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秋は各地で建築や景観に関する表彰が続く季節です。そのなかで国土交通省は令和8年10月29日、令和8年度「都市景観大賞」(都市景観大賞とは:優れた都市景観を形成している地区や、地域の景観に関する活動を表彰する制度)の表彰式を開きました。
今回の受賞地区には、古くなった施設や放置された建物をどう生まれ変わらせるかという、全国の現場に共通するテーマが詰まっています。
都市空間部門で大賞を受けた長野市の事例は、県の芸術文化の中心を担ってきた旧美術館の老朽化がきっかけでした。一方、景観まちづくり活動・学習部門の大賞となった南九州市の事例は、破産した民間の建物が公園内に放置されていたことが出発点です。
どちらも「古いものをどうするか」という課題から始まり、周りの環境を生かした新しい風景へとつなげています。
都市空間部門の大賞は「長野県立美術館・長野市城山公園周辺地区」(地区面積約3.9ha)です。美術館は2020年にリニューアルオープンしました。敷地は風致地区(風致地区とは:自然の美しさなど都市の風致を守るため、建物の高さなどに制限がかかる地区)の城山公園内にあるため、建物を低く抑えています。
10mの高低差の中に本館の主要部を収め、公園と2つの道路の3つのレベルから入館できるつくりです。さらに歩道橋の撤去を含む交差点改良も行ない、善光寺の東参道と美術館が視覚的にもつながりました。応募者には長野県、長野市、善光寺、清水建設などが名を連ねています。
活動・学習部門の大賞は「住民有志の発意による100年後も語り継がれる風景づくり -bandpark 番所鼻自然公園リ・デザイン-」です。建物の撤去運動は8年間続き、撤去後は3年間で50回以上の住民参加の社会実験を重ねて公園のリ・デザインを策定しました。公園の来訪者数は2010年の1.5万人から2024年の20万人へと伸びています。
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令和8年度 都市景観大賞(国土交通大臣賞)2件の比較 |
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項目 |
都市空間部門 |
景観まちづくり活動・学習部門 |
|---|---|---|
名称 |
長野県立美術館・長野市城山公園周辺地区 |
住民有志の発意による100年後も語り継がれる風景づくり -bandpark 番所鼻自然公園リ・デザイン- |
所在地 |
長野県長野市 |
鹿児島県南九州市 |
きっかけ |
旧美術館の老朽化に伴う再整備 |
公園内に放置された民間建物の撤去(撤去運動は8年間) |
規模・期間 |
地区面積約3.9ha/2020年リニューアルオープン |
3年間で50回以上の住民参加の社会実験を経てリ・デザインを策定 |
主な整備内容 |
・10mの高低差内に本館の主要部を収め、3つのレベルから入館 |
・公園全体のリニューアル |
成果 |
善光寺東参道と美術館が視覚的にもつながった |
来訪者数 2010年 1.5万人 → 2024年 20万人 |
応募者 |
長野県、長野市、善光寺、株式会社プランツアソシエイツ、清水建設株式会社、一般財団法人長野県文化振興事業団 |
NPO法人頴娃おこそ会、一般社団法人アソビシロ、NPO法人森と木の研究所、南九州市、株式会社上條・福島都市設計事務所 |
出典:令和8年度「都市景観大賞」各賞の選定(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000613.html)をもとに作成
都市景観大賞は「都市景観の日」実行委員会が主催し、平成3年度から続いています。今年度は都市空間部門で5地区、活動・学習部門で4活動が選ばれ、各部門の大賞には国土交通大臣賞が贈られました。応募件数は都市空間部門が5件、活動・学習部門が6件です。
大賞以外では、大阪市の御堂筋地区、川崎市役所広場地区、福島県双葉町の双葉駅西住宅地区、静岡県伊豆市の土肥地区などが受賞しています。なお、活動・学習部門は今年度から「景観まちづくり活動・学習部門」に名称が変わりました。表彰式は国土交通省の朝日国土交通副大臣室で行なわれ、朝日副大臣が表彰状を授与しました。
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令和8年度 都市景観大賞 受賞一覧(都市空間部門5地区・景観まちづくり活動・学習部門4活動) |
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部門 |
賞 |
地区名・活動名 |
所在地 |
|---|---|---|---|
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都市空間部門 |
大賞(国土交通大臣賞) |
長野県立美術館・長野市城山公園周辺地区 |
長野県長野市 |
「都市景観の日」実行委員会会長賞 |
