🏗️ なぜ建設業を選んだのか?ピンチから生まれた新たな出発点
有限会社ネクストホームは平成16年9月の創業以来、いわき市を拠点に小さな平屋をメインとした注文住宅やリフォーム工事を手がけてきた。地域に根づいた丁寧な仕事ぶりで実績を積み上げてきたが、その経営環境は年々厳しさを増していった。
「新築リフォームって形だったんです。でも、震災特需みたいなのがあったんですけど、全くそれは終わっちゃった感じです」
東日本大震災後の復興需要が落ち着いたところへ、建築費の高騰が追い打ちをかけた。「普通のサラリーマンでは土地を買って注文住宅っていうのは無理な金額になりつつあって」という状況に加え、大手ハウスメーカーの参入もあり、小規模な工務店にとっての受注環境は悪化の一途をたどった。コロナ禍にも重なり、仕事がほとんどない時期が続いた。
「本当に会社を畳んじゃうか、どうするかぐらいまで考えてたんで」
中小建設業にとって、こうした環境の変化はまさに他人事ではない。長年培ってきた技術や信頼があっても、市場の変化には抗えない場面がある。大森社長が踏みとどまれたのは、20年来の知人からの一本の電話がきっかけだった。
🔧 うちにしかできないこと──トレーラーホテル制作という専門技術
転機は昨年のことだ。賃貸マンションのフランチャイズ事業で国内トップクラスの実績を持つ知人企業から、「制作が間に合わなくて、工場がパンク状態なので手伝ってほしい」という依頼が舞い込んだ。
トレーラーホテルとは、車両に相当する移動可能な構造体をベースに、ツーバイフォー工法でユニットバス・キッチン・洗濯機などを備えた宿泊施設として仕上げたものだ。建築物ではなく「車両」として扱われるため、農地を除く調整区域にも設置できるという法的な柔軟性が大きな特徴だ。またL字型に拡張できるタイプもあり、必要に応じて移設も可能。「災害の時の仮設住宅みたいな売り込みもしている」と大森社長は話す。
「去年の暮れぐらいからですね。半年ぐらいですが、今まで15台くらい制作しました」
知人企業からの依頼で制作を始めた同社は、全国でも数少ないトレーラーホテル制作事業者として実績を積みつつある。現在は4台を1か月かからずに出荷できる体制を整えており、「もっと早くなると思います」と技術向上への手応えも感じている。材料は元請けから支給される形にしたことで、昨今の資材高騰リスクも最小化している。
⚠️ 人手不足・受注超過・規制リスク…課題だらけでも「やれるだけやる」
中小建設業にとって慢性的な課題である人手不足。ネクストホームも例外ではない。現在は社長を含む3名の体制で、職人は外注の協力会社に依頼している。70代・40代・20代という世代をまたいだ職人チームで制作を進めているが、大森社長は「今は作るのでいっぱいいっぱい」と正直に語る。
一棟あたりの売上は約100万円ほど。月4棟こなせれば安定するという計算だが、依頼は断らなければならないほど来ており、むしろ人材育成のスピードが事業拡大のボトルネックになっている。「まだちょっと甘いところがあって。やっぱり一般住宅と違うんで」と、新ジャンルならではの習熟には時間がかかると率直に述べた。
一方で将来的なリスクについても冷静に見ている。急速に普及すれば、ソーラーパネルのように規制が入る可能性もゼロではないという認識だ。
「行けるうちに行きつつ、限度を考えながらっていう感じ。いつでもスパッとやめられる体制だけは取っておきたい」
赤字を抱えて身動きが取れなくなる前に引けるよう、常に身軽な経営を心がける姿勢は、中小建設業の経営者としての現実的な知恵とも言えるだろう。
🌱 10年後のビジョン──「制作」から「運営」へ、次のステージへの挑戦
今年62歳を迎える大森社長が描くビジョンは、制作の下請けにとどまらず、最終的にはトレーラーホテルの運営側に回ることだ。制作で資金を蓄え、土地を探して自社物件を保有し、管理人としてホテルを運営していく──というステップを思い描いている。
「土地を探して売ってもらって、さらには運営まで行きたいなという。まあ夢だけですけれどね。とりあえずちゃんとしたの作んないとしょうがないんで」
チェックインもチェックアウトもスマホ完結で管理コストが抑えられるトレーラーホテルは、田舎にも設置でき、稼働率も高いという。「固定収入がない」という建設業の宿命的な課題を、不動産運営という収益モデルで補っていこうという発想だ。
今年の目標は年間100棟の制作体制を整えること。まずは20代の若い職人を一人前に育て上げ、来年以降に台数を増やす計画だ。元請けの知人企業からは、自社サイトでのPRや独自受注も承認を得ており、「ガンガン出したい」という意欲は満ちている。
「ある程度利益を持って、また別の職種にぽっと変えられるみたいな体制だけは取っときたい。やれるだけやっちゃおうって感じ」
現実を見据えながらも、夢を諦めない。そのバランス感覚こそが、逆境を乗り越えてきた大森社長の流儀だ。
建設円陣PLUSでは、建設業の経営者インタビューを無料で行っています。
掲載記事はそのまま採用・営業PRにもご活用いただけます。
▶ 取材のお申し込みはこちら
費用は一切かかりません | 取材時間の目安:約30分~1時間
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。












取材を通じて感じたのは、大森社長の「現実直視と夢の両立」でした。廃業も考えた苦境から、希少な新市場に踏み込んだ行動力。「いつでもやめられる体制」を口にしながらも、その目は確かに運営という次のステージを見つめていました。