🏗️ なぜ17歳で現場に立ったのか?大工一家が生んだ「天職」との出会い
阿部代表の家系は、ひいおじいさんの代から大工を生業としてきた。父親もパナソニック系の施工会社で軽量鉄骨を専門とする職人。幼いころから土日や休日には父の現場に連れられ、工事現場で水を打ったり道具に触れたりして育った。「仕事は何をするか」と考えたとき、「大工しかなかった」と断言するほど、この世界は自分にとって当たり前の選択肢だった。
17歳で父親のもとへ弟子入りし、軽量鉄骨の現場で5年間の修行を積んだ。「一人前になった」と感じると今度は木造の別の親方のもとへ移り、さらに2年間修行した。木造・軽量鉄骨・ツーバイ工法まで習得できる大工は業界でも珍しく、2人の親方のもとで腕を磨いたことが、後の強みへとつながっていく。
24歳で個人事業主として独立。「満を持して独立するのが30代が一般的」という業界で、「誰よりもきれいに収められる自信があった」という自信と、「大工は営業しないから、自分が営業できれば勝てる」という冷静な分析が後押しした。年齢への不安よりも、業界を俯瞰した戦略思考が阿部代表を独立へと駆り立てた。若さゆえに顧客先から「本当にできるのか」と言われることもあったが、「最終的にはよかったと感謝される仕事」という手応えを積み重ね、法人として株式会社佑建築を設立した。
🔧 うちにしかできないこと──現場が語る強みとは?
株式会社佑建築の強みは、複数工法に対応できる技術力だけではない。「選ばれている理由は何か」と問われた阿部代表が最初に口にしたのは「勢い」という言葉だった。若いチームが持つ熱量、フラットな社風、そして経営者自身がのびのびと働ける環境を追求する姿勢が、協力会社やクライアントを引き寄せている。
働く環境も際立っている。勤務時間は9時〜17時、残業ゼロを徹底。土日祝日が休みでありながら、業界平均の倍ほどの給与水準を実現している。有給休暇やボーナス(年3回)など福利厚生も充実しており、離職率はゼロだ。「いい仕事しか取らない」という方針が、短い労働時間でも高い報酬を支払える仕組みを生んでいる。
さらに、同社は材木の小売業も手がけており、自社工事で使用する材料を内部在庫として確保している。外部調達に頼らず材料の安定供給と利益率の調整を自前でコントロールできる体制は、中小建設業にとって大きなリスクヘッジだ。建設と材木が循環しているこのモデルは、「大工業界で仕事が切れるとしたら最後」と阿部代表が自負するほどの底力を持っている。
採用においても「クリエイティブな雰囲気を持つ人」「友達になれそうな人」という独自の眼力で選抜。30〜40名の応募者から4名しか採用しないという厳しい基準も、「できない人を増やしてもしょうがない」という信念の表れだ。
⚠️ 人手不足・職人の高齢化…課題だらけの建設業で、どう動くか?
中小建設業にとって最大の悩みのひとつが人材確保だ。阿部代表は業界課題として「職人が少なく、業界のイメージが悪い」ことをはっきりと挙げる。「汚い・きつい・危険」という先入観が若者の参入を妨げているが、実態は「奥が深く、極めるほど面白くなる仕事」だと語る。現に同社のスタッフは「趣味の延長線上で稼いでいる感覚」と話すほど仕事を楽しんでいるという。
また、建設業界の「大工が偉い」という縦社会的な慣習にも問題提起している。阿部代表は「大工が一番偉いわけではない」ことを社内で徹底教育。電気屋、設備屋、タイル職人も全員フラットに扱い、現場では職種を超えて笑いながら仕事ができる空気をつくっている。「お互い言いたいことを言わないといいものはできない」という信念のもと、遠慮のない議論を積み重ねることが品質向上への道だと考えている。
次のフェーズとして阿部代表が掲げるのは「管理会社兼大工」というモデルだ。大工が現場の納まりを管理しながら、事務系の管理も担う体制を構築しようとしている。また、自社で不動産物件を取得し、修繕を内製化することでコストを圧縮する取り組みも進行中だ。「全部一貫してやる会社がない」という業界の空白を埋めようとする動きは、若き経営者ならではの視野の広さを示している。
🌱 「大工といえばこの会社」──10年後のビジョンと次世代へのメッセージ
阿部代表の長期ビジョンは明快だ。「全国で大工の会社として最大規模は30名弱。まずそこを超えて、関東圏を網羅できる会社にしたい。そして最終的には、大工といえば株式会社佑建築という状態にしたい」。業界全体が縮小傾向にあるからこそ、生き残り、強くなることに集中する。直近5年の目標は、さらに10名の職人を育て上げることだ。
建設業を目指す若者へのメッセージとして、阿部代表はこう語る。「大工は地域も国も関係なく、どこでも稼げる仕事。自分が行きたい場所で働ける、自由度の高い職種だ。一つのことを極めたい人、体を動かすのが好きな人には本当に向いている。泥臭い仕事というイメージがあるかもしれないが、それを超えるほど魅力のある世界だ」と。
さらに「うちに入って大阪や福岡に住みたいという希望があれば、自分が営業してその地で働ける体制を作るから相談してほしい」とも付け加えた。職人の働く場所や人生の選択肢を広げること自体も、阿部代表の使命になっている。
年を取った職人が無理なく働き続けられる仕組みも視野に入れており、自社物件の修繕をベテラン大工に担ってもらうシステムも検討中だ。一人の職人のキャリアを、入職から引退まで丸ごと支える会社を目指している。
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取材を通じて感じたのは、阿部社長の「業界を変える」という言葉の重さだった。単なる職人気質ではなく、経営戦略として人材・材木・不動産を一気通貫で捉える発想は、30歳とは思えない視座の高さだ。「楽しい現場を作ること」が、業界全体の未来につながっている。