🔨 茨城県鉾田市で昭和42年から続く株式会社江沼鑿泉。さく井工事と管工事を手がけ、地中深くから安全な水を掘り当てる、地域に欠かせない仕事を担っている。二代目・江沼勝美氏と、三代目を担う息子の和也氏。親子で現場に立ち、先代から受け継いだ膨大なデータと確かな技術で信頼を積み重ねてきた。「水で困っている人の力になりたい」という一貫した想いを、二人に伺った。
🏗️ なぜ家業を継いだのか?三代でつなぐ井戸の仕事
株式会社江沼鑿泉の創業は昭和42年。先代である勝美氏の父が、井戸の工事を手がけたところから始まった。勝美氏は、その二代目にあたる。 「子供の頃から、現場は親父についてあるってたんで」と勝美氏は振り返る。幼い頃から父の現場に同行し、最初は二人三脚でこの仕事を覚えていった。 その後、さまざまな経験を重ねる時期もあったが、やはり家業への思いは消えなかった。「戻って親父と一緒にやれば違うな、っていうような感覚だよね」と、再び井戸の道へと戻り、本格的に会社を背負うこととなった。
三代目を担う和也氏(33歳)も、同じ想いを抱いている。「やっぱり一番は、家業をずっと続けていきたいなっていう」と語る。先代が立ち上げ、父が守ってきたものを、自分の代でも絶やさず受け継いでいきたい——その思いは強い。 入社前には設備会社で一年ほど学んだ時期もあったが、「やっぱり家の方の仕事がしたいっていう強い思いがあった」と戻ってきた。小さい頃から見続けてきた仕事への憧れが、その原動力になっている。
🔧 地中は掘ってみるまで分からない──強みは「データ」と「誠実さ」
さく井工事は、目に見えない地中を相手にする仕事である。「井戸工事の場合は、とにかく見えないところの仕事だから。穴を掘ってみないと分からないことだから」と勝美氏。だからこそ、近隣のデータと照らし合わせ、いかに安全な水を掘り当てるかが腕の見せどころとなる。 ここで大きな強みとなるのが、先代から続く膨大な施工データの蓄積である。一本ずつ掘り終えた井戸を図面に残し、次の現場の判断材料とする。
「きっちり、その一本ずつ終わったやつを図面で残して」と、誠実な記録の積み重ねが精度を支えている。 かつては手書きのノートだった記録も、勝美氏の代で図面ソフトへと移行。地図上で過去の施工場所が一目で分かるようになり、「あ、ここ掘ったね、っていうのはすぐ分かるから」と業務は大きく効率化された。 何より大切にしているのは、お客様の喜びだ。「水が出たあとに、やっぱり喜んでもらえる」と和也氏。水を一から生み出す仕事だからこそ、その満足が次の信頼へとつながっていく。掘りっぱなしにせず、ポンプの不具合や配管トラブルにも丁寧に対応するアフターサービスの姿勢が、多くのリピーターと口コミを生んでいる。
⚠️ 自然が相手、受注にも波──さく井業ならではの課題とは
中小建設業にとって、自然を相手にする難しさは大きな課題である。井戸は掘ってみるまで水が出るか分からず、初めての土地では周辺の状況を丁寧に調べることから始まる。「初めて行った所は、周りのお宅を一軒一軒あたって聞く」と勝美氏。地道な聞き込みが、確かな施工の土台となっている。 だからこそ、過去のデータがあるかどうかが命綱となる。「今までのうちのデータがない所は、簡単に見積もりなんか出せない」長年積み上げた記録こそが、同社の最大の財産なのだ。
もう一つの課題は、受注の波である。井戸の需要は時期によって変動が大きく、特に暑さの厳しい夏場には依頼が集中する。「夏場暑いと、やっぱりみんな水を欲しがるからね」既存設備の不調による修理依頼も重なり、繁忙期と閑散期の差をどう平準化していくかが、同社の取り組むべきテーマとなっている。 地域柄、鉾田周辺は砂地が多く、農家のビニールハウス向けの需要が中心だ。地盤に応じてパーカッション式とエアハンマー式の工法を使い分け、現場ごとに最適な方法を選ぶ。こうした柔軟な判断もまた、長年の経験があってこそである。
🌱 水で困る人の力になりたい──三代目へつなぐ未来
今後の展望について、勝美氏は「もう少し伸びれれば、従業員も欲しいよね」と語る。まずは依頼を着実に増やし、その先に体制の拡充を見据える。一歩ずつ成長していく、堅実な歩みである。 和也氏も「井戸を掘る方が増えるのが一番いいこと」と、前向きに未来を描く。受注が増えれば人手も必要になり、会社としての広がりにもつながっていく。三代にわたって守り継いできた家業を、さらに先へとつないでいきたいという思いがにじむ。
最後に、地域への想いを尋ねた。「とにかく、水回りで困ってる人がいれば、どんなことでもうちはやってるんで。すぐ見に行ってあげるのが基本だよね」と勝美氏。配管の相談から井戸のトラブルまで、まずは駆けつけることを信条としてきた。 和也氏も「プロとしてやってるんで、分からないことがあったら相談してくれれば」と続ける。見積もりは無料。水で困っている人の力になりたいという一貫した姿勢こそ、三代続く江沼鑿泉の原点である。
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📝 編集部コメント
取材を通じて感じたのは、勝美氏と和也氏に共通する「安全な水を、確実に届ける」という誠実さだった。見えない地中を相手に、先代から続くデータと経験を一本ずつ積み重ねる。その堅実な姿勢こそが、三代続く信頼の源だと強く感じた取材であった。