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建設・インフラ業界では、長年現場を支えてきた熟練技術者の引退が相次ぐ一方、その経験や勘をどう若手に引き継ぐかが大きな課題となっている。マニュアルには書ききれない「どこを見るか」「なぜその判断をするか」といった暗黙知は、属人的な形で蓄積されやすく、組織としての再利用が難しいのが実情だ。
こうした中、福岡市と地元スタートアップが手を組んだ新しい取り組みが始まった。
株式会社クアンド(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:下岡純一郎)は、福岡市との協定締結を発表した。
『株式会社クアンド(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:下岡 純一郎、以下「クアンド」)は、福岡市と「熟練技術者の属人的なスキルの抽出可視化による若手層への技術継承に係る実証実験」に関する協定を締結し、2026年10月より実証プロジェクトを開始しました。』
引用元:株式会社クアンドプレスリリース(PR TIMES掲載)
本実証では、福岡市道路下水道局の協力のもと、市内関連事業者のインフラ施設を実証フィールドとして、現場向け遠隔支援サービス「SynQ Remote(シンクリモート)」が活用される。マンホールポンプ場で故障や異常が発生した際、現場担当者が操作盤や故障表示を映像で共有し、遠隔地の熟練技術者が確認箇所や復旧手順を助言・指示する仕組みだ。
その際に交わされる会話や判断内容を映像・音声・AI議事録として記録・整理し、対応後の報告業務の効率化と、若手技術者への教育ナレッジ化を同時に目指す。
下水道をはじめとするインフラ現場では、設備の状態や操作盤の表示、周辺環境、過去の対応履歴などを踏まえた的確な判断が常に求められる。しかし、こうした判断の多くは熟練技術者が長年の経験を通じて身につけた知見に支えられており、異常発生時の確認箇所や若手が見落としやすいポイントなどは、マニュアルだけでは伝えきれない暗黙知として個人に蓄積されやすい傾向がある。
加えて、技術者不足が進む中でベテラン技術者には現場対応、確認、判断、若手育成の役割が集中しやすくなっている。限られた人員で複数の現場を品質高く運営するためには、熟練者が現場に同行し続けるだけでなく、現場での判断や指導内容を記録し、組織で再利用できる仕組みづくりが求められている。
実証テーマは「熟練技術者の属人的なスキルの抽出可視化による若手層への技術継承」。実証期間は2026年10月から2027年3月31日まで、実証フィールドは福岡市道路下水道局の協力による市内関連事業者のインフラ施設で、活用サービスはSynQ Remote(シンクリモート)である。
検証ポイントは大きく3つに整理されている。
1つ目は、緊急・異常対応時の判断経緯を時系列で記録できるかという点だ。マンホールポンプ場などで故障や異常が発生した際、現場の若手技術者や協力会社が故障表示や操作盤、設備の状態を映像で共有し、遠隔地の熟練技術者が状況を確認しながら必要な操作や確認箇所を指示する。このやり取りをAI議事録として記録し、復旧後の報告や振り返り、類似事象が発生した際の対応ナレッジとして活用できるかを確かめる。
2つ目は、熟練技術者の確認ポイントや勘所を若手が学べる形に整理できるかという点である。会話や指導内容を記録し、若手技術者が事前学習や振り返り、類似作業の確認資料として活用できる環境づくりを目指す。
3つ目は、記録整理や報告書作成にかかる事務負担を削減できるかという点だ。AIによる話者分離、写真・録画との紐付け、報告書作成支援により、現場対応時の記録を整理しやすくする効果を検証する。
引用元:株式会社クアンドプレスリリース(PR TIMES掲載)
クアンドは、本実証で得られた知見をもとに、福岡市や市内関連事業者と連携しながら、熟練技術者の確認・指示や判断を現場で再利用しやすい手順書や教育コンテンツへ展開する仕組みづくりを進めるとしている。若手技術者が現場で迷いを抱え込まず、その場で質問・確認しながら前に進める環境づくりを支援し、熟練技術者が遠隔で状況を把握して必要な指示を素早く届けられる運用を検証することで、若手育成とベテラン技術者の負担軽減の両立を目指す方針だ。
代表取締役社長の下岡純一郎氏はコメントの中で、現場の品質と安全を支える熟練者の知見が日々の対応の中に埋もれやすく、若手への体系的な継承が難しいという課題を挙げたうえで、今回の実証を通じて知見を次世代につなぐ仕組みづくりに取り組む考えを示している。
こうした遠隔支援とAI記録の組み合わせは、インフラ事業者に限らず、慢性的な人手不足と技術継承の課題を抱える中小建設業者にとっても参考になる取り組みだ。熟練者が現場に張り付かなくても若手を支援できる体制は、複数現場を少人数で回す必要がある会社にとって現実的な選択肢になり得る。
熟練技術者の経験と勘は、現場の品質と安全を支える貴重な資産でありながら、これまで個人の中に埋もれがちだった。福岡市とクアンドの実証実験は、その知見を記録し組織に残す仕組みづくりの一つのモデルケースとなりそうだ。今後の検証結果が、インフラ業界だけでなく建設業界全体の技術継承のあり方にも一石を投じることが期待される。
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