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大規模再開発が進むエリアでは、新しい街並みが整う一方で、そこに暮らしてきた人々の記憶や営みが失われがちだという課題が指摘されている。東京都新宿区の西新宿三丁目でも再開発が進行中だが、このたび地域の記憶を掘り起こし次世代につなげる試みとして、大学と地域コミュニティが連携した体験展示が開催されることになった。建設業に携わる読者にとっても、再開発事業と地域コミュニティとの関わり方を考えるうえで参考になる事例である。
武蔵野大学工学部建築デザイン学科は、太田裕通准教授が担当するプロジェクト授業「あわいdeカタチ」の一環として、西新宿三丁目のコミュニティ拠点「nae(なえ)」と連携し、学生による体験展示を2026年11月7日から21日まで開催する。地域住民へのインタビューやフィールドリサーチを踏まえた取り組みの狙いについて、発表元は次のように説明している。
『地域住民へのインタビューやフィールドリサーチを通じて、西新宿のまちの記憶や営みを掘り起こし、次の世代へとつなぐことを目指した取り組みです。』
引用元:学校法人武蔵野大学プレスリリース(PR TIMES掲載)
開催の背景についても、発表元はまちの変遷を次のように振り返っている。
『西新宿三丁目は、再開発によって大きく姿を変えようとしています。かつてこのまちには田畑や雑木林が広がっていました。やがてガス工場や浄水場など、都市を支えるインフラの拠点へと移行し、「働く」と「暮らす」が混ざり合うまちへと変化しました。かつては、子どもたちが街を自由に使いながら、多様な遊びを生み出していましたが、再開発による高層化とともに、そうした遊びや体験は次第に見られなくなっています。』
引用元:学校法人武蔵野大学プレスリリース(PR TIMES掲載)
大規模な市街地再開発では、インフラや建物の整備計画が優先される一方、長年その土地で暮らしてきた住民の生活史や地域の文化がどのように継承されるかは見落とされやすい論点である。工事の進行とともに、かつての遊び場や生活の風景は失われ、記録として残らないまま世代交代が進んでしまうケースも少なくない。
こうした課題に対して、建設事業者や開発事業者が地域住民との対話をどのように組み込むかは、今後のまちづくりにおいて重要な視点になりつつある。今回の取り組みは、大学という第三者的な立場が住民の記憶を聞き取り、形にして残すという役割を果たした点に特徴がある。
展示に至るまでのプロセスは、2026年度前期の4月から8月にかけて行われた。建築デザイン学科の3年生以下19名が4チームに分かれ、西新宿三丁目の歴史や市街地形成のリサーチに取り組んだ。5月に実施した地域住民へのインタビューでは、「銭湯の煙突によくよじ登った」「浄水場に忍び込んだ」「段ボールで秘密基地をつくった」といった、このまちならではの遊びの記憶が集まったという。
7月の中間発表を経て、8月の最終発表会では、学生たちが展示模型をもとに野村不動産・nae実行委員会へ制作意図を発表し、子どもたちが実際に遊べる空間のあり方や、記憶を可視化する工夫、安全性、施工性などについて意見を交わした。夏休み中も設計の詳細を詰め、9月末から展示に向けた制作を本格化させており、半年以上をかけた地道な積み重ねが今回の展示につながっている。
引用元:学校法人武蔵野大学プレスリリース(PR TIMES掲載)
展示会「このまちで、何して遊ぶ? nae Community Archive 〜西新宿に学んだ、まちの遊びこなし方〜」は、2026年11月7日から21日までの土日祝などを中心とした日程で、nae Park / Kitchen(東京都新宿区西新宿3丁目13-4)にて13時から17時まで開催される。主催はnae実行委員会と武蔵野大学工学部建築デザイン学科「あわいdeカタチ」プロジェクトで、野村不動産株式会社も関わっている。入場は無料である。
11月7日(土)にはオープニング・トークイベント、15日(日)には西新宿の街歩きも予定されており、詳細は後日naeの公式SNSなどで案内されるという。再開発エリアの現地で、まちの歴史を体感できる貴重な機会といえる。
再開発事業に関わる建設業者にとって、今回の事例は単なる文化活動にとどまらない示唆を含んでいる。工事そのものだけでなく、地域住民との関係構築や、まちの記憶をどう扱うかという視点は、今後の大規模開発案件において発注者や自治体から求められる要素になり得る。地域とのコミュニケーションを丁寧に重ねることが、円滑な工事推進や合意形成にもつながるだろう。
特に人手不足が続く建設業界では、こうした地域連携プロジェクトへの対応力も、協力会社選定や人材確保の場面で評価される要素になっていく可能性がある。
西新宿三丁目で進む再開発の中、学生たちが地域の記憶を掘り起こし、次の世代につなぐ試みは、まちづくりに関わるすべての事業者にとって示唆に富む取り組みである。建設業の現場でも、工事の効率だけでなく地域との対話を大切にする姿勢が、これからのプロジェクト成功の鍵になるだろう。
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