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山田代表が屋根瓦の世界に入ったきっかけは、父親の存在だった。幼い頃から父の現場に手伝いに通い、中学生の頃にはすでに屋根の上に立っていたという。「もうまったく違和感なかったですね。身近にあるものやったから」と振り返る。
高校卒業後は製紙メーカーに就職し、製紙業界で働いていた。しかし転機が訪れたのは、1995年の阪神・淡路大震災だった。当時、兵庫県尼崎に勤務していた山田代表に、瓦職人として徳島で働いていた父から連絡が入る。「遠くにおってもなかなか、こんな時に連絡も取れんし。もう近場でおれへんか、一緒にせーへんかと言われた」
異業種からの転身ではあったが、幼い頃から父の仕事に触れてきた山田代表にとって、そこに迷いはなかった。「なんもなかったね。もうすんなり受けてしまった」という言葉が、この仕事との自然なつながりを物語っている。
平成31年(令和元年)に屋根瓦工事業として正式に開業届を提出し、現在で約7〜8年目を迎える。中小建設業においてもこうしたキャリアの転換は珍しくないが、幼少期からの経験が土台にあったことが、山田代表をスムーズに現場へと導いた。
山田瓦工業の最大の強みを一言で表すなら「几帳面さ」だと、山田代表は言う。「ちょっとしたことでも気を使って、丁寧にやる。まあ当たり前のことやと思っとんやけど、そこの違いがやっぱりあるんだろうね」とリピーターのお客さんからも評価される部分だという。
もう一つ、材料へのこだわりも山田瓦工業の大きな特徴だ。「ゆくゆく悪くならんように、自分らで厳選した材料を使う」という方針を一貫して守っている。資材の高騰が続く中でも、これを曲げるつもりはない。「製造中止にでもなったら変わってくるかもしれないけど、ある分は全部それで。その中でも一番長持ちするものをこだわっていきたい」
また、住宅はもちろん、お寺や神社といった社寺建築の屋根工事も手がけてきた実績がある。「お寺や神社は、いろんな人が目にする場所やしね。ずっと残っていく建物の屋根やからこそ、やり甲斐がある」と語る。屋根という外から見える仕事だからこそ、自分の仕事が形として長く残ることへの誇りが言葉の端々に滲み出ていた。
さらに、代表・息子・弟・甥という家族4人で運営していることで、「融通が利くし、僕の考えている仕事をそのままやってくれる」という現場の一体感も強みだ。中小建設業において、人員と品質管理の両立は永遠の課題だが、家族経営ならではのチームワークでそれを実現している。
中小建設業が共通して直面する課題は、山田瓦工業も例外ではない。まず資材の問題。屋根工事に欠かせないルーフィング材(屋根下地材)は、メーカーによる出荷調整と大幅な値上げが重なり、業界全体に影響が出ている。「建築業界みんな止まりますよね。もうほんまに」とため息をつきながらも、山田代表は先を見据えて資材を確保する動きをすでに進めていた。
もう一つの課題が、担い手の高齢化と若手の不足だ。「だいたいの瓦職人さんでみんな高齢化しとって。20年後ぐらいになったらもう間違いなく、がらっと変わると思うんですよ」と山田代表は語る。今の業界で「若手」と言われる職人でも30代後半が多く、20歳前後の職人はほとんどいない。
若い人がこの業界に来ない理由として、山田代表は「最初の給料が安い」という構造的な問題を挙げる。技術が身につくまでの期間、待遇面で不満が出やすいのは、中小建設業共通の悩みだ。「大手の方が育てやすいのは確かやけど、うちはうちのやり方で貫いていくしかない」とも話す。
一方で価格競争も悩みの種だ。「金額が安ければいいとなってしまうけど、材料や施工のことをわかってほしい。安さだけで選ぶと、あとから困ることになる」という思いから、情報発信を通じてお客さんへの理解を広げていきたいと考えている。
山田代表が描く会社の将来像は、「規模を大きくすること」ではない。「別にそこまで規模は大きくしたくないんですよ。家族経営のメリットって、やっぱりいっぱいあると思う。目の届くところで、自分の考えた仕事ができる」という。
それよりも大切にしているのは、こだわりの施工を広く知ってもらうこと。口コミが広がり、技術や材料の価値をわかってくれるお客さんに選んでもらえる会社になりたいと話す。「うちの強みを、もっといろんな人に知ってもらいたい。それが一つの目標ですかね」
後継者という面でも、山田瓦工業は恵まれた状況にある。息子(22歳)と甥(21歳)がともに現場に立っており、業界では極めて珍しい若い世代の担い手がすでに育っている。「20年後もメンテナンスしてくれる人間がいる。それがお客さんへの一番の安心材料でもある」と語った。
この業界を志す若い人たちへのメッセージとして、山田代表はこんな言葉を贈る。「屋根は外から見える仕事。自分がした建物が何十年後もそこに残って、子供に『お父さんがここを施工したんよ』と見せられる。そういう誇りを持てる仕事やと思う」。お寺や神社の屋根を手がけるたびに、その実感はひときわ強くなるという。
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取材を通じて感じたのは、山田代表の「自分の仕事に誇りを持つ」という一貫した姿勢でした。材料へのこだわり、几帳面な施工、家族で守る現場。規模より質を選ぶその在り方は、中小建設業の本質を体現していると感じます。