🏗️ なぜ建設業を選んだのか?父の背中と、19歳の決断
有限会社丸忠建設は、忠津代表の父が創業した会社だ。高校を卒業した忠津氏は、最初の一年間はまったく別の仕事に就いていた。しかし19歳のとき、父が病気で倒れるという出来事が、人生の転機をもたらす。
「もともと親父がしよったんで、後を継いだっていう形ですね。19歳のときに倒れて、ちょうどその時に家の仕事が面白そうやなっていうのがなんとなくあって。まあ素人からやけど、とりあえず手伝うわっていう形で入りました」
自ら志願したのか、と聞けば「自分から言うのはちょっと恥ずかしかった」と苦笑しつつも、タイミングが背中を押したのは間違いない。それから約20年以上、この仕事を続けてきた。
中小建設業にとって、二代目として会社を引き継ぐ場面は珍しくない。忠津代表もまた、迷いながらも現場に飛び込んだ一人だ。そして今、自分の選択を振り返ってこう言う。「この仕事に入ってよかったなと思います。壊す方が向いとるんだと思うんですよ。子供の頃からおもちゃは分解できるけど、元に戻せたことはないし、プラモデルも作れんかったし」と笑って話す言葉には、現場への素直な適性と愛着が滲む。
🔧 うちにしかできないこと──「丁寧さ」が生む信頼の連鎖
丸忠建設の強みを一言で表すなら、「丁寧さ」に尽きる。忠津代表は「丁寧さはあるかなと思ってます。まあ自分の中では使命のつもり」と、静かな自信をのぞかせる。
解体工事は、新築や改修と違い「なくなっていくもの」を扱う仕事だ。コストを抑えたいという施主の気持ちは理解しつつも、「こっちも人件費になったり、分別解体から始まっていろいろあるし、やっぱりある程度費用もいる」と、仕事の質を守ることに一切の妥協はない。
特に意識しているのが、近隣住民への配慮だ。解体工事は騒音や粉じんが発生しやすく、周辺への影響が避けられない。「近隣住民に配慮しながら、そこら辺は十分気をつけてしようけんな」という言葉は、単なる建前ではなく現場での実践に裏打ちされたものだ。
そして仕事の受注は、ほぼ口コミと紹介によるものだという。不動産会社やハウスメーカーからの依頼に加え、「ほとんどが口コミ、紹介とかが多い」と話す。驚くべきは、専任の営業担当者が一人もいないにもかかわらず、20年以上にわたってこのスタイルを貫いてきたことだ。丁寧な仕事が信頼を生み、信頼が紹介につながり、また次の仕事へ──。この好循環こそが、丸忠建設の最大の強みと言えるだろう。
⚠️ 少人数・民間特化──中小解体業が直面するリアルな課題
現在の従業員数は5名(取材時点)で、まもなく6人目が加わる予定だ。さらに繁忙期には外注として3名程度の応援を受け入れながら現場を回している。中小建設業にとって、人員のやりくりは常に頭を悩ませる課題であり、丸忠建設も例外ではない。
「受注量によるよね。まずは仕事とらなあかんし」と忠津代表は言う。求人についても、建設エンジンや新聞への掲載を通じて募集を続けているが、単純に人数を増やせばいいわけではないことも正直に明かす。
仕事の中心は民間工事であり、公共事業も請け負いつつ、「民間の人の方がいろんな話もできるし、こっちの方が僕的にも肌に合う」という。民間工事は工期の読みにくさや価格交渉など独自の難しさもある一方、施主と直接コミュニケーションが取れる人間的なやりとりが、代表にとっての醍醐味でもある。
「民間工事でお客さんと一番近くで話ができる。『綺麗になったな』って言ってくれたら嬉しいよね」──重機で建物を壊し、更地になった瞬間の達成感と、施主の喜びの声。これが仕事を続ける原動力になっている。
数を増やすより「待ってくれる質のいいお客様」を大切にするスタイルは、小さな会社だからこそ実現できる強みでもある。
🌱 10年後のビジョン──「細く長く、地域に知ってもらえる会社に」
「でっかい夢はないんやけど」と、忠津代表は笑いながら切り出す。急成長や多店舗展開よりも、地域の中で長く続く会社でありたいという思いが根底にある。
大手のように規模を追うのではなく、地域の人が困ったときに真っ先に思い浮かべてもらえる存在になりたい。そんな忠津代表の地に足のついた経営哲学が、この会社の軸となっている。
採用においても、「できたら若い人に来てほしい」と話し、長期的に会社を支えてくれる仲間を求めている。職場の雰囲気は良好で、連休前には全員でご飯に行ったり、ゴールデンウィーク前にはバーベキューを楽しんだりと、少人数だからこそできるアットホームな関係が根付いている。「みんなに楽しく仕事してくれたらいいかなと思って」という一言に、代表の人柄が凝縮されている。
中小建設業にとって、「細く長く続ける」ことは、決して小さな夢ではない。地域に必要とされ、信頼を積み重ね、次の世代へつないでいく。その誠実な姿勢こそが、丸忠建設の揺るぎない土台となっている。
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取材を通じて感じたのは、忠津代表の「派手さより誠実さ」への一貫したこだわりでした。口コミだけで40年以上続いてきた事実が、その姿勢を何より雄弁に物語っています。