🏗️ なぜ建設業を選んだのか? 北海道から始まった職人の道
齊藤社長が建設業に入ったきっかけは、奥様の義兄がシーリング工事を営んでいたことでした。北海道・札幌出身の齊藤社長は、冬季に肉体労働の仕事が少なくなることもあり、出稼ぎとして上京。そこで出会った奥様と人生を共にしながら、義兄のもとで数年間の修業を積んで独立したといいます。
「地元に仲間はいないし、最初は右も左も分からない状態でした。それでも技術をしっかり教えてもらって、そこからやってきた感じです」。
現在の事業は防水工事の中でもシーリング(コーキング)工事に専門特化しており、マンションの大規模修繕から新築、戸建ての外壁補修まで幅広く対応しています。いわゆる"何でも屋"ではなく、1つの分野を深く掘り下げてきたのが株式会社大樹のスタイルです。中小建設業にとって、専門性を武器に信頼を積み上げていく姿勢は、長期的な事業継続の大きな強みになります。
🔧 うちにしかできないこと──腕と縁がつくるリピーターの輪とは?
「強みを挙げろと言われても、特にないんですよね」と笑いながら話す齊藤社長。しかし話を聞き進めると、確かな強みが見えてきます。それは、一度仕事をした取引先がほぼリピーターになるという事実です。
「特別な営業はいないし、僕を含めて全員が職人として現場に出ています。それでも仕事が途切れたことはない。まあ、それは腕のおかげなのかもしれないですけど」。
社員は3名、外注スタッフを加えた仲間は8~9名規模。中には外国籍のスタッフも在籍しており、日本人の職人がリーダー役を担う形でチームを組んでいます。「最初こそ偏見の目で見られることもあるけど、技術があれば1回付き合えば関係ない」と齊藤社長は言い切ります。
また、仕事は基本的に断らないというスタンスも信頼獲得につながっています。自社で受けられない案件は、横のつながりで信頼できる同業者に橋渡しをする。「つながりを意識して仲間を増やしてきた」という言葉には、知人のいない土地から1人で築いてきた20年分の重みがありました。
⚠️ 人手不足・材料不足・多重下請け… 課題だらけの業界でどう動くか
建設業界が直面する課題に、株式会社大樹も向き合い続けています。まず若手の人材確保です。「昔はやんちゃした子が来てくれたけど、今はそういう子すら来ない。給料が悪い、肉体的にきつい、というイメージが先行してしまっている」と齊藤社長は語ります。
求人には紹介インセンティブ(半年継続で5万円、1年で計10万円の入社祝い金)を設けるなど、工夫を続けていますが、定着率の向上が今後の課題です。また取材時点では、ナフサ(石油化学原料)の調達難による材料不足が現場を直撃しており、「仕事はあるのに材料が来ない」という状況が続いていました。
さらに業界特有の多重下請け構造についても課題を感じています。「同じ仕事をしているのに下に行けば行くほど単価が下がる。従業員に還元していくためにも、元請けや1次下請けとの取引を増やしていきたい」と話します。中小建設業にとって下請け脱却は共通の課題ですが、そのためには技術力と信頼関係の蓄積が欠かせません。
🌱 10年後のビジョン──「うちを選んでよかった」と思ってもらえる会社へ
「会社を大きくしたいとか、売上を伸ばしたいとか、そういうのはないんですよ」と齊藤社長は率直に言います。「仕事が切れず、楽しくやっていければ十分。それだけです」。
ただ、人への思いは強くあります。「10年選手の職人が2人いて、新しく入ってきた子もいい子たちです。うちを選んでよかったと思ってもらえるように頑張りたい」。年齢層が上がりつつある仲間たちが、体力的にきつくなっても働き続けられる仕組みをどう作るか──そこを次の課題として見据えています。
「でかい会社にしたいわけじゃないけど、離れていった人が『残ればよかった』と思えるくらいの会社にはしていきたい」。飾らない言葉の中に、仲間を大切にする経営者としての矜持がにじみ出ていました。
北海道から1人で乗り込み、人との縁を丁寧に結びながら現場で腕を磨いてきた齊藤社長。シーリング工事という専門分野で積み上げてきた信頼は、これからの大樹をしっかりと支えていくはずです。
【プロフィール】
会社名:株式会社大樹
代表者:齊藤 貴
所在地:千葉県市川市福栄1-9-21-705
主な事業:シーリング工事(コーキング工事)
創業:平成16年(2004年)
従業員数:3名(社員)+外注スタッフ
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取材を通じて印象的だったのは、齊藤社長の「人への誠実さ」でした。派手なビジョンよりも、目の前の仲間が「選んでよかった」と思える会社をつくりたいという姿勢。その積み重ねこそが、20年間リピーターが途切れない実績を生んできたのだと感じました。