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災害が起きたとき、避難所でまず必要になるものとして、水や食料を思い浮かべる人は多いかもしれません。しかし、忘れてはいけないのがトイレの確保です。
断水や排水設備の停止によってトイレが使えなくなると、避難生活そのものに大きな影響が出ます。今回は北九州市の取り組みを通じて、災害時のトイレ対策と、そこに関わる建設業の役割を考えます。
北九州市では、災害時のトイレ環境を確保するため、移動できるトイレカーと、避難場所に整備するマンホールトイレの両方を用意しています。プレスリリースでは、災害時のトイレについて、『「トイレ環境の悪化は、生命に関わる問題」』としています。
トイレカーは、必要な場所へ車両そのものを移動させて使う設備です。北九州市は令和8年2月に株式会社BBWILLと協定を締結し、同年3月に市所有のトイレカー1台を導入しました。車内には中央の壁で仕切られた2つの独立した個室があり、それぞれに水洗の洋式トイレと手洗い場が設けられています。
令和8年8月には、令和8年熊本地震の際に熊本県八代市へ派遣されています。つまり、トイレカーは「必要な場所へ駆け付ける」災害対策です。
一方のマンホールトイレは、下水道管に直接流す仕組みを利用した災害用トイレです。北九州市では平成27年度から整備を開始し、令和8年9月時点で市内11カ所の整備が完了しています。
入口に段差がなく、洋式便器を標準仕様とするほか、車いす利用者や子ども連れにも対応できる広いタイプもあります。
今回の取り組みで注目したいのは、トイレそのものだけではありません。災害用の設備は、そこに存在しているだけでは十分に機能しない場合があります。
マンホールトイレは、平常時には地上にマンホールのふたがあるだけです。そのため、初めて使う人にとっては「ここがトイレになるのか」とイメージしにくい設備でもあります。北九州市では、実際に使用してもらうイベントや実地訓練を行ない、整備場所には看板も設置しています。
これは建設業の現場にも通じる考え方です。「設備を整えること」と「実際に使える状態にしておくこと」は別です。現場で災害が起きた場合、誰が設備を確認するのか、どこから資材を調達するのか、どの協力会社へ連絡するのか。事前に決めておかなければ、いざというときに判断が遅れる可能性があります。
建設業で働く人にとって、マンホールや下水道管は決して珍しいものではありません。しかし、普段は意識されにくい設備が、災害時には生活を支える重要なインフラになります。
インフラは、平常時に問題なく使えることが当たり前になっているからこそ、使えなくなったときに影響の大きさが分かります。
道路や上下水道、排水設備などに関わる建設会社は、地域の暮らしを支える仕事を担っています。災害時の復旧だけでなく、普段から設備を整備し、維持し、必要なときに機能させることも、建設業と地域防災の接点といえるでしょう。
北九州市の事例では、マンホールトイレの運用について一般社団法人北九州市建設業協会と覚書を締結しています。行政と建設業が平時から役割を確認しておくことも、災害への備えの一つです。
災害対策というと、大規模な設備や特別な工事を想像するかもしれません。しかし、中小の建設会社でも、まずは自社の現場でトイレが使えなくなったらどうするかを考えることから始められます。
例えば、断水した場合の対応、仮設トイレや簡易トイレの確保、作業員への連絡方法、現場を一時停止する判断、協力会社への連絡先などです。特に複数の現場を抱えている会社では、現場ごとに対応がばらばらにならないよう、基本的なルールを共有しておくと動きやすくなります。
また、地域の防災訓練や設備の見学などに参加しておくと、自社の仕事と地域インフラとのつながりを考える機会にもなります。災害が起きてから準備するのではなく、普段の仕事の中で「もしも」を一度考えておくことが重要です。
災害時のトイレは、避難生活を支える身近なインフラです。北九州市では、必要な場所へ移動できるトイレカーと、地域に整備するマンホールトイレを組み合わせて、さまざまな状況に対応できる環境づくりを進めています。
建設業にとっても、道路や上下水道などのインフラを支える仕事は、地域の防災と深くつながっています。普段は見えにくい設備ほど、災害時には大きな役割を果たす。今回の事例を、自社の現場に必要な備えを考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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