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湯川さんのキャリアは実家の運送会社での経験から始まる。学校卒業後はいったん子供服販売の仕事に就いていたが、20代前半に実家へ入社。以来18年間、経営の数字管理から現場のやりくりまで幅広く会社を支えてきた。
転機は弟が実家を継ぐと決まったことだった。「やめようかとも思っていたんですが、18年間でいろんなことを学んで携わってきたし、やめるんじゃなくて、一回自分でやってみようと思って」と湯川さんは振り返る。子供たちが独立し自由に動ける状況になったことも、背中を押した。
2017年、休眠状態だった有限会社大興関流を取得し代表として再スタートを切る。社名には「大きく起こす、関西に流れる」という意味が込められており、その響きを気に入りそのまま引き継いだ。当初は車庫を間借りしながら中古車を5台揃えるところから始めた地道な積み上げ。リースも通らない時期が続いたが、コロナ禍の2021年に銀行融資を受けて現在の事務所を構え、ようやく経営の土台が整った。
「ドライバーさんを重視すること、これが他社に負けないと思っているところです」と湯川さんは言い切る。
まず特徴的なのが、継続的な車両更新による新車乗車の環境だ。2026年7月には日野トレーラーの新車納車も控えており、車両は1人1台制を維持している。さらに、大型免許取得費用を全額会社が負担するという点も大きい。経験者の争奪戦が激化するなか、「大型トラックに乗ってみたい」という気持ちさえあれば、未経験からでもキャリアをスタートできる体制を整えている。
待遇面では、事務所に立ち寄った際の弁当支給(食事手当)、24時間利用できる休憩室・仮眠室を完備。収入の目安は月35〜45万円で、和歌山ならではのみかん・柿の繁忙期には月収60万円も視野に入る。「あなたの頑張り次第で、そのくらいは稼げますよ」——その言葉に、現場を大切にする姿勢が表れている。
トラック業界全体が向き合う「2024年問題」——年間の時間外労働が960時間に制限されたことは、大興関流も例外ではない。「パーフェクトに守れているとは言えないのが現状ですが、同業者さんに手伝ってもらいながら、なるべく休めるよう対応しています」と湯川さんは率直に話す。
大型免許の取得ハードルが上がり続けるなか、有資格ドライバーの確保は中小運送会社共通の課題だ。大興関流では免許補助と新車乗車という環境整備で他社との差別化を図っている。一方で、荷主との長期関係を維持しながら単価の良い仕事を優先的に受けることで、ドライバーへの給与還元を着実に続けている。また、手積み・手降ろしからパレット輸送への移行も進めており、身体的な負担の軽減に向けた取り組みも地道に行なっている。
「今いてくれているみんなに、この会社に来てよかったって思ってもらえるようにしたいです。まだまだこれからですが」
大きな宣言ではなく、目の前のドライバーたちのために——その言葉はシンプルで、だからこそ力強く響く。台数を無理に増やすより、今いるドライバーの待遇を守りながら「一人か二人、一緒にやってくれる仲間が来てくれたら」という考え方だ。
長距離トラックの仕事には独自のリズムがある。荷降ろしから次の荷積みまで自由な時間が生まれ、関東と関西を行き来しながら平日に休日を取ることもできる。「その時間をうまく活用できたら、今の若い人にも向いているんじゃないかなと思うこともあります」と湯川さんは語る。免許補助・新車乗車・食事手当・仮眠室という環境が整う職場で、一緒に走り続けてくれる仲間を待っている。
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取材を通じて印象的だったのは、「一回自分でやってみよう」という湯川代表の行動力だ。車庫の間借りから8台体制へ。ドライバーへの待遇の充実は、経営判断というより現場で働く人への自然な思いやりから来ているように感じた。