御堂筋(なんば駅前~長堀通)地区 |
大阪府大阪市 |
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公益財団法人都市づくりパブリックデザインセンター理事長賞 |
川崎市役所広場地区 |
神奈川県川崎市 |
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奨励賞 |
双葉駅西住宅地区 |
福島県双葉郡双葉町 |
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奨励賞 |
“海と共に生きる” 観光防災まちづくりを進める 伊豆市土肥地区 |
静岡県伊豆市 |
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景観まちづくり活動・学習部門 |
大賞(国土交通大臣賞) |
住民有志の発意による100年後も語り継がれる風景づくり -bandpark 番所鼻自然公園リ・デザイン- |
鹿児島県南九州市 |
「都市景観の日」実行委員会会長賞 |
地域の歴史資源を活用した多世代景観学習の発展的継続 |
新潟県新潟市 |
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「都市景観の日」実行委員会会長賞 |
アートと歩む景観まちづくり |
東京都立川市 |
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公益財団法人都市づくりパブリックデザインセンター理事長賞 |
水戸宿泊交流場を拠点とした空き家・空き店舗活用による次世代の景観まちづくり活動 |
茨城県水戸市 |
出典:令和8年度「都市景観大賞」各賞の選定(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000613.html)をもとに作成
受賞事例からは、現場で生かせるヒントがいくつも読み取れます。
長野では屋上広場にイベント用の床アンカー(床アンカーとは:テントや仮設物を固定するため床に埋め込む金具)をあらかじめ設けており、完成後の使われ方まで見越した施工が評価につながっています。
南九州市では公設民営(公設民営とは:行政が施設を整備し、民間が運営する方式)のカフェやツリーキャンプを整備し、収益の5%を公園管理費に還元する仕組みをつくりました。公園全体のリニューアルでは、国・県・市との官民連携事業(官民連携とは:行政と民間が役割を分担して公共サービスや施設整備を進める手法)を複数組み合わせています。
長野でも、県全域で行なわれた県民リレーワークショップから、無料で使える館内の公共スペース「屋根のある公園」が生まれました。工事の段階から、維持管理のしやすさや地域の使い方を意識しておくことが大切だと分かります。
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bandpark 番所鼻自然公園の「整備・運営・管理」の仕組み |
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項目 |
内容 |
|---|---|
運営の担い手 |
NPO法人頴娃おこそ会のメンバーが立ち上げた一般社団法人アソビシロ |
整備の進め方 |
国・県・市との官民連携事業を複数組み合わせ、公園全体をリニューアル |
拠点施設 |
公設民営の観光拠点施設(カフェ・ツリーキャンプ) |
管理費の確保 |
得た収益の5%を公園管理費に還元 |
市との関係 |
市とのパークマネジメント基本協定に基づき、管理運営の委託を受ける |
日常の活動 |
公園内カフェやツリーキャンプ場の運営、天然の岩礁でのカヌー体験など |
来訪者数 |
2010年 1.5万人 → 2024年 20万人 |
出典:令和8年度「都市景観大賞」各賞の選定(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000613.html)をもとに作成
令和8年度の都市景観大賞は、古い建物の建て替えや撤去をきっかけに、周りの景観と一体になった新しい風景を生んだ取り組みが選ばれました。身近な現場でも、完成後の使われ方や周辺とのつながりを少し意識するだけで、仕事の価値はぐっと高まるはずです。
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出典:令和8年度「都市景観大賞」の表彰式を行います(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000616.html)、令和8年度「都市景観大賞」各賞の選定(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000613.html) をもとに作成
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