🏗️ なぜ害虫駆除の世界へ?30年以上前の「飛び込み」が出発点
この業界に入ったきっかけを尋ねると、代表は少し懐かしそうに当時を振り返った。
「先輩に紹介してもらったのがきっかけですね。当時の害虫駆除業界は、営業で一件取るごとに歩合がもらえる会社が多かったんです。半月でもそれなりに稼げると聞いて、そんな仕事があるのかと思って飛び込みました」
最初は驚きもあったという。しかし働いてみると、そこには他の業界にはない深みがあった。営業だけで終わらず、施工の現場にも立ち会うことで、シロアリの生態や床下の状況、建物の劣化のメカニズムを肌で学んでいく。その経験こそが、後に代表の揺るぎない強みとなっていった。
30年以上が経った今も、代表は現場への情熱を失っていない。神奈川県を中心に、川崎市・横浜北部を除くほぼ全域を一人でカバーし、飛び込み営業で積み上げてきた顧客との信頼関係が、現在の事業の根幹を支えている。
「お客さんはみんな飛び込み営業から始まってる。今も可能な限り続けています」
その言葉には、30年以上変わらぬ仕事への誠実さが滲んでいた。
🔧 うちにしかできないこと──「営業も施工も、全部自分でやる」という圧倒的な現場力
三共ハウス防除の最大の強みについて聞くと、代表は迷いなく答えた。
「営業もするけど、工事もする。これはうちにしかないと思いますよ」
一般的な業者では、営業担当と施工担当は分業されている。営業担当者はマニュアルを覚えて商談し、実際の施工は別のスタッフや協力業者に任せるのが通例だ。しかし三共ハウス防除では、代表自身が床下に潜り込んで状況を確認し、その場で撮影した写真をお客様のテレビに映して丁寧に説明したうえで、施工まで一手に担う。
「床下の状況を全部カメラで撮ってきて、お客様のテレビを借りてその場で見せるんですよ。こういう状態ですって。それで商談する」
外壁塗装でも同様だ。屋根に直接登り、肉眼で状態を確認してから写真を撮影。脚立を持参して2階部分の外壁のチョーキング(劣化の指標)も手で触れて確かめる。
「工事しないと内容なんてわかりませんよ。現場を知ってるから、このまま放置したらどうなるかも話せる。マニュアルで喋っても、お客様は納得してくれない」
神奈川県生活協同組合の認定工事店として20年以上にわたりシロアリ駆除・耐震工事部門を担ってきた実績も、こうした現場密着の姿勢が評価された結果といえるだろう。
⚠️ 一人で回し続ける限界と、集客の現実──中小建設業が直面する「見えない課題」
中小建設業にとって、集客と人手不足は長年の悩みである。三共ハウス防除もまた、その課題と正面から向き合っている。
「かつては新聞折り込みでシーズンになると多くの問い合わせをいただいていた。今は集客の手段も変わり、ネットからの新規問い合わせをいかに増やすかが課題ですね」
かつては新聞折り込みで案件を獲得し、従業員も抱えていた三共ハウス防除。しかし時代の変化とともに集客の手段は変わり、現在は代表1名と準従業員3名という体制で運営している。一人で営業から施工まで全て担うため、現場作業中は電話に出られないことも多く、新規顧客を取り逃してしまうジレンマも生じている。
「現場作業中はどうしても電話に出られないこともある。新規のお客様との最初の接点をいかに逃さないか、というのが一人でやっている難しさですね」
これは三共ハウス防除に限った話ではない。中小建設業全体に共通する、一人親方・少人数事業者の構造的な課題だ。代表はこの現状を冷静に受け止めつつ、ネットを活用した集客強化を模索している。問い合わせが年間で数件でも増えれば、従業員を受け入れる基盤が整い、次のステップへ踏み出せると代表は語る。
🌱 次の担い手へ、地域へ──「お客様の目線で、密着型でいく」
今後の展望を尋ねると、代表は静かに、しかし確かな意志を持って語った。
「会社を大きくするのが目標というより、やっぱりお客様の目線で、密着型でやっていかないと駄目だと思っています。緊急の依頼には即日対応する。これは昔から変わらない」
規模の拡大よりも、お客様との関係を大切にする姿勢。それが30年以上のキャリアを支えてきた軸だ。そして代表が今、力を注いでいるのが若い世代の育成である。現在協力関係にある40代の職人や若いスタッフを、いずれ従業員として迎える準備を進めている。
「一緒にやってる連中をこれから育てて、うちの従業員にしていけたらと思っています。まだ案件が少ないから今すぐには難しいけれど、受注が増えれば人も入れられる」
来年65歳を迎える代表にとって、後継ぎの育成は現実的な課題だ。しかし、その解決策は至ってシンプルである——まず集客を増やし、案件を増やし、若い職人が活躍できる環境をつくること。地域のお客様一人ひとりと向き合い続けてきた30年の現場力が、次の世代へと受け継がれようとしている。
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取材を通じて印象的だったのは、代表の「現場を知らない言葉は届かない」という一貫した信念だ。30年以上、営業も施工も一人で担い続けてきた姿勢は、中小建設業における「本物の信頼」の作り方を静かに示してくれていた。