🌲 群馬県利根郡片品村を拠点に、伐採・草刈り・薪販売など森林管理を幅広く手がける株式会社千明造林。代表の千明俊和氏は24歳から林業の世界に入り、40年以上にわたって山と向き合ってきた職人だ。🪓 国有林の仕事から個人宅の庭木伐採まで、地域の"山のこと"をまるごと引き受けるその姿勢と、コスト上昇が続く業界でどう前進するかを語ってもらった。
🏗️ なぜ林業を選んだのか?24歳から始まった山との40年
千明代表が林業に本格的に入ったのは24歳、結婚がきっかけだった。妻のおじが尾瀬ヶ原の木道工事をメインに手がけており、そこで仕事を始めたのが出発点だ。
「木道はもうなんだかんだ40年ぐらいやってるね。木道とか階段とか。ヘリでポイントポイントに材を運んで、測って設置するんですけど」 この木道工事は今も年間約2か月、山に泊まり込みで行う大仕事として続いている。学生時代からアルバイトで草刈りを経験しており、山の仕事への素地は若いころから備わっていた。
2019年、長年おじのもとで技を磨きながら個人でも仕事を受けてきた千明氏は、ついに法人化を決断する。決め手となったのは、国有林の仕事を受けるための条件だった。「森林組合さんが入札で国有林の仕事を取って、組合員で分担してやってるんですけど、会社にして社会保険に入れないとその仕事に入れないんで」——仲間とともに仕事をするために、法人という形を選んだ。 現在、社長を含め10名体制(うちインドネシアからの技能実習生4名)で日々の現場をこなしている。
🔧 うちにしかできないこと──特殊伐採と地域密着が生む信頼
千明造林の強みは、一般の業者では対応が難しい特殊伐採と、40年積み上げた地域への信頼にある。 住宅脇に根を張る大木や、傾斜地・狭小地の危険木など、重機が入れない現場では「空師(そらし)」と呼ばれる職人の出番だ。木に登り、上からロープで枝や幹を少しずつ下ろしながら伐採していくこの作業は、熟練した技術と経験がなければできない。
「やっぱり特殊伐採になっちゃうんですよ。金額はちょっと高いけど、家の脇にある木は登っていかないといけないんで」と千明代表は語る。 危険度の高い現場には、今も代表自ら赴く。「危ないクレーン伐採や特殊伐採はまだ私が行きます。従業員もできない場合があるし、危ないところは私が行って」——社員を守る覚悟が、その言葉に滲む。 仕事の守備範囲は幅広い。国有林の間伐から個人宅の庭木処理、薪販売、カメムシ対策の外壁薬剤散布、害獣(鹿・猪など)による農地荒らしへの下刈り対応まで、地域の"山のこと"は断らない。
「対応していないということはないね」という言葉通り、地域のオールラウンダーとして機能している。 また地元住民への対応は"地元価格"が基本だ。片品村では個人宅の山の整備に村から20万円の補助金が出る制度があり、「この辺の部落の知ってる人だからかわいそうだから、何とか20万で抑えてやるようにしてる」という。中小建設業にとっても、地域への気遣いが長期的な信頼につながる好例だ。
⚠️ 産廃費・重機リースの値上がり…コスト上昇に現場はどう立ち向かうか
中小の林業・建設業が直面するコスト上昇の波は、千明造林も例外ではない。 伐採後の廃材(薪に加工できない細い枝や根など)は産廃業者に持ち込むが、その費用が高止まりしている。
「キロ18円から20円が一番安い業者で、付き合ってる業者だと30円取られる。10円違うと本当にすごい」——1現場で5〜10トン出れば、処理費の差だけで数万円規模になる。 さらに、重機のリース料も直近で約20%の値上がりが決まっている。グラップル(木を挟んで切る重機)やダンプは月の半分以上稼働しており、この値上がりは年間で無視できない額になる。 こうした課題に対し、千明代表が力を入れているのが薪販売の拡大だ。伐採で出た木材を薪に加工し、地域のキャンプ場やスキー場に卸すことで廃材コストを圧縮しながら収益を生む。
「スキー場のキャンプ場に1,000束納めてるんですけど、大きなお客様です」——アウトドアブームを追い風に、この流れをさらに伸ばす考えだ。個人向け直接販売の比率も現状の約2割から引き上げ、組合を介さない分だけ顧客へのコスト還元と自社利益の両立を目指している。
🌱 70歳まで現場へ──仲間を育て、地域とともに山を守り続ける
「とりあえず70を目処にしてる。現場に出るのはね」——千明代表の言葉には、体力が続く限り現場に立ち続ける職人の矜持がある。70歳以降は立案・見積もりなど経営サポートに軸足を移しながら、体調次第で現場にも関わる考えだ。 最近は従業員の腕も確実に上がってきており、「みんな腕が良くなってきたんで」と千明代表は目を細める。危険度の高い判断が必要な場面は代表が指示を出し、実作業は経験を積んだ仲間が担う——そうした役割分担が少しずつ定着してきた。
「社長がいるとやりづらい面もあるから、あんまりずっといてもかわいそうだから」とあえて現場を任せる場面も増えてきたという。 片品村で生まれ育ち、この地の山で40年以上働いてきた千明代表にとって、地域を守ることと仕事を続けることは同義だ。「なるべく地域の人には安くやってやろうかなと思って」——その一言に、変わらない千明造林の姿勢が凝縮されている。
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📝 編集部コメント
取材を通じて感じたのは、千明代表の「地域の山を自分が守る」という揺るぎない使命感でした。危険な現場には自ら入り、地元の人には地元価格で応える——40年のキャリアが育てた誠実さが、片品村の山林を支えている。