記事を読み込み中です
建設現場では、たった一言の指示が作業の出来栄えを左右する。ところが実際には、指示した側の意図と受け手の理解がかみ合わない場面が日常的に起きている。「ちょっと見ておいて」「うまくやっといて」——こうした曖昧な言葉が積み重なると、やがて手戻りや品質不良、ときには労働災害にまでつながる。
本記事では、現場で起こりがちな指示のすれ違いのパターンを整理し、中小建設業の現場監督や職人が今日から取り組める改善策を紹介する。
指示のすれ違いでよく見られるのが、行動の中身が抜け落ちた指示だ。「見ておいて」と言われても、目で確認するだけでいいのか、結果を記録するのか、問題があれば直すのか、誰かに報告するのか、受け手には判断がつかない。指示した側は「何かあれば対処してくれると思っていた」と言い、受けた側は「見るだけでいいと思った」と言う。このズレが、見逃しや手戻りの温床になる。
「あとで」「適当に」「いい感じに」も同じだ。期限や仕上がりの基準が、言葉のどこにも含まれていない。長年同じ顔ぶれで仕事をしてきた職人同士なら暗黙の基準が通じることもあるが、新人や初めて入る協力会社の作業員には通じない。業種も世代も経歴も異なる人が同じ現場で働く以上、「言わなくてもわかるだろう」という前提は最初から成り立たない。
※画像はイメージです
たとえば、浴室まわりの内装工事で、現場監督が若手作業員に「あの壁、ちょっと見ておいて」と声をかけたとする。監督の頭にあったのは「防水シートの継ぎ目や端部に浮き・破れがないかを確認し、問題があれば報告してほしい」という意図だった。
しかし作業員は「ざっと見ればいい」と受け取り、表面を一瞥しただけで次の作業に移ってしまう。不具合はそのままボードで覆われ、後になって漏水が見つかれば、壁を部分的に解体してやり直すことになる。工期にもコストにも大きな負担だ。
もう一つは、複数の職人で足場の解体を分担する場面だ。「そっちが終わったら片付けといて」と言われた職人は資材の搬出を済ませたが、撤去後の床面に残った部材や段差の確認は「誰かがやるだろう」と思っていた。実際には誰の担当にもなっておらず、翌朝、別の作業員が残材につまずいて転倒する——。
原因は個人の不注意ではなく、指示に「誰が・何を・どこまでやるか」が含まれていなかったことにある。
すれ違いが起きても、「指示の出し方に問題があった」と振り返られることは少ない。小さなトラブルは「確認不足」「気が利かない」といった受け手個人の問題として片付けられ、指示そのものは見直されないまま次の現場へ進んでいく。これが繰り返されるうちに、曖昧な指示が組織の当たり前として定着してしまう。
中小建設業では、現場監督が複数の現場を掛け持ちしたり、施工管理と実作業を兼ねたりすることも珍しくない。時間に追われていると、指示を丁寧に言葉にするより「とにかく動いてもらう」ことが優先されがちだ。
しかし、その手短な指示が後工程の手戻りを生み、結果として全体の手間を増やしてしまう。急いでいるときほど、指示の一言を惜しまないことが近道になる。
1つ目は、「何を・どこまで・問題があったらどうするか」の3点を言葉にすることだ。5W1H(誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どうやって)を毎回すべて伝える必要はないが、この3点がそろうだけで、すれ違いの多くは防げる。先ほどの「ちょっと見ておいて」なら、「北側の壁の防水シート、継ぎ目の重ねとテープの浮き・破れを端から端まで見て。おかしいところがあったら写真を撮って俺に報告して」と言い換えられる。
2つ目は、指示を受けたら復唱する習慣だ。受け手が内容を自分の言葉で繰り返すことで、理解のズレがその場で表に出る。建設現場ではKY活動や指差し呼称がすでに根付いているが、同じ考え方を日々の作業指示にも広げればよい。「いちいち面倒だ」と感じるベテランがいても、「ミスを防ぐための現場のルール」としてチーム全体で決めてしまえば、個人の好き嫌いの問題ではなくなる。
3つ目は、作業分担の見える化だ。朝礼やTBM(ツールボックスミーティング)で担当を確認したうえで、ホワイトボードや簡易チェックシートに書き出しておく。工程・指示・写真記録をスマートフォンで共有できる施工管理アプリを使うのも有効だ。口頭だけで終わらせない仕組みがあれば、「聞いていない」「言った・言わない」の行き違いは根本から減っていく。
4つ目は、受け手が質問しやすい雰囲気をつくることだ。「わからなければ聞け」と言われても、新人や外部の作業員は遠慮して聞けないことが多い。指示の最後に「わからないところはあるか?」と一言添えるだけで、相手はぐっと質問しやすくなる。疑問や不安を安心して口に出せる状態、いわゆる「心理的安全性」のあるチームでは、すれ違いが小さいうちに見つかる。
※画像はイメージです
「ちょっと見ておいて」という一言に悪意はない。それでも、受け手との間にズレがあれば、手戻りや事故、人間関係のこじれにつながりかねない。指示の精度を上げることは、職人の技術を磨くことと同じくらい、現場の品質と安全、そして会社の利益に直結する。
まずは明日の朝礼で、自分がいつも使っている指示の言葉を一つ見直すところから始めてみてほしい。
指示のすれ違いが減れば、信頼できる協力会社との連携がさらに重要になります。チームを広げ、安定した受発注体制を整えるために、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
➡関連記事:協力会社が見つからない?中小建設会社が頼れる職人を確保する実践的な方法
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。