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国の庁舎や宿舎といった建物にも、吹付けアスベスト(吹付けアスベストとは:石綿を含む材料を天井や梁などに吹き付けたもの)が今も残っています。国土交通省が令和8年10月9日に公表した集計結果によると、飛散防止対策が済んでいない施設は令和7年度末時点で11棟でした。
数字だけを見ると「ほぼ片付いた問題」に見えますが、実際には除去などの対策が令和9年度以降に予定されている施設が多く、対策工事はこれからも続きます。改修や解体に関わる建設会社にとって、決して過去の話ではありません。
この集計は、「アスベストに関する関係閣僚による会合」を受けて、平成17年度から毎年行なわれているものです。対象は各省各庁が所管する建築物等のうち、国有財産(行政財産に限る)(行政財産とは:庁舎や宿舎など、国が業務のために使う財産)に当たるものです。
フォローアップ開始時の平成17年9月15日時点では、飛散防止対策が実施されていない施設が702棟ありました。それが今回は11棟まで減っており、約20年かけて大部分の対策が進んだことがわかります。
調査の対象となった材料は、「吹付けアスベスト」と「アスベストを含有する吹付けロックウール」(吹付けロックウールとは:岩石などを原料とした人造鉱物繊維を吹き付けた耐火・断熱材)の2種類です。アスベストとしては、アモサイト、クリソタイル、クロシドライト、アクチノライト、アンソフィライト、トレモライトの6種類のいずれかを、重量比0.1%を超えて含有するものと定義されています。
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飛散防止対策が未実施の施設数の変化 |
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時点 |
未対策の施設数 |
|---|---|
平成17年9月15日(フォローアップ開始時) |
702棟 |
令和7年3月31日 |
12棟 |
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令和8年3月31日(令和7年度末) |
11棟 |
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen03_hh_000075.html)をもとに編集部作成
今回の調査時点は令和8年3月31日です。調査方法は、前回の調査結果に基づいて各省各庁が確認する形で行なわれました。主な集計結果は次のとおりです(カッコ内は令和7年3月31日時点)。
・調査対象件数:81,912棟
・吹付けアスベスト等が使用されている件数:263棟(273棟)
・うち封じ込め等の飛散防止対策を実施済み:252棟(261棟)
・うち飛散防止対策未実施(使用箇所への立入禁止等の措置済み):11棟(12棟)
・使用の可能性があるが含有量が未調査:1棟(1棟)
ここで注目したいのは、「対策済み」でもアスベストそのものが無くなったわけではないという点です。封じ込め(封じ込めとは:アスベストを除去せず、薬剤などで固めて飛散を防ぐ方法)などで対策済みとされる施設が252棟あり、使用施設全体では263棟に上ります。
調査対象の8万棟余りから見れば少数ですが、こうした建物の改修や解体の際には、引き続き慎重な対応が欠かせません。
未対策の11棟は、いずれも使用箇所への立入禁止等の措置が取られています。所管別に見ると、最高裁判所2棟、警察庁1棟、法務省3棟、財務省2棟、厚生労働省1棟、経済産業省1棟、国土交通省1棟です。
所在地は東京都が7棟と多く、ほかに大阪府、福岡県、北海道、鹿児島県にそれぞれ1棟ずつあります。
対策の予定を見ると、東京と大阪の高等・地方・簡易裁判所の庁舎2棟は「対策実施中」です。一方、特許庁の庁舎は令和8年度以降、中央合同庁舎第5号館は令和10年度以降、残る7棟は令和9年度以降の対策予定とされています。つまり、11棟のうち9棟は、対策工事がまだ先に控えている状態です。
また、含有量が未調査の1棟は、福島県双葉町にある双葉宿舎です。中間貯蔵・環境安全事業株式会社法施行規則第3条で定められた区域内にあるため、調査時期は未定とされています。
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飛散防止対策が未実施の11棟と対策予定(令和8年3月31日現在) |
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所管 |
施設名(棟名) |
所在地 |
対策予定 |
|---|---|---|---|
最高裁判所 |
東京高等・地方・簡易裁判所(庁舎) |
東京都千代田区 |
対策実施中 |
最高裁判所 |
大阪高等・地方・簡易裁判所(庁舎) |
大阪府大阪市 |
対策実施中 |
警察庁 |
福岡県警察学校(生徒寮B棟) |
福岡県福岡市 |
令和9年度以降 |
法務省 |
中央合同庁舎第6号館(庁舎) |
東京都千代田区 |
令和9年度以降 |
法務省 |
九段合同庁舎(本館) |
東京都千代田区 |
令和9年度以降 |
法務省 |
九段第2合同庁舎(庁舎) |
東京都千代田区 |
令和9年度以降 |
財務省 |
札幌第1合同庁舎(庁舎) |
北海道札幌市 |
令和9年度以降 |
財務省 |
高円寺住宅(宿舎) |
東京都杉並区 |
令和9年度以降 |
厚生労働省 |
中央合同庁舎第5号館(庁舎) |
東京都千代田区 |
令和10年度以降 |
経済産業省 |
特許庁(庁舎) |
東京都千代田区 |
令和8年度以降 |
国土交通省 |
指宿海上保安署(庁舎) |
鹿児島県指宿市 |
令和9年度以降 |
※このほか、使用の可能性があるが含有量が未調査の施設が1棟(環境省
原子力規制委員会所管「双葉宿舎」、福島県双葉町)あります。中間貯蔵・環境安全事業株式会社法施行規則第3条で定められた区域内にあるため、調査時期は未定とされています。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen03_hh_000075.html)をもとに編集部作成
国土交通省は今後も、各省各庁が使用の有無の把握や除去等の対策を進めるよう、保全指導と情報提供を続けるとしています。国の建物で対策が段階的に進むということは、対策工事や周辺の改修工事が今後も発生していくということです。
現場目線で大切なのは、「古い公共建築には吹付け材が残っている可能性がある」という前提で動くことです。立入禁止の表示がある区域や、天井裏・機械室などの吹付け材を見かけたら、自己判断で触れずに発注者や元請に確認する習慣を社内で共有しておきましょう。
また、対策済みの建物でも封じ込めのように材料が残っているケースがあります。改修工事を受注した際は、事前に発注者へ使用状況を確認し、必要な対応を工程に組み込んでおくと、後からの手戻りを防げます。
※画像はイメージです
国の建築物で飛散防止対策が済んでいない施設は11棟まで減りましたが、多くは令和9年度以降の対策予定で、封じ込めなどで材料が残る建物も252棟あります。アスベスト対策は「終わった話」ではなく、これからの改修・解体現場で向き合い続けるテーマです。安全な現場づくりのために、最新の公表情報を確認しておきましょう。
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出典:国家機関の建築物等における吹付アスベスト等の使用実態に関する集計(フォローアップ)結果(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen03_hh_000075.html)をもとに作成
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