世代にも届き始めている。
待遇面でも積極的な姿勢が光る。経験者の日給を18,000円からに引き上げ、未経験者も13,000円からスタートと同業他社より高い水準を実現。さらに労災上乗せ保険に全員加入し、万が一の際も安心して働ける環境を整えている。「生活があるから。それはちゃんとしてあげたい」という代表の言葉が、従業員への深い思いやりを物語る。
デジタル活用についても、「そういう時代なんだな、と感じています。これからもっと発信していきたい」と代表は意欲を見せる。ホームページやブログを通じた情報発信を強化し、より多くの求職者に新和の魅力を届けていこうとしている。
🌱 次世代へつなぐ──72歳代表が語る、地に足のついたビジョン
「会社を大きくするより、次の世代にちゃんと任せられる状態を作っておきたい。それが今の一番の目標です」
矢吹代表は72歳を迎えた今も、現場に立ち、一人で仕事をこなすほどの体力と気概を持ち続けている。長年現場を駆け抜けてきた職人としての誇りが、その姿勢ににじみ出る。
建設業界の横のつながりは密で、「あの会社がどこで何をやっているか、近辺の人間はみんな知っている」という世界だ。派手な宣伝がなくとも、現場での仕事ぶりが自然と評判を呼び、長年にわたって仕事が続いてきた。それこそが、新和が地域で築いてきた確かなブランド力だ。
若い人材に対しては、「やる気があって来てくれるなら、いい環境を作ってあげたい。選んで来てくれたんだから、ちゃんとしてあげたい」と温かく語る。整理整頓の徹底、現場に廃材を残さない丁寧な後片付け──職人としての基本を大切にしながら、その技と心を次の世代へと受け渡していく。中小建設業にとって「地道に積み上げる」ことこそが、最も力強い成長の道筋なのだと、矢吹代表の歩みが証明している。
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取材を通じて感じたのは、矢吹代表の「やると決めたことは必ずやり遂げる」という一貫した姿勢でした。72歳になった今も現場に立ち続けるその背中が、若い職人たちへの最大のメッセージになっていると感じました。