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塗装の現場に入ったばかりの新人が、一度はこんなことを思うはずです。「今日こそ塗れる!」と意気込んで現場に来たのに、気づいたら一日中マスキングテープを貼っていた——。そんな「塗装新人あるある」に、心当たりはありませんか。
今回は、塗る前の準備作業=養生に込められた意味を、笑いを交えながらひも解いていきます。
入職して最初の現場。先輩から渡されたのはハケでもローラーでもなく、マスキングテープとブルーシート。「塗装職人」として採用されたのに、まず覚えるのは養生の貼り方です。
窓枠の四隅をぴったり合わせ、外壁の際(きわ)を丁寧にカバーし、床や植木もしっかり保護する。やってみると意外と奥が深く、「これ、ちゃんとした技術じゃないか…」と気づくのが二週間後、というのが塗装新人の典型的なコースです。
「養生さえ終われば塗れる」という認識でいると、次に待っているのが下地処理(下地処理とは:塗装前に旧塗膜の劣化部分を削ったり、クラックを補修したりして表面を整える工程)です。ケレン(ケレンとは:さびや旧塗膜を削り落とし、塗料の密着性を高める研磨作業)、パテ埋め、プライマー塗布——と続く工程を見て、「まだ塗れないんですか?」と天を仰いだ新人は全国に数え切れないほどいます。
※画像はイメージです
先輩職人が養生や下地処理に時間をかけるのは、「丁寧な性格だから」ではありません。準備の精度が仕上がりを直接左右するからです。
養生が甘ければ、よその部分に塗料が飛んでお客様からクレームが来ます。下地処理が不十分なまま塗装すると、数年後に塗膜が浮いてめくれ、再施工コストが発生します。つまり「手間を省いた時間の節約」が、のちに何倍もの損失になって返ってくるのです。
たとえば、外壁塗装の現場ではマスキングテープの貼り直しが1カ所でもあれば、そこから塗料がにじんで後処理に余分な時間がかかります。一方、丁寧に養生された現場は仕上げの塗りがスムーズで、塗装後の後片付けも早い。先輩が口を酸っぱくして「養生が大事」と言うのは、自分の経験による実証済みの話なのです。
養生の善し悪しは、完成した現場を見ればすぐわかります。窓枠のラインがくっきりと直線に決まっているか、コーキングの際に塗料がはみ出していないか。仕上がりの美しさの多くは、実は塗り始める前の段階で決まっています。
「職人の腕」と言われるものの相当な部分が、塗る前の準備力によるものなのです。
ベテラン職人の現場を隣で見ていると、養生のスピードと精度が明らかに違います。テープを貼る手際、シートをたたむ角度、ちょっとした段差の処理の仕方——それ自体がひとつの技術として体に染みついています。
新人が「早く塗りたい」と感じる気持ちは自然ですが、その前の工程を制する者が仕上がりを制するというのが、塗装の世界の現実です。
養生・下地処理を「ただの雑用」と思わず、積極的に観察する姿勢が成長を加速させます。先輩がどの順序でテープを貼っているか、なぜその場所から始めるのかを意識して見るだけで、作業の「理由」が見えてきます。理由を理解した動作は記憶に残り、再現性も高まります。
また、「なぜこの手順なのか」を先輩に質問することも大切です。職人の世界は「見て盗む」文化が根強いですが、丁寧に質問すれば教えてくれる先輩は多くいます。「なぜここはマスキングテープ2枚重ねにするのか」「この素材にはなぜこのプライマーを使うのか」——こうした小さな疑問を解消し続けることが、確かな技術習得への近道です。
さらに、養生を「段取り力のトレーニング」として捉えると、日々の作業が格段に充実します。どう動いたら効率よくシートを張れるか、テープの角をどう処理すれば剥がしやすくなるか——段取りを工夫する思考力は、後々のすべての工程に生きてきます。
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「養生が終わってやっとスタート」という感覚を持つ新人は多いですが、実は養生こそが仕事の大半を決めるといっても過言ではありません。地味に見える準備作業の一つひとつに意味があり、それを丁寧にこなす習慣が、やがて「あいつの現場は仕上がりが違う」と言われる職人を生み出します。
塗装の世界では、ハケを持つ前の時間が未来の自分をつくっています。新人のうちに養生の本質を掴んだ人が、いつか必ず一人前の塗装職人として現場を仕切る日が来るはずです。
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