🏗️ なぜコンクリート圧送の道へ?原点にある"偶然の縁"
菅原代表がコンクリート圧送の世界に踏み込んだのは、20歳のころのことである。当時は大工として働いていたが、担当していた物件が完工し、次の仕事が決まらないタイミングが訪れた。
「最後に手がけたお家の親戚の方が、コンクリート圧送業の社長さんだったんですよ。サッカーをやっていて体もがっちりしていたので、お酒の席で『仕事が決まるまででもいいからやってみるか』ってノリで声をかけていただいたのがスタートで」
その一言が、27年間続くキャリアの入り口になった。菅原代表はこの経験から「タイミングと人の繋がりを大切にする」という姿勢を培ったと振り返る。27年間、この仕事を離れることなく続けてきた背景には、現場仕事そのものへの強い愛着がある。中間管理職として事務所に入ることを打診されたこともあったが、その話を断り、独立という道を選んだ。「きつかろうが何しようが、現場に出てやるのが好きで」という言葉には、職人としての矜持が宿っている。
コンクリートポンプ車という特殊重機を用いて、未固化の生コンクリートを建設・土木の現場に圧送するこの仕事は、専門性が高く代替が利きにくい。その希少性と、積み上げた技術と人脈が、菅原代表の今日を支えている。
🔧 うちにしかできないこと──現場が語る、菅原代表の強み
菅原代表の最大の強みは、スーツを着た営業ではなく「現場での仕事ぶりそのもの」で信頼を勝ち取ってきた点にある。一人で現場に立つため、仕事・営業・請求書まですべてを自分でこなす日々の中でも、この姿勢は一切ぶれていない。
「スーツ着て営業に回れない分、現場に出てやってる仕事を見てもらって、他社との差別化を意識してやってる感じですね。昔からコミュニケーションをよく取ったりとか、お客さんの要望にできるだけ答えられるように頑張ったりとか」
その積み重ねが実を結び、仲介業者から回ってきた仕事が、「直接依頼してもいいですか」という言葉に変わる瞬間が増えてきた。現在、元請けから直接依頼を受ける先は5社ほどにのぼり、さらにホームページを見た東京の業者から連絡を受けて鉄塔の土台の基礎工事に携わるなど、横の繋がりとウェブ双方からの受注実績も生まれつつある。
また、施工前には自ら現場の打ち合わせへ足を運ぶスタイルも徹底している。「実際にやるのは僕なんで、第三者に聞くよりも自分の目で確認して入りからやりたいタイプなんで」という言葉は、段取りと品質への強いこだわりの表れである。サッカー仲間や業界の先輩・後輩との横のネットワークも、今の仕事の重要な柱だ。
⚠️ 人手不足・採用難……圧送業界の現実に、どう向き合うか
中小建設業が直面する人手不足の問題は、コンクリート圧送業にも深く影を落としている。菅原代表もかつて従業員を雇った経験があるが、現在は一人体制で動いている。採用の難しさについて、こう率直に語る。
「僕らの業界はなかなかやっぱり難しいんです。言葉に出したり紙で説明してもしづらくて、触ってみないと何をやる会社なのかも正直わかってもらえない」
この課題への独自の対応策として、菅原代表は採用候補者に対して実際の重機を動かしてもらう「体験型面接」を実施した。重機のリモコンを腰に巻かせ、実際に動かす様子を撮影したその試みは、候補者の興味を大きく引き出す結果につながったという。
採用に際して特に重視するのは、体力とコミュニケーション能力だ。「まずは人と交われるかどうか。それができる人が僕の中では大事」と菅原代表は言う。経験者であれば年齢不問、重機を増やして任せることも視野に入れている。休日面では、土曜日を休みとしている点も大きなアピールポイントだ。建設業界では土曜日も稼働する現場がまだ多い中、菅原圧送では土曜休みを打ち出しており、働き方を重視する求職者にとって魅力ある条件となっている。
🌱 次のステップへ──地域と業界に、技術と縁を繋いでいく
菅原代表が今後に描くビジョンは、会社を大きくすることより「自分が積み上げてきたものを次の世代に伝えること」に重心が置かれている。
「僕がやってきたことを伝えて、この業界に携わってくれる人が残っていければいい。会社を大きくするというよりは、そういう形になっていければなって」
かつて独立前に手がけた育成は、すでに複数の後輩を独立や業界定着へと導いてきた実績を持つ。今後も「人を先に育て、重機を増やす」という順序で、一人ずつ丁寧に人材を育てていく方針だ。
建設業界の将来性については、AIや機械化の波が押し寄せる中でも、確固たる信念を持っている。「建物ってなくなることないじゃないですか。AIや機械がどれだけ進化しても、僕らの仕事は人の手でしかできないって昔から思ってた」という言葉は、27年の現場経験から生まれた確信である。
そして、業界を志す若い世代へ向けて、こうメッセージを贈る。「毎日違う現場で違う人とやるからこそ、日々成長っていう感じがある。27年やってても、現場に行けば新しい出会いがあって。今でも自分の立場に甘んじることなく、成長できていると感じている」。無駄な出会いはない、という菅原代表の哲学は、仕事にも、人生にも、深く根ざしている。
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取材を通じて印象的だったのは、菅原代表の「現場が全て」という一貫した姿勢である。派手な営業も広告も使わず、仕事ぶりそのもので信頼を積み上げてきた27年間の重みが、言葉の端々から伝わってきた。「無駄な出会いはない」という言葉に代表されるように、人との縁を何よりも大切にしてきたからこそ、今の仕事の流れがある。一人でこつこつと積み上げてきたものが、ようやく芽吹き始めた今のタイミング。次の世代へ技術と姿勢を伝えていこうとする菅原代表の歩みは、これからが本番だと感じた取材だった。