記事を読み込み中です
道路や下水道、公共施設の更新工事は、これから「熱のインフラ」を一緒に整える機会になるかもしれません。
国土交通省の「効率的なエネルギー利用に向けた都市の在り方検討会」は、令和8年10月6日の第5回会合で今後の方向性案を示しました。地域冷暖房(地域冷暖房とは:一か所の熱源設備でつくった冷水・温水・蒸気などを、導管を通じて複数の建物に供給する仕組み。DHCとも呼ばれる)への接続や未利用熱の活用を、都市開発や施設更新の早い段階から検討するよう促す内容です。
事務局資料では、取組の柱として①熱融通(地域冷暖房)、②未利用熱、③ディマンドリスポンス(DR)の3つが示されました。
注目したいのは、「いつ検討するか」を整理している点です。公共施設・インフラの更新や再編の際には、高効率な既存DHCへの接続、建物間の熱融通、需給調整などを検討し、公共用地や道路・下水道工事を活用してコストの最適化や周辺施設への拡張性確保を図る、という方向性が書き込まれています。
民間の既存建物でも、熱源や受変電設備を更新する前に、既存DHCへの接続や近隣建物との熱融通を検討することが挙げられています。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/advisorypanel_urbanenergystrategy.html)
ガイドライン(仮称)の考え方を示した資料では、「まちづくりは一度実施すると後から変更することが難しい」という問題意識が示されています。構想・計画段階でエネルギーを検討しなければ、脱炭素化に必要なインフラを入れる機会を失うおそれがある、という指摘です。
また、エネルギー施策の目的は脱炭素だけではありません。防災・レジリエンス(レジリエンスとは:災害などの被害から立ち直る力、しなやかさ)の向上、暑熱環境の改善、電力需給の安定化といった公共的な価値も挙げられています。
DR(ディマンドリスポンスとは:電気の需給状況に合わせて、使う側が消費量を増やしたり減らしたりする取組)に使える設備として、蓄電池や蓄熱槽、CGS(コージェネレーションシステムとは:発電と同時に出る排熱も利用する設備)などが紹介され、DRと防災の両面に役立つ設備の導入を促す考えも示されました。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/advisorypanel_urbanenergystrategy.html)
国交省は政令指定都市20市の都市部局にアンケートを行ない、19市から回答を得ました(回収率95%)。
施策の「内容まで知っている」と答えた割合は、熱融通が79%、DR・未利用熱(未利用熱とは:下水や河川水、清掃工場の廃熱など、これまで使われずにいた熱)などが63%でした。一方、DRについては7自治体が「知らなかった」と回答しています。
導入や関心を妨げる課題では、5施策の合計で「専門知識・ノウハウ不足」が20件で最多、「初期・維持管理費が高い」「民間事業者との役割・費用調整が難しい」がそれぞれ18件と続きました。
清掃工場の焼却余熱などは、隣接する温浴施設やプールなど施設内・近隣での利用が中心で、地域冷暖房として街区へ供給している例は1自治体のみという結果でした。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/advisorypanel_urbanenergystrategy.html)
検討会は全6回の構成で、第6回(令和8年11月24日予定)で中間とりまとめが行なわれる予定です。ガイドラインの構成案では、まちづくりにエネルギーの視点が必要な理由から、地域特性に応じた取組、検討のタイミングと進め方までを示す方向が示されています。
第5回の議事要旨では、委員から「道路・上下水道の更新・改修時に熱導管を同時に敷設できる仕組み」を設け、導管コストの低減とインフラ更新を一体で進める調整方法を示すべきとの意見も出ました。あくまで検討段階の意見ですが、インフラ更新工事と熱の導管整備が組み合わさる可能性がある点は、土木・設備の双方にとって見逃せない動きです。
まずは、地元自治体の公共施設やインフラの更新計画に目を向けておくことです。資料では、行政が中長期的な計画を示して民間事業者の予見可能性を高める方向も示されています。
次に、空調・熱源、蓄電池、蓄熱槽といった設備更新の相談を受けたとき、DR対応や近隣との熱融通という選択肢があることを知っておくと、施主への提案の幅が広がります。
そして、計画が固まる前から都市部局や環境部局、開発事業者、エネルギー事業者などが一緒に検討を始めることが重視されています。異業種や他社とつながる準備をしておくことが、案件に関わる第一歩になります。
インフラや建物の「更新」は、エネルギーの使い方を見直す絶好の機会として位置付けられようとしています。中間とりまとめとガイドラインの内容を注視しつつ、自社の得意分野を生かせる場面を探っていきましょう。
道路・下水道や公共施設の更新に合わせた地域冷暖房・熱導管の整備など、分野をまたぐ工事に備えた協力会社探しには、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へのご登録がおすすめです(緑のバナーをクリック)。
出典:「第5回効率的なエネルギー利用に向けた都市の在り方検討会 資料1・資料2・議事要旨」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/advisorypanel_urbanenergystrategy.html)をもとに作成
➡関連記事:つくば74haデータセンター用地、地元建設会社に広がる受注のチャンス
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。